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今秋、話題沸騰のイギリス人作曲家。ディーリアスをハイレゾで聴く

2017/10/13
フレデリック・ディーリアス Frederick Delius (1862-1934)


2017年秋、クラシック音楽界でひときわ注目を集めているイギリスの作曲家…
巨匠ケン・ラッセルがその半生を映画化し、ケイト・ブッシュにも影響を与えた…
それが、フレデリック・ディーリアスです。
1862年、イギリス・ヨークシャー地方生まれ。
イギリスのクラシック音楽といわれて、どんなイメージが湧くでしょうか。「イメージも何も、そもそもよく知らない」とか「“威風堂々”みたいな感じでしょ?」という方がいちばん多いかと思います。あるいは、少し聴いたことがある方なら、「メロディアス」「自然の息吹を感じさせる」「難解さがなく、映画音楽のように聴きやすい」というイメージを持っているでしょう。
ディーリアスの音楽は、まさにそのイメージの極致といえるかもしれません。田園を彷彿とさせるのどかなムード。一度聴いたら忘れられない印象的で美しいメロディ。

ひとつ、知られざる要素を付け加えるとすれば「交友関係」。
ディーリアスはイギリス生まれの作曲家ですが、両親はドイツの生まれ。20台前半にはフロリダ、その後はライプツィヒ、さらにパリへと世界各地に移り住み、特にパリではさまざまな芸術家と交友しました。ドビュッシー、ラヴェル、ゴーギャンなど多くのアーティストが一同に介した当時のパリは、みなが分野の垣根をこえてインスピレーションを与え合い、創作に昇華させる、そんなアートの理想郷のような街でした。彼らの人間模様そのものが、数々の名作を生み出したといっても過言でもありません。

このアルバム「カラーズ・オブ・ザ・ハート」も、そうしたアートの相互作用をコンセプトにしたもの。ヴァイオリニストでありディーリアスの研究者でもある小町碧が自ら企画を手がけ、自身のレーベルからリリースしています。



『カラーズ・オブ・ザ・ハート ~ ディーリアス、ドビュッシー、ラヴェル、グリーグ/ヴァイオリン作品集[Digital version]』
小町碧, サイモン・キャラハン








ディーリアスが、パリで、画家のゴーギャンと出会ったのは1894年。
彼は音楽仲間のラヴェルやグリーグとともに、ゴーギャンと交流を深めました。彼のゴーギャンへの傾倒は相当なもので、とうとう『ネバーモア』という絵画を購入するに至ります。彼は、これを自分の音楽室に飾り、終生大事にし続けました。

ポール・ゴーギャン作『ネバーモア』。画家自身にとってもお気に入りの作品であった。


晩年には視力を失うという悲劇に見舞われたディーリアスですが、彼の想像力は常に、ゴーギャンの絵のような豊かな色彩(=カラーズ)と共にありました。
すでに盲目となった頃に作曲し、ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ(トラック1~3)に似ているとも評された「ヴァイオリン・ソナタ第3番」(トラック4~6)には、彼がさまざまなアーティストや作品との出会いを通して、音楽の世界を深化させたことがよくあらわれています。

ディーリアス、ドビュッシー、ラヴェル、グリーグ。同時代に生きた彼らの作品を、ヴァイオリンとピアノで表現したこのアルバム。
すでに2014年にイギリス盤CDがリリースされており、「色彩に溢れる音楽の繊細な解釈」と絶賛されています。ハイレゾの配信は今回が世界初。英国王立音楽院修士課程を首席で修了後、研究を礎にした音楽活動に邁進する小町碧が奏でる、知的な考察に裏付けされたヴァイオリン・ソナタの数々をハイレゾでお聴きください。


小町碧


また、[Digital version]には、小町自身の編曲によるディーリアス作品「夏の夜、水の上にて歌える」より第1曲が追加収録されています(トラック12/こちらのトラックのみ48khz/24bitをアップサンプリングした音源となります)。こちらもキャッチーで美しいメロディの曲。アンコール気分でお愉しみいただけるトラックです。



さて、コンセプトも演奏も音質もじゅうぶんすぎるほどに充実したアルバムですが、せっかくの「芸術の秋」。このアルバムを入口にして、より深くアートの散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。

まず、11月に、本邦初のディーリアスの伝記が出版される予定です。視力を失い衰弱したディーリアスのために作曲の代筆や介助を務めた人物、エリック・ウィリアム・フェンビーが著した貴重な回想録。当アルバムに収録されているヴァイオリン・ソナタも、フェンビーの献身的な代筆により世に送り出されたものです。しかも日本語訳を手がけているのは小町碧。晩年のディーリアスの姿を知るにはまたとない読みものです。
ちなみに、こちらの書籍のタイトル「ソング・オブ・サマー」は、これを原作としてケン・ラッセル監督が製作した映画のタイトルでもあります。

●『ソング・オブ・サマー~真実のディーリアス
(エリック・フェンビー著/小町碧訳 アルテスパブリッシング刊)



また、ディーリアスに関連するリサイタルやイベントも開催予定です。

●2017年10月22日(日) 18:00
小町碧/ミニ・ライヴ&サイン会
タワーレコード渋谷店 7Fイベントスペース

●2017年10月29日(日) 15:00
小町碧×林田直樹×オヤマダアツシ トークショー「真実のディーリアスを語る」
下北沢・B&B

●2017年11月1日(水) 19:00
真実のディーリアス ~小町碧 出版記念リサイタル~(ディーリアス:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会)
銀座・王子ホール


ディーリアスにまつわるこれらの一連の魅力的な企画をオーガナイズするのは、「ディーリアス・プロジェクト」。
このプロジェクトの発起人は、音楽ジャーナリスト・評論家の林田直樹。
「英国のクラシック音楽のなかでも、とびきり美しい旋律と抒情に恵まれ、波乱万丈の生涯を送り、文学や哲学や美術との関係も深く、映画監督のケン・ラッセルやポップス歌手のケイト・ブッシュにも絶大な影響を及ぼした、重要な作曲家」と、林田氏はディーリアスを評しています。

2017年秋は、この作曲家の姿を知るのにまたとないシーズンです。