サウンドトラックを多数手がけてきたギタリストの「強烈な個性」を堪能

1998年イタリアにて設立された良質のジャズ、ブラジリアン、ラウンジ・ミュージックを届けてくれるレーベル”SMOOTHNOTES”より、イタリア・シチリア州ラグーザ出身のギタリスト、ヴィンセント・ミグリオリッシの2010年リリースのアルバムを紹介！

ヴィンセントは映画・テレビ番組・ダンスなどに多くの楽曲を提供しているギタリストで、2004年に1stアルバム『L'ultimo inverno』をリリース。翌2005年にはM.E.Iアワードの「最優秀インストゥルメンタルアルバム」も獲得するなど評価も高く、2010年に2ndアルバム『PRIMA V’ERA』をリリースしている。

6年という月日が空いたものの、1stも2ndもイタリア屈指の良質レーベルであるSMOOTHNOTESからリリースされているという事実は大きい。期待に違わず、音楽的クオリティの高さを証明しているのは流石だ。

16曲すべてをヴィンセントが作曲しており、楽曲によってかなりフレーバーが変わる。クラシックギターの小曲集テイストのものから、トリッキーなスパニッシュ、ポップス要素の強いものなど、どの曲もさまざまなサウンドトラックを手掛けてきたヴィンセントならではの「強烈な個性」を感じさせる。

金属弦独特の鋭いアルペジオを聴かせる『Vida Nueva』（1曲目）、『Green Walk』（6曲目）では疾走感を、ガットギターを使用した『Un giorno qualunque』では緊迫した空気を、シアトリカルな要素を塗した『Primavera』（5曲目）、『Impossible』（9曲目）では抒情的な物語を聴かせてくれる。『La corsa』はセリフ入りで、ギターが伴奏に回り10曲目特に『Green Walk』はこのアルバムのハイライト的作品で、静かな前半パートから後半パートへ向けて徐々に盛り上がっていき、エンディングでピークを迎える構成は見事。

どの曲も個性が際立っているので、良い意味でアルバムを通してのまとまりはない。しかしながら、それこそがヴィンセント・ミグリオリッシというギタリスト・コンポーザーとしての才能の幅広さによるものだ。単なるBGMの集合体ではなく、この作品のように1曲1曲聴きごたえのあるサウンドトラックはなかなか出会えるものではない。

Vincent Migliorisi（guitars, bass, piano, rhodes, mandolin, banjo, percussion, samples）
Peppe Burrafato（drums）
Piero Vasile（viola）
Fabrizio Scaparra（violin）
Gianni Cascone（euphonium）
Gianni La Rosa（clarinets）
Dario De Filippo（percussions）
Luigi Cosentino（accordion）