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【新連載】ヴァイオリニスト鈴木舞の連載コラム【第1回】

2017/09/27
9月20日にデビュー・アルバム『Mai favorite』をリリースしたヴァイオリニスト、鈴木舞。2016年スピヴァコフ国際ヴァイオリンコンクール第二位の受賞をはじめ、国内外の数々のコンクールで受賞経験を持つ。そんな、将来を嘱望される新世代のヴァイオリニストとして高い注目を集める鈴木舞の連載コラムがスタート。
◆バックナンバー
ヴァイオリニスト鈴木舞の連載コラム 【第2回】
ヴァイオリニスト鈴木舞の連載コラム 【第1回】



『Mai favorite』/鈴木舞




フランス音楽への陶酔

-バイオリンとの出会い

“お腹の赤ちゃんにモーツァルトを聴かせると賢い子供が生まれる”

そんな話をどこからか聞いてきた母は、胎教として生まれる前の私に毎日クラシック音楽を聞かせたそう。
それが功を奏したのか、物心ついたときから音楽が好きでした。

初めて楽器を弾いたのは3歳のとき。バレエやお絵描きと共に、習い事の一つとしてピアノを始めました。
当時通った音楽教室は集団レッスンで、10人ほどの歳の近い子供たちが同じ部屋に集まり、教材にそって先生に教わりました。
ところが、音楽は好きなはずなのになぜかピアノは楽しくない。
「みんな一緒に同じ事をするのも面白くないし、あの子にできて私ができないことがあるのもすごくイヤ。」
今にして思うとその時からフランス人的な性格(フランス人は人と同じが嫌い!)だったのかもしれません。

そんなある日、偶然テレビでチェロを演奏している男性の姿を見ます。そのあまりの格好良さに惚れ込み、「バイオリンを弾きたい!」と家族におねだり。
チェロのことをバイオリンと言うものだと勘違いしていたのです。
これが後に人生を捧げる事になる、バイオリンという楽器と私の出会いでした。

バイオリンは楽しいものでした。美人で優しい先生に週に一度、一対一のプライベートレッスンを受けます。他の子供たちと比べられる心配も無く、また周囲にバイオリンを習っている人がいなかったことが、私のフランス人的自尊心を満たしてくれていました。
もともとはチェロを弾きたかったのですが、「この楽器じゃない」と内心では思いつつ、褒め上手な先生のおかげでバイオリンの魅力にどんどんと引き込まれていきます。

当時4歳の私にとってはまだ、バイオリンの演奏は言ってしまえばお遊びの一つでした。小さい女の子たちが、ケーキ屋さんやお花屋さんに憧れるのと同じように、バイオリンの先生に憧れ、バイオリニストになることを夢見ました。

ちなみに私は今でもチェロを弾く男性にめっぽう弱いのです。あの不思議な色気!三つ子の魂百までとはよく言ったものです。






-歌うフランス語

通っていた小学校にはフランス語の授業がありました。滑らかで上品で、歌うような響きが耳に心地よく、すぐに好きになりました。フランスという国がどこにあるのかも知らないうちから、フランス語の詩や歌を、授業で夢中になって歌いました。

「好きな理由」を説明するのは、時々難しいと思います。好きになるのは決まって一瞬で、そして頭より先に、心で好きになる。
私にとってグリュミオーがそれでした。優雅さと力強さ。微笑みとそこはかとない悲しみ。後になって考えると、そんな相反するものが一体となった彼の音楽性に惹かれたのだと思いますが、小学生であった私に複雑な事が分かるはずも無く、ただただ、彼の演奏が好きでした。
グリュミオーは私が生まれる前に既に亡くなっていて、残念ながら演奏を生で聴く事は叶いませんが、出版されているCDを全て揃え、特にモーツアルトとサンサーンスを繰り返し聴きました。
彼がフランス語圏であるベルギーの出身であったことも影響し、その頃からフランス音楽への想いが強くなっていきました。




-演奏家は魔法使い

音楽は魔法。目に見えず、触れることもできず、一瞬で消えてしまいます。
けれどもその不思議な力で、私たちを日常から離れた別世界へいざないます。

クラシックの作曲家というと、バッハ、ベートーベン、ブラームス等、ドイツの作曲家がまず筆頭にあがります。ドイツはヘーゲルやニーチェ等の哲学者も有名ですが、そのイメージの通り、ドイツ音楽も哲学的な「語り」の要素を多く含んでいるように感じられます。静かに、深く。時に情熱的に。
しかし、別世界へいざなう「魔法」の力は、フランス音楽の方が強いのではないでしょうか。

2006年にイスラエルのバイオリニスト、パールマンが来日しました。彼がリサイタルで演奏したフォーレのソナタで、15歳の私は魔法にかかったのです。
万華鏡のように色彩鮮やかな音楽。匂い立つような音色。どこか知らない場所の情景が目に浮かび、時間が止まったように感じました。

幻想的で、ミステリアス。気品があり、煌びやか。これがフランス音楽です。
例えば空気感や、水が光に反射するさまなど、耳に聞こえないものが音楽となり、聴き手の五感を刺激し、想像力をよりかき立てるのです。

私も魔法を使えるようになりたい。このとき心に強く思いました。



『Faure & Strauss Violin Sonatas』
/Itzhak Perlman, Emanuel Ax




-恩師たち

とても頑固な子供でした。何をするにも自分で選ばないと気が済まない。やりたい事はとことんやるけれど、やりたくない事は絶対にやらない。
レッスンで先生に教わったことでも、納得いかなかったり気に入らなかったりすると、先生が書き込んだ楽譜の指示を、家に帰ってこっそり消しゴムで消したこともありました。

10歳から大学卒業まで13年間学んだ清水高師先生は、そんな私の個性を大切にしてくださる方でした。
アメリカで、大バイオリニスト ハイフェッツの元に学び、その後フランンスとイギリスへ渡った、彼だけの「声」を持つ魅力的なバイオリニスト。現在東京芸術大学の教授である恩師です。
様々なエチュードを熟知していて、技術的にうまくできない事があると適切な練習方法を教えてくださり、出来る事が増えていくのが喜びでした。
表現の面では、ああしなさい、こうしなさい、などと言わずに、私たち生徒自身に考えさせるスタイル。
「切り取られた空」「乾いた言葉」「壊れた機械」「幻想を追うように」・・・
穏やかで優しい語り口でヒントをくださり、心の内面からの、そして自分だけの表情を探すように導いてくださいました。

当時の私には難しく、全ては理解できない事もありました。しかし、「あのとき言っていたのはこういう事なのか」と、彼の下を離れてからも、己の成長と共に、すとんと自分の中に取り込まれていく瞬間が多くあります。
演奏の精髄に迫るアドバイスをくださった清水先生への尊敬の念は、自分が年を重ねるごとに増しています。

清水先生と同じくハイフェッツの愛弟子であった、ピエール・アモイヤル先生に出会ったのは大学3年のときでした。
「綺麗なクリスタルの音色じゃ足りないよ。光り輝くダイヤモンドじゃないと」
芸大の招聘教授として来日していたアモイヤル先生の最初のレッスンで言われた言葉です。
毎回のレッスンが新しい気づき、発見に満ちていて、わくわくしました。
フランス音楽が好き。それだけの理由で留学するならフランス語圏、と漠然と考えていた私は、「一度遊びにおいで」とのアモイヤル先生の言葉を受け、夏休みに一人でスイスのローザンヌを訪れます。

~次回はスイス留学以降についてお話ししたいと思います。(10月4日更新予定)



◎ライヴ情報

2017年10月9日(月)
ミニライヴ&CDサイン会
タワーレコード渋谷店7Fイベントスペース
*詳細はこちらをご参照ください。

今後のコンサート情報


鈴木舞 プロフィール

神奈川県出身。2005年大阪国際コンクールグランプリ、2006年日本音楽コンクール第二位、2007年チャイコフスキー国際コンクール最年少セミファイナリスト。
2013年ヴァツラフ・フムル国際ヴァイオリンコンクール(クロアチア)で第一位、オーケストラ賞。オルフェウス室内楽コンクール(スイス)第一位。2016年スピヴァコフ国際ヴァイオリンコンクール(ロシア)第二位。
東京芸術大学附属高校から同大学に進んだのち、ローザンヌとザルツブルクでピエール・アモイヤル氏に師事。在学中より内外でリサイタルやコンサートに出演し、小林研一郎、円光寺雅彦、飯森範親、金聖響、ニコラス・ミルトン、ヨルマ・パヌラ、イヴァン・レプシックらの指揮で、読売日響、東響、日本フィル、東京シティフィル、山形響、日本センチュリー響、名古屋フィル、広島交響楽団、神奈川フィル、ホーフ響、クロアチア放送響、ザグレブ・ゾリステン、ドブロブニク響等と共演し、バッハ、ベートーヴェン、パガニーニ、ラロ、シベリウスなどの協奏曲を演奏している。

最近ではフィンランド・クオピオ交響楽団と共演したショスタコーヴィチ第1番、チェコ・モラヴィアフィルとのモーツァルト第5番、クロアチア・ザグレブフィルとのメンデルスゾーン、スイス・ローザンヌ室内管とのプロコフィエフ第2番などが好評を得ている。
東京交響楽団と録音したベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲〜第3楽章、マスネ:タイスの瞑想曲が日経ミュージックセレクションCD「モーニング・イン・クラシックス」に収録されたほか、山形交響楽団とのモーツァルト第4番は、e-onkyo musicのネット配信で聴く事ができる。
将来を嘱望される新世代のヴァイオリニストとして、2012年度シャネル・ピグマリオン・デイズ・アーティストに選ばれた。
2012年、2013年度、文化庁芸術家在外派遣研修員。2015年度、公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション奨学生。
使用楽器は1683年製のニコロ・アマティ。
ミュンヘン在住。

公式ホームページ

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