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共演者として引く手あまたの若手ピアニスト、須関裕子が『ラ・カンパネッラ』で満を持してソロ・デビュー

2018/02/23
ヴァイオリニストやチェリストといった弦楽器を中心に、国内外の演奏家たちとの共演を多数こなし、アンサンブル奏者としてすでに高い評価を得ている期待の若手ピアニストの須関裕子さん。そんな彼女がファースト・アルバム『ラ・カンパネッラ』でソロ・デビューを果たし、リストやシューマン、ショパンから選ばれた9曲を録音しました。e-onkyo musicでは須関裕子さんと、レコーディングを担当した“トーンマイスター”の平井義也さんに独自取材。本作の魅力を紐解きます。

文・取材◎鈴木 裕 撮影(取材時)◎山本 昇


『ラ・カンパネッラ』
/ 須関裕子




 現在、もっとも注目されている若手ピアニストの一人が須関裕子だ。コンクールだけでなく国内外で高く評価され、リサイタルやアンサンブルなど幅広く活躍している。『ラ・カンパネッラ』は、そんな彼女の最初のソロ・アルバムだ。曲目をちょっと見た限りでは名曲集の趣だが、実は技術的にも音楽的に高いものが要求されるプログラムを並べてきていることが分かる。また今回の注目点は、マイスター・ミュージックの平井義也氏による録音でもあり、きわめてリニアリティの高い音で収録されている。そのあたりを中心に、お二人に話を伺ってみよう。

――最初のアルバムということで、選曲はどうしましたか。

須関 本当に迷ったんです。ソナタも入れようかなとか。学生の頃からの思い出の曲や、皆さんが聴きやすい曲をと考えていったら、名曲アルバムみたいになりましたが、曲順は録音した後に考えて、自分なりにいい流れにしました。

――ピアニストの方と話していると、自分が弾いているときの音と、録音した音が違う感じがするという人が少なくないんですが、いかがでしたか。

須関 弾くときは精一杯なので、自分の演奏がどうなっているのか客観的に把握しづらいのですが、とりあえず録音したものを聴いてみると、自分が思っているテンポ感と違って聞えるときもありました。また、表現はより幅広くやった方がいいと思って、意識して録音していきました。

――演奏家によっては、ピアノを弾くことだけに集中して、出した音を聴かない人もいるように思うんですが、須関さんはよくご自身の音を聴いていますね。

須関 アンサンブルでの演奏も多いので、人の音も自分の音もよく聴いています。

質問に丁寧に答えてくれた須関裕子さん。「アンサンブルで培った経験を生かし、演奏会ではそのときに出てくるものを大事にして、自分の引き出しにしていきたいと思っています」

――1曲目のリストの「ラ・カンパネッラ」は高い音の役割が大事な曲ですが、そのタッチのトーンが強すぎず、弱すぎず。演奏としても録音としてもリファレンス的に使えるレベルだと思いました。2曲目のシューマンの「献呈」での深みのある低音も印象的です。そして、3曲目のシューマンの「アラベスク」は各フレーズの音像が立体的に見えてきて素晴らしかったです。

須関 そういう風に立体的に見えるというのは私としても理想的なので良かったです(笑)。

平井 言うまでもなく、ショパンとシューマンは音楽的に違います。レコーディングする際もシューマンはシューマンらしく、シューマンの音楽が出てくるように心掛けてマイク・セッティングをしています。またショパンの中でも、ワルツとポロネーズは違います。ワルツはサロン音楽で、ポロネーズというのは舞曲から来ていますから、響きがより壮大です。マイクロフォンの位置や指向性を少しずつ変えることによって、その作曲家、曲のニュアンスを出せるようにしています。シューマンは輪郭をはっきりとさせておいて、深みのある音にしないと。プレゼンス(音場感)ばかりの音では面白くないですからね。ショパンは全体に響くような感じで録っていきました。

――演奏している方としては、どう感じていますか。

須関 ショパンには、やはりポーランドの民族性を感じます。実は初めて海外でリサイタルをさせていただいたのがポーランドで、生家でも演奏したことがあるので、ショパンが生きていた空気を感じられたし、また現地の方たちとお話しすることもできました。ショパンはロマンティックではあるがゆえに、感情移入しすぎないように気をつけているのですが、弾いていると、シューマンの方が人間的な感情をそのまま出せるようにも感じられます。ショパンの一見甘美な感じそのままに弾いてしまうと、ちょっと違うんです。内面的な芯の強さといったものがありますね。そして、「英雄ポロネーズ」ではダンスのポロネーズのリズムを強調しています。

――録音の際に、いちばん心掛けていることは何ですか。

平井 大事にしているのは、自然で心地よい響き。そして、演奏家の持っている音楽や、表現しようとしているニュアンスをでき得る限り「音」にとらえられているか、ということです。今回なら、須関さんの持っているショパンやシューマンを、最良の状態でレコーディングしたかったのです。

――ヨーロッバには、それができている録音が多いように感じます。

平井 私はドイツの音楽大学で学び、グラモフォンや西ドイツ放送などで研修を積み、トーンマイスターの資格を得ることができました。大学のトーンマイスター課では、音響や電気工学、物理など録る技術だけではなく、ピアノや和声、作曲なども学ばなければなりませんでした。そうすることで、ショパンならショパン、バッハならバッハの様式や響きを体得することができ、それがクラシックのレコーディング現場で生かされています。演奏家の「音楽」と録音の「技術」を橋渡しする感じです。聴いてほしいのは音楽そのものなのだから、私としては、聴き手が、その演奏家が創る音楽に集中できるような、音作りができたら良いなと思っています。

――マイクは、デットリック・デ・ゲアールによるハンドメイドの真空管マイクをステレオ・ワンポイント方式で使っているわけですが、どんな使いこなしがありますか。

平井 楽器とマイクロフォンの距離、角度、指向性は重要です。この繊細なマイクロフォンは指向性を自由に変えることができるため、その時々の楽器編成やホールの残響などに合わせて使い分けることが可能です。使用されている材料も、特定の銅山から採れる特殊な銅で、製作者のゲアール氏は安定供給のため、その銅山を買い取ったと聞いています。すごい情熱ですね。その銅は、マイクのコイルやケーブル部などにも使われています。マイクを支えるバーやネジには制振合金を使用した特注品を使い、マイクからマイク・プリアンプまでのケーブルには、工場で一晩かけて成形した6N銅(99.9999%の高純度銅)を導体に使用した、やはり特別なものを使用しています。

――一つひとつの銅の結晶が大きく、電気伝導率も高くなる素材ですね。

平井 そうです。また、マイクのスタンドの足もとにはインシュレーターを入れています。電子顕微鏡に使うマグネットを採用したフローティングタイプのインシュレーターで、100万分の1mmの世界でフォーカスがきちんと出るものです。ステージというのは演奏による強い振動があるので、その影響をできるだけ減らしたい。本来、マイクロフォンというのは、振動板自体だけが(音の疎密波を受けて)振動すべきものですからね。

「心地よく聞けること」を心掛けているという“トーンマイスター”の平井義也さん。「今回はショパンはショパンらしく、シューマンはシューマンらしく響くような音像で録りました」

――音の判断は、平井さんが行っているのですか。

平井 こちらである程度決めてから、須関さんにも確認してもらっています。

須関 本当に理想の音で録っていただいて、ありがたいです。

平井 トーンマイスターとして、音楽に対する理解も必要ですが、アーティストの方々と親近感を持ってお話しできないと、その気持ちがわかりませんから。

――レコーディング後、マスタリングなどはどのように行われているのでしょうか。

平井 編集と、また曲の調性に合わせたマスタリングを行います。ちなみにハイレゾ音源とCDのマスターではそのマスタリングは変えています。ハイレゾは帯域が広いので、やはりそれ用にやっておかないとバランスが取れないんです。

――平井さんにとって、須関さんはどんなピアニストですか。

平井 若手演奏家の中でも、特に逸材の方だと思います。それは、チェロの堤剛氏が彼女の才能を見いだし、アンサンブルで共演者として抜擢したことからもうかがえます。作品を分析し、深く理解した上での演奏、フレージングに無理も無駄もない。そして、ピアノをバランス良く響かせますね。力を上手に抜いて、指にスコーンと力が集中するような弾き方で、力は抜けているのに芯のある音が出ています。

――最後に、このアルバムを聴く方にメッセージをお願いします。

平井 いいアルバムというのは何回聴いてもまた聴きたくなるものですよね。マイスター・ミュージックではそういう音楽を創っていきたいし、この『ラ・カンパネッラ』も、長く楽しんでいただけると嬉しいですね。

須関 ピアニストには音楽に入りこんで入魂で弾かれる方もいらっしゃいますが、私はその時に出てくるものを大事にしたいタイプです。『ラ・カンパネッラ』は、音楽をご自身で演奏される方だけではなく、いろんな方に聴いていただきたいですし、曲についての詳しいことは分からなくても、「聴いていて心地いいな」とか「元気が出るな」といったように、いろんな聴き方で楽しんでいただけたら嬉しいです。また、臨場感のある音で録っていただけましたので、ハイレゾではそのあたりもぜひ楽しんでいただきたいと思います。




◎コンサート/イベント情報

アルバム・リリース記念「須関裕子 ピアノ・リサイタル」
日時:2018年3月3日(土) 開場14:30/開演15:00
会場:スタンウェイ・サロン東京 松尾ホール
住所:東京都千代田区有楽町1-5-1 日比谷マリンビル地下1F

アルバム・リリース記念「ミニ・ライブ&サイン会」
日時:2018年4月8日(日)開演15時
会場:タワーレコード渋谷店7階クラシック・フロア(観覧無料)
住所:東京都渋谷区神南1-22-14



◆須関裕子 アルバム・リリース記念リサイタル 特別ご招待

e-onkyo musicでは、アルバム『ラ・カンパネッラ』をご購入いただいた方の中より抽選でペア2組(計4名)様を、須関裕子アルバム・リリース記念リサイタルにご招待いたします。

■□■ 須関裕子 アルバム・リリース記念リサイタル ■□■
日時:2018年3月3日(土) 14:30開場/15:00開演
会場:スタンウェイ・サロン東京 松尾ホール
住所:東京都千代田区有楽町1-5-1 日比谷マリンビル地下1F


■イベント応募方法:

こちらのお問い合わせフォームよりご応募ください。

お問い合わせの種類に「イベントに応募する」を選択の上、メールアドレス、お名前を明記頂き、お問い合わせ内容の欄に「須関裕子 アルバム・リリース記念リサイタル参加希望」と明記のうえ送信して下さい。
抽選で、ペア2組(計4名)様をご招待いたします。

募集期間:2月27日(火)23:59まで
当選された方へはメールにてご連絡を差し上げます。

注意事項: ※ 応募の際は会員登録で使用されているメールアドレスをご記入ください。
※ 会場までの交通費は自己負担となります。
※ 抽選状況に関してはいかなる質問にもご対応できませんので予めご了承下さい。