旧東ドイツに残されたクラシックの至宝「ドイツ・シャルプラッテン」レーベル

旧東ドイツ時代に、唯一の国営レコード公団として1946年に設立されて以来、実に数多くのクラシックの名演を残してきた「ドイツ・シャルプラッテン」レーベル。ドレスデン国立歌劇場管弦楽団やドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団など、東ドイツが誇るオーケストラによる録音を数多く残してきたことでも知られる。その「ドイツ・シャルプラッテン」レーベルに於いて〈名盤の聖地〉と呼ばれるドレスデンの「ルカ教会」にて収録された作品、20タイトルが最新のデジタル・リマスターでついにハイレゾ配信に登場。キングレコードが提唱する「King Superphonic Mastering Direct!!」により、オリジナル・アナログマスターの持つ音質をダイレクトにお楽しみいただけます。

名盤の聖地 - ルカ教会
シャルプラッテンは1946年に設立された東ドイツ唯一のレコード公団。ドレスデン国立歌劇場管弦楽団やドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団など、東ドイツが誇るオーケストラによる録音を数多く残してきたことでも知られる。また「Amiga」や「Nova」などの6つの傍系レーベルを構え、クラシックのみならずロックからポップス、現代音楽など幅広い音楽もリリースした。 そんな「シャルプラッテン」レーベルのレコーディングの一つの拠点であり、素晴らしく豊かな録音を数々のこしてきた〈名盤の聖地〉──それがドレスデンのルカ教会(Lukaskirche)
 ドレスデン旧市街の近郊、閑静な住宅街のなか、古びて風格を帯びた外観に威厳すら感じさせるこの教会は、20世紀のはじめに建てられたもの。教会によくある尖塔の先がないのも特徴だが、これは1945年2月に連合国軍がおこなった無差別空爆(ドレスデン爆撃)で吹き飛んでしまったため。周囲も瓦礫の山と化したこの空爆で教会内部も破壊されたが、戦後になって修復され、東ドイツで唯一の国営レコード会社であったドイツ・シャルプラッテンによって、レコーディング専用の施設として使われることになった。
 天井も高く響きの豊かなルカ教会は、大編成オーケストラに大合唱をくわえてもなお響きに余裕があるほどで、レコーディングにはうってつけだった。国家的教育プログラムの一環としてクラシック音楽の網羅的な録音をおこなったドイツ・シャルプラッテンをはじめ、幾つものレーベルがこのルカ教会を録音に使用。教会には機材を常設した録音モニター用の小部屋も設けられ、天井には響きを調節する可動式のブリッジも設置、編成に応じて響きを変えるよう工夫された。演奏家にとっては響きのつくりにくい空間ではあったというが、ドイツ・シャルプラッテンの技術陣は作品・編成に応じて楽器やマイクロフォンの配置に入念な工夫を凝らし、地元の名門楽団シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)をはじめオペラから室内楽、歌曲まで数々の名録音を残した。
 東西ドイツ統一後に国営のドイツ・シャルプラッテンが消滅したため、ルカ教会は機材を維持する資金がなく天井のブリッジも撤去。故シノーポリはスポンサーを募ってブリッジを再現しようとしていたというが、現在の建築安全基準に適合させるのが難しいなどの理由で今後も再現は不可能といわれる。これにより往年の響きとは多少変化が生じたものの、戦後長きにわたってこの場所で醸成されてきた〈ドレスデンの音〉は、今もシュターツカペレ・ドレスデンの面々をはじめルカ教会を使う音楽家たちに馴染み深いものとなっている。
今回配信となるドイツ・シャルプラッテン「ルカ教会」シリーズ、注目すべきは、NHK交響楽団の名誉指揮者を務め日本でもお馴染みとなったオトマール・スイトナーやヘルベルト・ブロムシュテットによる作品。なかでもスイトナーがドレスデン国立歌劇場管弦楽団を率いて演奏するモーツァルトの39番、40番交響曲は繊細で哀愁が漂う絶品の演奏となっている。 またブロムシュテットのベートーベン7番は、ルカ教会の豊かな残響を活かした味のある演奏です。どのタイトルも最高の指揮者とオーケストラとそしてルカ教会、この3つが揃うことによる極上の演奏を楽しむことができます。最新のデジタル・リマスターによって、よりオリジナル・テープに忠実なサウンドをとなり蘇ったシャルプラッテン・レーベル「ルカ教会」シリーズ。その伝統のサウンドを是非お楽しみ下さい。

■麻倉怜士が徹底解説。ドイツ・シャルプラッテン「東ドイツ・キリスト教会」シリーズ

■ドイツ・シャルプラッテンカタログ追加第3弾

 | 

 |   |