セレクターズ・チョイス--ロック/ポップス8月新譜 by 片寄明人(GREAT3)




片寄明人(かたよせ あきと)

GREAT3のボーカル&ギター。妻のショコラとのデュオ、Chocolat & Akitoとしても活動中。最新作はGREAT3「愛の関係」、Chocolat & Akito「Chocolat & Akito meets The Mattson 2」。

また音楽プロデューサーとして、DAOKO、TENDOUJI、SHE IS SUMMER、The Wisely Brothers、フジファブリック、など多くのアーティストの作品に参加している。

NHK-FM、毎週日曜16時の70’s 80’s洋楽専門番組「洋楽グロリアスデイズ」DJも担当中。

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梅雨明けから、いきなりの猛暑続き、そして早くも8月が終わり…時空が歪んだかのような感覚に、なんとも落ち着かない2020年の夏でしたが、冷房の効いた部屋で、ゆったりと音楽を聴く時間に心が救われています。

今月もロック/ポップ、ソウル/R&Bのニュー・リリースから、おすすめタイトルをご紹介しましょう。

いちばん愛聴したのは、ウォッシュト・アウトの4thアルバム『Purple Noon』でした。2011年の1stアルバムで、チルウェイヴという言葉を世に広めたアメリカのミュージシャンですが、より洗練された楽曲とサウンドの質感が、ひたすら心地よく、清涼感に満ちあふれていて、まるでシャーデーやエヴリシング・バット・ザ・ガールを聴いているような気持ちになります。ジャケットも美しいので、アナログ・レコードでも欲しくなりますが、24bitで聴くサウンドスケープは極上です。

新作アルバムでは、ブラストラックス待望の1stアルバムも流石の仕上がりでした。チャンス・ザ・ラッパーやアンダーソン・パークらの作品に参加することで注目を高めていった彼らですが、このアルバムでは、あくまでオーセンティックで質の高いメロディーと生楽器を中心に置き、コモンやロバート・グラスパーなどをゲストに迎え、ジャズ、ヒップホップ、ソウル、ファンクを先鋭的にミックスさせています。

アメリカ・LAから登場した、キッド・ブルームの6曲入りEP『Blood Sugar』も、この夏のムードによく似合う傑作ミニアルバムでした。上昇と下降を繰り返しながら、なんともいえない情感を描き出すメロディー、太い音で描くポップン・ソウルなトラックにも、この先の可能性を感じます。

8月はシングルにも素敵なナンバーがたくさんありました。おすすめを、どんどん挙げていきましょう。

まずは、オーストラリアのニューカマー・デュオ、HUXのシングル「Lemonade」。そのタイトル通り、甘酸っぱくセンチメンタルなムードを持ったサマー・ポップで何度も聴いてしまいます。アルバムが楽しみです。

オーストラリアからは、マット・コーヴィーの新曲「If I Never Say A Word」も夢心地なシャッフル・リズムに心奪われました。メロディー・メイカーとしての才能を、ひしひしと感じるシンガーソングライターです。

ファイストらと交流があるというカナダ・トロントのシンガーソングライター、バハマスの新曲「Own Alone」も、ファットなビートに小気味よいリズム・ギターが絡む、ブルージーなファンク・ポップで最高です。ギターソロのセンスが良すぎます。

「ファミコン・ロックバンド」なんて呼び名もあるらしいNYのグループ、アナマナグチが、アメリカン・フットボールなどを輩出した名門インディー・レーベル、Polyvinylから放ったインスト・サマー・シングル「Vancouver」も、極上のメロディーです。エモーショナルでパンキッシュな演奏にあわせた、レトロな8bitチップ・チューンが奏でるメロに泣かされます。

名門USインディー・レーベルといえば、サブポップからの新作も注目揃いです。シアウォーターとクロス・レコードのメンバーが結成したスリーピース・バンド、ローマの新曲「Half Silences」は、ジ・アラン・パーソンズ・プロジェクトの名曲「Eye in the Sky」を思わせる淡々とした雰囲気からはじまり、広大な景色へとイマジネーションが広がるサイケデリックなドリーム・ポップです。

ナッシュビルのバンド、ブリーが、サブポップからリリースしたニュー・アルバム「SUGAREGG」も強力です。ザ・ウォー・オン・ドラッグスやセイント・ヴィンセントを手がけたジョン・コングルトンのプロデュースで、グランジ~オルタナティヴ・ロックを見事にアップデートしています。シカゴにあるスティーヴ・アルビニのスタジオでインターンをしていたこともあるという、アリシア・ボグナオの歌声が心をかきむしります。

セイント・ヴィンセントといえば、意外な組み合わせである、X JAPANのYOSHIKI氏をフィーチャリングした「NEW YORK featuring YOSHIKI」。セイント・ヴィンセントの名曲を、美しくキャッチーなピアノ・アレンジへと生まれ変わらせたYOSHIKI氏のセンスに感嘆させられます。


ドイツの人気シンガー、アネット・ルイザンから届いたライオネル・リッチーの80'sヒット「Hello」のカバーも秀逸です。リアルタイム当時は、甘すぎる曲調とMVに失笑されることも多かった大ヒット曲が、シュギー・オーティスやティミー・トーマスを思わせるヴィンテージ・リズムボックスとオルガン使いなアレンジと、アネットのキュートな歌声で生まれ変わっています。あぁ、いい曲だったんだなぁと再認識させられました。

80'sといえば、オーストラリア出身で多くの80'sヒットを放った、リック・スプリングフィールドが、アメリカのモダン・プログレッシブ・ロックバンド、コヒード・アンド・カンブリアにフィーチャリングされたシングルにも驚きました。そのタイトルも「Jessie’s Girl 2」!なんとあの1981年の名曲「Jessie’s Girl」の続編として、コヒード・アンド・カンブリアが書き、リック・スプリングフィールドに参加を依頼したのだとか。往年のファンの期待を裏切らない爽快なナンバーです。

北アイルランド/ポータダウン出身のシンガーソングライター、ナオミ・ハミルトンによるプロジェクト、ジェラス・オブ・ザ・バーズの新曲「Something Holy」は、曲も素晴らしいのですが、何より柔らかなインディー・ポップ・サウンドが魅力的。どれも似たような圧の強いサウンドが多い最近の新曲に混じって、こんなにナチュラルな曲が流れてくると、深呼吸ができたような気持ちになります。

ブライアン・イーノと、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズがコラボレートして話題になった2017年と2018年のナンバーも、あらためてハイレゾで聴くと、もの凄い曲でした。映画「アイズ・ワイド・シャット」の儀式シーンを彷彿とさせる不穏な「The Weight Of History」と、荘厳な「Only Once Away My Son」どちらも音の波に呑み込まれそうになります。

さらにアメリカ・インディアナの若手ミュージシャン、オマー・アポロの「Stayback」を、あのブーツィー・コリンズがリミックスした、オリジナルを上回る漆黒のバージョンも必聴です。ブーツィーのセンスは古びることがありません。

どれもいい曲なので、ぜひチェックしてみて下さいね。


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