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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第51回

2017/10/06
ハイレゾとCD規格を比較するなら、これだ!
~ ダイレクト2ch同時録音が生んだ、世界に誇れるハイレゾ音源



楽器イベントの成果から、オーディオを考える

先日、ハイエンド・ベースショップの10周年記念イベントで、セミナー講師を担当しました。楽器ケーブルの魅力と必要性を、ベーシストの皆さんにご紹介するセミナーです。

どのように解説しようかと考えたのが、オーディオ著書で書いた “伝言ゲーム” という例えを楽器に応用するという内容。楽器演奏を伝言ゲームに例えると、こんな感じではないでしょうか。

 演奏者 → 楽器本体 →ケーブル →アンプ →スピーカー

ベーシストは、ついつい演奏者自身の能力と楽器本体のみを重視しがちです。アンプやスピーカーは、スタジオやライブ会場の備え付けを運用する場合が多いですから。さらにケーブルとなると重要度ゼロで、ワゴンセールのものを故障するまで使うのが常。実際、私の学生時代がそうでした。

ここで考える必要があるのは、ケーブルは増幅のできない伝送であるということ。例えば、低域の良く出るケーブル。ケーブルが電気的に低域を増幅できないのなら、乱暴に言い換えると高域のあまり出ないケーブルということになります。

一度失われた音楽情報は、伝言ゲームの下流では補うことが困難です。ケーブルで損失した高域情報は、ベースアンプのイコライザーで元に戻すことはできません。

実際は、信号をより良く流すことで音質向上できる楽器ケーブルも存在します。ですが、セミナーでは脅かし半分に、こうして楽器ケーブルの重要性を解説してきました。
セミナーを終え、楽器の伝言ゲームという例えは、オーディオの問題点を浮き彫りにしているのではないかと考えるようになりました。つまりオーディオではアンプやスピーカーを重視しますが、それよりも楽器演奏における演奏者や楽器本体の向上が大きな要因であるように、オーディオでも上流の方が圧倒的に音質向上できるのではないかという閃きです。

現代のオーディオにおいて、音源再生にはコンピューターが重要な位置を占めるようになりました。楽器演奏における楽器本体に当たるはずのオーディオ再生機器の性能が、このところ軽視されているように感じます。

また楽器演奏における演奏者は、オーディオならば音源でしょう。音源フォーマットが重要性、つまりハイレゾが高音質化に大きく影響することが、楽器の伝言ゲームからご想像いただけるのではないでしょうか。

ではなぜ、実際に音源を聴くと、録音フォーマットの違いが思っているより認識できないのはなぜでしょう? その答えが、今回の太鼓判ハイレゾ音源に隠されているかもしれません。


一発録音の巨大な音楽エネルギーを、5台の録音機へ注ぎ込む!

今月の太鼓判ハイレゾ音源探しに多くの作品を聴きましたが、他の全てが吹き飛ぶくらい、本作が圧倒的! というより、こんなサウンドのハイレゾ、今まで聴いたことがないかも???


『Stereo Sound Hi-Res Reference DSD 11.2MHz/1bit(特典 44.1kHz/16bit音源付)』
TOMA & MAMI with SATOSHI >




『Stereo Sound Hi-Res Reference DSD 5.6MHz/1bit(特典 44.1kHz/16bit音源付)』
TOMA & MAMI with SATOSHI >




『Stereo Sound Hi-Res Reference PCM 192kHz/24bit(特典 44.1kHz/16bit音源付)』
TOMA & MAMI with SATOSHI >





私は、いわゆる従来のオーディオ系チェック音源があまり得意ではありません。「ケーブルにこだわりました」、「高級マイク使用」などなど、いわゆるオーディオ系音源の謳い文句は、実はあまり高音質と直結しないものです。実際の録音現場では、美味しい差し入れの方が、高級機材よりも非常に効果的な場合もあるくらい、人間味あふれる世界ですから。

また、オーディオ系音源で多いのが、鐘の音や花火、スイープ信号といった音楽ではない音源が多いということ。私のオーディオは音楽を聴くためのものですので、音楽以外の信号は装置で鳴らすのすら気が進みません。

ですが本作は、機材やケーブルだけではなく、全てが音楽のための全力投球。音楽の力と音の力が、優しく、そして力強く、一体となってリスナーに届くという素晴らしいハイレゾ音源です。いや~、参りました!

レコーディングの詳細は音源に付属の解説を読んでいただくとして、簡単に説明するならば、一発録音による音楽エネルギーの洪水を、録音フォーマットの異なる5台の録音機に、リアルタイムでドドドと流し込んだ。その結果を比較試聴してみようという、なんとも壮大なオーディオ企画です。

実はこの制作方法、普通のCD音源を作る手法では考えられないもの。なぜなら、一般的に完成したい商品はCD盤だからです。CD盤の仕上がりを無視して、ハイレゾを制作するなんて!

5つの音楽を記録する器。各々の器の大きさを無視し、注ぎ込まれた巨大な音楽エネルギー。初めて私たちが遭遇する、真実のハイレゾ音源が出現したのかもしれません。

実際、本音源に付録としてダウンロードできるCD規格44.1kHz/16bit音源を聴いてみると、それはもう全員が笑っちゃうくらい落胆すると思います。それくらい音楽エネルギーが器に入りきっていないのが確認できるのです。

そしてハイレゾ音源を聴いてみる。音楽エネルギーが器からこぼれることなく、音楽の全てが記録されていることが理解できるのではないでしょうか。

この驚くべき音源制作を実現したのは、日本の誇る巨匠エンジニア、高田英男氏。こんなサウンドを、しかもダイレクト2ch同時録音という離れ業で成し遂げられるのは、レジェンド高田氏だけです。私たちは、まだまだ高田氏の録る音を必要としており、学ぶことが多くあります。


無から生まれる音楽空間を再現する!

本作をどのように鳴らせば良いのか。それは、音楽が無から生まれ、空間を埋め尽くすように満たされていく姿を再現するということ。スピーカーが見えているようではダメですし、イヤホン/ヘッドホンなら頭の中央から音が鳴っているだけでは満点ではありません。宇宙が全方位に広がっていくように、眼前の音楽に包み込まれ、そしてまた無に帰っていく。そのエネルギーの波が記録されているのが本作最大の特長であり、オーディオ腕試しポイントです。

これからのハイレゾ機材開発には、必ず本作を試聴音源として使ってほしいと切望します。本物のハイレゾ音源が完成したことにより、飛躍的にハイレゾ機器の音質が躍進する可能性は大です。そういった意味で、本作の真の意味を理解するのに、あと5年は必要なのかもしれません。

やはり高音質は機材から生まれるのではなく、人の力である。多くを学ばせてもらった作品でした。太鼓判というより、ハイレゾ音源のお手本として世界レベルで全員が所有すべき音源です。



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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。