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【秋山和慶インタビュー記事】秋山和慶指揮✕中部フィルのブラームス・ツィクルス配信開始

2018/02/23
日本を代表する名指揮者・秋山和慶が率いる中部フィルハーモニー交響楽団のブラームス・ツィクルスが待望のハイレゾ配信開始となりました。 記念すべきツィクルスの第1作目に収録されているのは「交響曲第1番」「大学祝典序曲」。2017年6月17日、名古屋の三井住友海上しらかわホールでの演奏会のライブ録音です。なおツィクルスとは、ある作曲家の一連の作品を、意図をもって連続的に演奏・録音すること。ここではブラームスの交響曲全曲演奏シリーズを指します。


『秋山和慶のブラームス・ツィクルスI - 交響曲第1番』
/ 中部フィルハーモニー交響楽団, 秋山和慶




●中部フィルハーモニー交響楽団とは

ブラームス・ツィクルス 演奏風景



1/26配信開始の「飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ」、2/16配信開始の「マスターズ・ブラス・ナゴヤ」など、首都圏以外の元気なプロ音楽団体のハイレゾ配信が相次いでいる今日この頃。

「飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ」は指揮者なしのエネルギー溢れる演奏、「マスターズ・ブラス・ナゴヤ」は“伝統と革新”をテーマとした吹奏楽の魅力の発信と、それぞれ独自のポリシーを持つこれらの音楽団体。 このたびブラームス・ツィクルスの配信が開始された「中部フィルハーモニー交響楽団」の個性は、18年にもわたって、名指揮者・秋山和慶と共に歩んできているところにあるでしょう。

中部フィルハーモニー交響楽団は、2000年に愛知県小牧市で小牧市交響楽団として発足したプロオーケストラ。2005年の愛知万博に出演するなどの活動を経て、2007年に広く中部地域の音楽文化に貢献するため「中部フィルハーモニー交響楽団」と改名し、演奏域を広く中部3県に広げています。

定期/特別演奏会をはじめとして、小中学校巡回演奏、各施設でのボランティア演奏など、地域に根ざしたプロオーケストラとして活動。 創立当初より、指揮者の秋山和慶を名誉首席指揮者(2017年より芸術監督・首席指揮者)に迎え、2005年のベートーヴェン・マラソンコンサート、2015年5月の「創立15周年・秋山和慶指揮生活50周年記念演奏会」ほか、数々の演奏会を共にしてきました。愛知県芸術文化選奨新人賞等を受賞したほか、2017年12月には地方自治発展に寄与した功績により、愛知県知事より感謝状を授与されています。

●「ブラームスの交響曲第1番は、禊を済ませてから取り組みたい曲」~秋山和慶インタビュー

指揮者・秋山和慶氏



ブラームス・ツィクルスや中部フィルへの秋山和慶の思い入れとは、どのようなものなのでしょうか。 当ツィクルス第2作の編集チェックが行われた2018年2月14日、チェックに立ち会った秋山氏にインタビューを行いました。(聞き手:長江和哉(ブラームス・ツィクルス レコーディングエンジニア))

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~なぜいま、ブラームス・ツィクルスなのでしょうか?~

──中部フィルはまだ歴史の浅いオーケストラですが、徐々に力をつけてきて、いよいよブラームスに取り組もうという段階に至りました。 ブラームスは、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンを経て至る、ロマン派の岩山のような存在です。ある種の頂点であり、それなくしてはその先の音楽の進展と円熟はありえません。書かれた交響曲は4曲のみですが、駄作はひとつもありませんし、オケマンになりたい人でブラームスが嫌いな人はいないでしょう。とてもエネルギーが必要ですが、岩山を超えるべく取り組む価値があります。 中部フィルは若いメンバーが多く、ブラームスが初演奏という人もいるかもしれません。そのため、リハーサルは3日間と長めに取り、真摯に音に向き合うための時間を作っています。

リハーサル風景



~ブラームスの演奏に際して重視したことはなんですか?~

──しっかりした重みのある音を出すことを心がけました。スポーツと同じですが、日本人の身体は西洋人と比べると小柄なので、そのぶん音のパワーも不足しがちです。私は演奏会批評によく「音が大きすぎる」と書かれてきましたが、それはむしろ意図通りなのです。ブラームスの演奏には、ヨーロッパのアルプスを思わせるスケール感やボリュームが必要です。四畳半で小唄をうたい、盆栽を愛でる日本の文化もちろん素晴らしいですが、それとブラームスとはまったく違うものです。私は海外での演奏経験からそれを学びました。

ブラームス・ツィクルスへの想いを語る秋山和慶氏



~中部フィルの強み──ホールがもたらす効果と意義とは?~

──日本のオーケストラは、音の特徴に欠けていると言われてきました。それは、オーケストラにとっての「自分のホール」がなかったからだと思います。まずホールありきで、弾き方を追求したり、アンサンブルを作っていかなければなりません。ホールは楽器の一部です。高校の野球部だって、自分のグラウンドを持っていなければ、いい練習ができないでしょう。 中部フィルには、本拠地としての小牧市市民会館と、名古屋での演奏ホームとしての三井住友海上しらかわホールがあります。今回のブラームス・ツィクルスは、全て、しらかわホールで行われる予定です。このホールは小さいですが、とても音響が良いのが特徴です。オーケストラとお客さんの距離が近く、奏者の息づかいを感じることができます。まるでオーケストラの中に自分が入ったような気持ちになれるのではないでしょうか。

(長江)しらかわホールは、マイクをふさわしい場所に置けば、ホールと楽器が一体になったいい音がちゃんと録れるホールですね。秋山先生のすばらしい演奏をハイレゾで聴いていただくのが楽しみです。

三井住友海上しらかわホールのマイクセッティングの様子



~ツィクルス第1作、ブラームス「交響曲第1番」にかける想いは?~

私にとってもっとも思い出深いのは、指揮者としてのデビュー曲である交響曲第2番ですが、第1番はそれとは異なる感慨深さがあります。ブラームスが長年をかけて作曲した曲で、まったく無駄というものがない。身を清めてというか、禊を済ませてから取り組まねば、という気持ちになりますね。

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ツィクルスの第2弾(交響曲第2番)は今春リリース予定。第3弾(第3番)と第4弾(第4番)はそれぞれ、6月16日、8月11日に三井住友海上しらかわホールで演奏&収録の上、今秋以降に順次配信予定です。日本発のブラームスの交響曲のハイレゾ音源として、ぜひコンプリートしていただきたいシリーズです。

参考:「秋山和慶のブラームス・ツィクルスI - 交響曲第1番」レコーディングデータ
2017年6月17日(土) 三井住友海上しらかわホール ライブレコーディング

Recording Balance Engineer : 長江和哉
Assistant Engineer : 永田悠, 林大貴, 森田順菜
Editing, Mixing, Mastering :長江和哉

Recording Equipment:
DPA 4006 4011, Schoeps Mk2s Mk22 Mk4, Neumann KM184 KM140 Microphones;
RME Micstasy, OctaMic XTC microphone preamplifier high resolution AD converter;
Magix Sequoia digital audio workstation; Genelec 1030 loudspeakers
Original format: 192 kHz / 24-bit.