『さまざまなジャンルをクロスオーバーした、全く新しいジャズの世界』
組曲「満州」をはじめ、それぞれの曲が一幅のタペストリーのように多彩なイメージと物語を含んでいる。
ピアノ/作曲 保坂修平
ギター /関根彰良
ベース /安田幸司
ドラム/長谷川ガク
サウンド・デザイン/阿部海太郎(M11)
「アナスタシス」はギリシャ語で復活を意味します。友人の歌手の神林あゆみさんが病床から復帰したことを記念したヤマハホールでのコンサートで披露しました。
アルバム・ジャケットの木版画は前作「私とあなたの物語」に引き続き池田実穂さんにお願いしました。「銀色ジューン」「エンドレス・サマー」は2016年の実穂さんの個展で演奏するために同名の作品にインスピレーションを得て書きました。
「バラのワルツ」は友人の劇作家大野裕明さんプロデュースの朗読劇で太宰治の「女生徒」のために書いた曲です。
「月の影」は月明かりによって生まれるシルエットのこと。表情のない影が逆に無限の表情を含んでいる。大切な人と一緒に歩いた夜の道を回想する曲です。
「プレシャス」は歌手の国貞雅子さんのために書いた音楽で、竹内清訓さんが素敵な歌詞をつけてくれました。このCDではインストゥルメンタルによる演奏ですが、いつか国貞さんの歌でレコーディングしたいと思っています。
「バスティーユ」はミュージカル「1789 バスティーユの恋人たち」を観劇した印象から生まれました。アルバム中唯一スイングでアドリブを回す展開になっています。
私の祖父母は戦前満州に住んでいました。祖父は満洲鉄道の社員として祖母と共に満州に渡り、その後兵役に就き朝鮮半島でソ連軍の捕虜となりシベリアに抑留されました。祖母は命からがら日本に帰ったそうです。「満洲I-III」は、広大な大地のイメージ、戦争、悲劇的な運命を音楽化した作品です。歴史の中に消えていった多くの人々への鎮魂の想いを込めました。
「K. I. へ捧げるオード」では、芸大の大学院時代の同級生で作曲家の阿部海太郎さんが、かつて朗読とのコラボレーションのために作曲した5つのピースを創造的に再構築してとても印象的な音絵巻に仕上げてくれました。K. I. は先日ノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロさんのことで、僕も阿部さんも共にリスペクトする作家です。受賞をこっそりお祝いするトラックとさせて頂きました。
◆サラウンド音源をヘッドフォンリスニングに最適化された「HPL」バージョンも配信中。
※トラック11は FC,LFEに無音が差し込まれた 4chとなります。