2013年度大河ドラマ『八重の桜』の音楽を担当し、女優であり歌手でもあるJane Birkinのワールドツアーに音楽監督/ピアニストとして参加、27ヶ国を回るなど、広くその才能が評価される中島ノブユキ。これまで、明晰な和声へのアプローチと、エレガントなアレンジワークにより、色彩ゆたかな情景を描くことを得意としてきた彼が、ピアノソロ・アルバムとしては2枚目となる今作《clair-obscur》では、「音」の生起に耳を澄まし、響きが通いあう場所に、過ぎ去った時間の、未生の音楽を呼び覚ます―― 。初出を多く含む、自身の楽曲のみで構成されたホール録音作。
“NHK大河ドラマ『八重の桜』のサウンドトラックを手がけたことで、今やその名はかなり多くのひとに知られるようになったと言っていいのだろう。“遠近法”という意味のタイトルを持つこの作品は、中島にとって2作目のピアノ・ソロ・アルバム。1作目の『Cancellare』(2012年)が、バッハの『マタイ受難曲』やブラジル音楽のカヴァーとオリジナルから成っていたのに対し、この新作はオール自作によるもので、この2年ほどで中島をとりまく環境が大きく変わったことも含め、改めて自身のピュアな音楽だけで勝負という風情も感じられる。が、そこに力みは一切ない。“ホール録音”(秩父ミューズパーク音楽堂)で、非常に豊かなトーンが耳に優しいが、制作映像を見ると、ピアノは比較的珍しいグロトリアン(ドイツ)が使われているようだ。このレーベルの音の良さには定評があるが、3種類あるファイルのうち、やはりこの音楽はDSD5.6で楽しみたい。”(國枝志郎)提供:
CDジャーナル