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マルチな才能を開花させている人気アーティスト、サラ・オレインの最新作は映画音楽のカヴァー集

2017/10/25
NHK Eテレ「おとなの基礎英語」をはじめ、テレビやラジオでもお馴染みのアーティスト、サラ・オレインさんは、2012年発売のファースト・アルバム『セレステ』以降、コンスタントにリリースされる自らの作品はもちろん、ゲーム音楽やCM音楽など幅広いフィールドでの活動もめざましく、まさにマルチな活躍でファンを拡大し続けています。「f分の1ゆらぎ」と呼ばれる癒し効果も話題となった美声の持ち主である彼女から、2017年2月に発売された4作目『ANIMA』に次いで届けられたのは名作映画音楽のカヴァー集『Cinema Music』。そこに込めた、表現者サラさんの想いとは?

インタヴュー・文◎原 典子 撮影◎山本 昇


『Cinema Music』/サラ・オレイン

 3オクターブを超える美声の持ち主であり、シンガーだけにとどまらずヴァイオリニスト、作詞・作曲家、翻訳家、コピーライターとしてもマルチに活躍する才女、サラ・オレイン。メジャー・デビューから5周年となる年にリリースされる新作『Cinema Music』は、かねてからの念願だったという映画音楽集だ。『007』、『ニュー・シネマ・パラダイス』から『君の名は。』、『ラ・ラ・ランド』まで、新旧問わず彼女の愛する映画からの名曲が収められた宝石箱のようなアルバムであると同時に、「表現者」としてのサラ・オレインの新たな側面を見せてくれる作品でもある。
 オーストラリア出身で、英語・日本語・イタリア語・ラテン語を自在に操るマルチリンガルでもある彼女。インタヴューにも流暢な日本語で応えてくれた。

■歌そのものの美しさより感情表現を優先させる瞬間も

――アルバムの冒頭、「オン・マイ・オウン」(『レ・ミゼラブル』より)を聴いた瞬間から驚きました。「えっ、サラさんの声ってこんなに力強くて、ドラマティックな歌い方だったっけ?!」って。

 今回は1曲目から思いっきりドラマティックにいこうかなと。開幕というイメージで、けっこう強い曲を持ってきました。アルバムのテーマが「シネマ」なので、それぞれの映画の役になりきって、女優になったような感覚で歌っていましたね。ミュージカルや演劇の経験はないのですが、演技にはすごく興味があります。

――たしかに、より「表現」を重視した歌い方になっているなと感じました。

 そう、ときには地声を出したり、叫ぶように歌ったり……歌そのものの美しさよりも、感情表現を優先させる瞬間が多々ありましたね。ピッチの合った完璧な歌唱の美しさも大切ですが、それを壊したとき、聴いている方々の胸にぐっとくるものが生まれると思うので。

――「007 Medley」(『007』シリーズより)も濃厚で、迫力たっぷりですね。サラさんのイメージというと、天から降り注ぐようなピュアで透明感のある歌声でしたが、それを良い意味で裏切られました。

 これまでは、高音でピュアなイメージで歌うことが多かったかもしれませんが、お分かりのように、私は話しているときの地声が低いんですよね。「3オクターブの音域」と言われますが、それは低音も含めての話なんです。そういった意味で、このボンド・メドレーでは、自分の中~低音域の声やダークな面を出すことができて、とても楽しかったです。

――今回のアルバムは、ご自身でプロデュースされた「シネマ・コンサート」がきっかけで生まれたとのことですが。

 とにかく映画が好きで、古いものから新しいものまでいろいろ観ていますが、私の夢は「映画を作る」ことなんです。たとえばクリント・イーストウッドやチャーリー・チャップリンは自分で監督をし、脚本を書き、ときには作曲もして、主演もしますよね。マルチな才能を活かして、すべての面においてクリエイティヴな作業をする、その集大成が「シネマ」ではないかと。つねに「表現者」でありたいと思ってきた自分には、そういったスタイルが合っているように思います。ですからコンサートやアルバムを企画するときも、1本の映画を観ているような構成になるよう考えているんですよ。「シネマ・コンサート」では、オープニング・クレジットやエンドロールのスクリプトもすべて自分で書きました。

――自分で作ったものを、自分で組み立てて、トータルとしてひとつの作品に仕上げるというプロセスがお好きなのですね。

 大好きです。このアルバムも、ヴァラエティ豊かでありつつ、通して聴いたときにひとつの物語のようなイメージを持っていただけるよう組み立てました。ドラマティックに開幕して、真ん中の「ラ・ラ・ランド Medley」(『ラ・ラ・ランド』より)はインストゥルメンタルが多いので幕間の休憩のような感じにして。声のヴァリエーションにしても中~低音域だけでなく、「白い恋人たち」(『白い恋人たち』より)では高い声でふわっとしたアンニュイな感じを出してみたり。じつはコスプレも好きなので、物語の世界に入り込んで、声を変えることでいろんなキャラクターに変身するのが楽しくて仕方なかったです。

新作を巡る質問に丁寧に応じるサラ・オレインさん。今後も、「ジャンルは意識せず、新しいサウンドを作りたい」と意気込みを語ってくれました

■オリジナルと同じではカヴァーする意味がない

――カヴァーだけでなく、ご自身が歌っていらっしゃる映画『ムーミン谷とウィンターワンダーランド』(12月2日 日本公開)の主題歌も収められています。

 小さい頃からムーミンには絵本やアニメで親しんできたので、主題歌のお話をいただいたときはとても嬉しかったです。しかも今回は日本語ヴァージョンだけでなく、英語圏で上映される英語ヴァージョンの主題歌も歌わせていただくことになって。こういったことは非常に珍しいそうなのですが、両方を担当させていただき光栄です。

――誰もがよく知っている映画の名曲を、ご自身の表現としてカヴァーするとき、どういったところに難しさを感じますか?

 新しければ新しい作品ほど難しいですね。たとえば「白い恋人たち」のように古いクラシックな映画の曲は、これまでにも多くのアーティストがカヴァーしていますし、ちょっと遊びのある自由なアレンジにしてもいいと思うのですが、「なんでもないや」(『君の名は。』より)や「レット・イット・ゴー」(『アナと雪の女王』より)はまだフレッシュなので、あんまり変えすぎても違和感を抱かれてしまうのではないかと……。とはいえ、オリジナルと同じに歌ったのではカヴァーする意味がないので、どうやって自分らしさを出せるのかという部分が考えどころでした。「なんでもないや」はRADWIMPSがオリジナルを歌っていて、映画でヒロインの声優を務めた上白石萌音さんもカヴァーしていますが、自分だったらどういうふうに歌おうかと考えたとき、男性でもなく女性でもなく、少年の気持ちになって歌えばいいと思いついたんです。そのイメージを掴んだ瞬間、「あ、それだ!」と思って気持ちよく歌うことができました。

――「なんでもないや」をサラさんは英語で歌われていますが、最後だけ日本語になるところで胸がキュンとしました。

 そこが狙いなんです! いちばん印象的な部分で日本語が出てくると、「きた!」って思いますよね。

――「美女と野獣」(『美女と野獣』より)では、オリジナルを歌っているピーボ・ブライソンとのデュエットが実現しましたね。

 この歌を録音するなら、デュエットの相手は本家本元のブライソン氏しかいないと思っていました。そんなとき、たまたま同じ時期に東京でライヴをやることが分かり、ダメ元でオファーしたら受けていただけたんです。2年ほど前にテレビでデュエットしたことがあって、憶えていてくださったようです。



■ミックスやマスタリングもすべて自分でチェック

――今回のアルバムは、東京室内管弦楽団によるサウンドもゴージャスです。オーケストラとの共演はいかがでした?

 もう、幸せな体験でした。とくに「美女と野獣」はオーケストラとの同時録音だったので、ブライソン氏もびっくりしていました。「今の時代、こんな豪華なレコーディングをしているのはバーブラ・ストライサンドぐらいだよ!」って(笑)。オーケストラが演奏している隣の部屋に入って、クリック音も聞かず、指揮者を見ながら「いっせーのせ」で録音するんです。生のオーケストラに刺激されたのか、ブライソン氏はこれまで何万回もこの歌を歌っていらっしゃるはずなのに、いつもとは違ったニュアンスで歌ってくださいました。やっぱりライヴ感がありますよね。あとで修正できないという難しさはありますが、一発勝負だからこその緊張感もあって。

――そして今作では、これまで以上にサラさんがヴァイオリンを弾いていらっしゃるのも聴きどころ。ソロもたくさん入っていますね。

 ふう~、大変でした(笑)。毎晩、3時4時まで練習して……。けれどヴァイオリンは5歳のときからずっとやってきた私のルーツでもあるので、それも表現したいなと。ヴァイオリンも歌と同じくらい「歌う」楽器だと思います。

――ハイレゾで配信される音源では、そんな歌やヴァイオリンのエモーショナルな表現やライヴ感を、よりいっそう生き生きと、鮮やかに感じることができます。

 ミックスやマスタリングの仕上がりもすべて自分の耳でチェックしているのですが、今回はハイレゾで聴かれる方のためにも細かいところまでいろいろと調整しました。高音が耳に痛いと感じる箇所や、圧迫されている感じがする箇所を指摘したり。エンジニアの方には「それは普通、人間の耳では聞こえない領域だよ」と笑われましたが、耳が敏感すぎるのか、気になっちゃうんです。

――こうしてお話をお聞きしていると、サラさんにとって「歌」は、数ある表現手段の一つにすぎないという感じすらします。

 自分もそうありたいと願っているので、そう感じていただけると嬉しいですね。たしかに今は歌がいちばん自然な表現手段ですが、歌と同じくらい文章を書くことも好きですし、いつか演技にも挑戦してみたいです。

――今後がますます楽しみです。今日はありがとうございました。

「ハイレゾは、ある意味では聞こえすぎるという怖さもありますが、“今の美しさ”を表現できるものでもあると思います。スタジオではそんなクオリティを意識してバランスを考えるなど、音にこだわって作ってきました。ぜひこのクリアなサウンドを皆さんに楽しんでいただきたいですね」




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