1999年9月、PlayStationで発売。
美少女恋愛ゲームの金字塔でありながら、決して「萌え」だけではない。
キャラクターのリアルな愛しさと、相反する複雑な心理描写。
その衝撃的なストーリー展開で、今も多くのユーザーから新作が待たれる、
確実に「あの」時代を象徴する「特別な」作品、「メモリーズオフ」。
オリジナルのサウンドデータを今再び紐解き、包みこむように丁寧にマスタリング。
あの時の微笑、涙、そして震え、絶望。
まだまだ「想い出に変わらない」あの瞬間の「温度」をじっくり感じてください。
【阿保 剛 コメント】
-----------------------------------------------
①『メモリーズオフ』シリーズについて
-----------------------------------------------
初代となる『メモリーズオフ』はKID時代、今から17年弱前の1999年4月頃からサウンド制作を開始しました。実際にはそれより前からサウンド開発していたと思うのですが、一番古いファイルのタイムスタンプが4月でした。
今回のリマスター作業で、未発表フォルダを発見し、そこにはいくつか復元不能なボツ曲らしき物が眠ってました。楽曲制作前にPlayStationの内蔵音源音色を作るのですが、諸々の制約をクリアする為に時間かかった事も思い出されます。
当時のプロジェクト名は「トラウマ」でして、KID初オリジナルのアドベンチャーゲームだったかと思います。ちなみにシリーズ全てのエンディング曲でもある「Memories Off」の初期段階での曲名は「悲しみを越えて」でした。
ナンバリング外のメモオフ関連ゲームですと、『KID MIX SECTION』や『メモオフみっくす』等のパーティーゲームがありますが、それに使用した『メモリーズオフ』のBGMの幾つかも密かに手を加えていたりします。更にマニアックな所では、ワンダースワン版やネオジオポケット版もありました。こちらのサウンドプログラムも直接アセンブラ式のPSGデータを書いたりと今思うと懐かしいです。
今回ハイレゾ化しました『メモリーズオフ After Rain』は「Memories Off 5th Anniversary」という位置付けで企画され、4作目『メモリーズオフ ~それから~』の後の開発となりました。
--------------------------------------
②制作環境とサウンドの変遷
--------------------------------------
3作目となる『想い出にかわる君~メモリーズオフ』や初代、2ndは単独でハイレゾ化しないのか?という疑問を持たれている方もいらっしゃるかと思います。内蔵音源を使って演奏していたBGMはハイレゾ化する手段が無く、恩恵が得られない状況だったりします。もちろん本体からOPTICALでデジタル録音する事は可能ですが、それでは96kHz/24bitといったハイレゾレベルの解像度は得られません。
メモオフの楽曲は『After Rain』から内蔵音源再生ではなくMac内部で完結する制作環境となった為、ハイレゾ化したWAVEファイルを直接出力して対応させております。当時この環境も試行錯誤でしたが、制作を重ねる度に使い勝手やノウハウなど向上していきまして、私自身勉強しつつ4作目のファンディスク『メモリーズオフ ~それから again~』、そして、5作目、6作目…と作品毎に進化してます。具体的には音色をサンプリングし直したり、それらを独自で組み込み直したり、波形レベルでの音色の質や数が向上してます。音源のREASONバージョンアップ等の恩恵もあります。
---------------------
③楽曲について
---------------------
『メモリーズオフ』は楽曲が多い事もあり、解説する楽曲選択にも悩みます。
『After Rain』では今回ハイレゾ化に当たって「Unrequited love」や「With memories」等はさりげなく手を加えてます。そのまま出力した楽曲もありますが、EQ、バランス調整から音色足し、音色調整、クォンタイズなどほぼ全ての楽曲で何かしら手を加えてます。ただ、「Dreamer」のみ元データが無く再現出来ませんでしたが、6作目『メモリーズオフ6 T-WAVE」でアレンジしておりますので、そちらまでお待ち頂ければ幸いです。
4作目は『それから again』のハイレゾ化になります。『それから』は内蔵音源演奏なのですが、『それから again』の時に全曲波形演奏用に作り直しましたので、今回ハイレゾ化が実現出来ました。ここには好きな楽曲が数多くあるのですが、特に『それから again』で追加した各エンド曲がお気に入りですので、各種調整にも念が入りました
5作目『メモリーズオフ#5 とぎれたフィルム』では、今回未使用曲など発掘致しましたので、折角なのでそちらもハイレゾ化して収録致しました。ファンディスク『とぎれたフィルム Encore』の追加曲や、初回限定サントラCD用のアレンジ曲、更には未発表曲「日名あすか」のアレンジや、イメージBGMも収録しておりますので、合わせて楽しんで頂ければ幸いです。
【阿保 剛 プロフィール】
豊富なゲームサウンドシステム知識を有し、全てのコンシューマーゲームハードの内蔵音源の様々な特性を最大限に生かした音色遣いで定評。洗練されたメロディセンスで、キャッチーで切ない楽曲や、スタイリッシュなEDM系、恐怖やホラーを表現するものまで、それぞれが強い世界観を持つゲーム原作の世界に呼応する、音響的かつ幅広い作風を持つ人気ゲームミュージック作家。1992年よりパソコン/コンシューマーゲームのBGM制作をスタート。その後、KID、5pb./MAGES.等で数多くのゲームタイトルの BGM/効果音を統括的に制作し、メインコンポーザとして活動。代表作は「Memories Off」シリーズ、「Ever17」等のInfinityシリーズ、「CHAOS;CHILD」や「STEINS;GATE」「ROBOTICS;NOTES」の科学ADVシリーズなど多数。「STEINS;GATE」「ROBOTICS;NOTES」はアニメ版の劇伴制作にも参加。現在も常に新作と向き合い続け、年間200曲ペースの制作活動を精力的にこなす。
【High Resolution Soundtracks メモリーズオフ After Rain/阿保剛/ハイレゾ】