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動画投稿サイトでも話題のヴァイオリニスト石川綾子のベスト盤『ジャンルレス THE BEST』がハイレゾで登場!

2017/09/14
ボーカロイドの「初音ミクの消失」をヴァイオリンでカヴァーした動画で人気が沸騰し、この夏には中国での公演を成功させるなど、海外での評価も高まっている石川綾子さん。クラシック界では “デビルズ・アヤコ”の愛唱で親しまれている超絶技巧のヴァイオリニストでありながら、ポップスやロック、映画音楽、アニメ・ソングなどフィールドを越えて挑んだのが、『VOCALO CLASSIC』『CINEMA CLASSIC』『ANIME CLASSIC』『SAKURA SYMPHONY』の4作品です。『ジャンルレスTHE BEST』は、その中から厳選した12曲を全曲リマスタリング! さらに新曲3曲も収録された待望のベスト・アルバムです。ご本人を試聴ルームにお招きし、本作へ込めた想いを伺いました。

取材・文◎鈴木 裕 撮影◎山本 昇


『ジャンルレス THE BEST』/石川綾子



■クラシックに留まらない独自の音楽スタイル

 石川綾子の経歴を短くまとめると、日本で生まれて4歳でヴァイオリンを始め、5歳から10歳までロンドン在住。いったん日本に戻り、15歳でオーストラリアに移住。すぐにディプロマ国家試験に合格。そして、またたく間にオーストラリアを代表する演奏者として脚光を浴び、数々の輝かしい賞やコンクールでの優勝の経歴もある。2007年にはサントリーホール(ブルーローズ)にてソロリサイタルを開催している……。というように続けていくと完全にクラシックの演奏家のプロフィールだが、最初にamazonやiTunesで1位を獲得したのが2014年3月リリースの『VOCALO CLASSIC』だった。「ボーカロイド」のメロディをヴァイオリンで弾くスタイルの音楽だ。
 そこから3年半。4枚のスタジオ録音のアルバムからと、3曲の新曲で構成されるベストが2017年9月13日リリースの本作『ジャンルレスTHE BEST』だ
 現在のような、クラシックの枠にとらわれないスタイルで演奏をするようになったことには、主にふたつの出来事が影響しているという。まずは子供の頃のクラシック・コンサートでの体験だ。
「ふと周りを見ると、客席の大人の人たちが居眠りをしていて……。その時、子供ながらに、私は大きくなったら眠くならないようなコンサートがしたいと思ったんです。どうすれば、寝かせないような音楽ができるか。それを今もずっと考えています」
 もうひとつは、オーストラリアに15歳から移ってからの環境かもしれない。
「私が育ったオーストラリアのシドニーでは、ヴァイオリは身近なもので、チャーチでもストリートでも至るところで弾いている人がいました。そんな感じで、気軽にヴァイオリン・コンサートを聴きに来てくださる方が多くいました。そして、現地の方々は私が日本人と分かると“日本の曲を弾いてほしい!”とよくリクエストをくださり、ジブリや久石譲さんの曲を演奏しました。リクエストに応じて、ゲームや映画の曲を演奏することもあり、とても喜んでいただけて嬉しかったです」
 そう、だから石川綾子の中では、現在の演奏スタイルは自然の流れだったのだ。

■ジャンルを超えて支持された4枚のオリジナル作品

 その流れをまとめたと言えるのが今回のベストだ。4枚のオリジナル・アルバムから、几帳面に3曲ずつが選曲されている。ここで、それぞれのアルバムについて彼女自身に紹介していただこう。

●『VOCALO CLASSIC』(2014年3月)
「このアルバムを作った時、私は初めてニコニコ動画と出会いました。それをきっかけにボーカロイド音楽とも運命の出会いをしました。それまで弾いてきた300~400年前からの楽曲とは真逆の、最先端のもの。私が使っている楽器は1763年製のヴァイオリンですが、“この楽器で現代のソフトウェアが作った音楽を弾くとどんな感じになるんだろう!”ってわくわくして。その中で、ファンの方々からもリクエストをいただいた曲をアルバムに入れました。1曲目の〈初音ミクの消失〉は、まさにこの曲がきっかけで多くの方と出会えた大切な曲です。
 このアルバムでは、ボーカロイドを好きな方々がヴァイオリンに興味を持ってくださったように、またその逆もあったように感じています。『VOCALO CLASSIC』のコンサートでは、10歳代、20歳代の方が多く来てくださり、若い方々や、“初めてクラシックホールに来ました!”と言ってくださる方々にもヴァイオリンを聴いていただけて、すごくうれしいです」

●『CINEMA CLASSIC』(2015年2月)
「映画音楽を演奏したということで、より幅広い方々に聴いていただけたと思います。『パイレーツ・オブ・カリビアン』の〈彼こそは海賊〉の重音でのプレイ。〈君をのせて〉でのヴァイオリンの音色にも合う美しいメロディ。ヴァイオリンは人間の声に近い音に感じています。そして〈NEVER ENDING STORY meets CANON〉は、パッフェルベルの〈カノン〉と融合させています。ジャンルの壁を超えてマッシュ・アップに挑戦した初めての曲です」

●『ANIME CLASSIC』(2015年12月)
「このアルバムはアニメの曲を、ロック寄りのアレンジでクラシック・ヴァイオリンで弾く、ということに挑戦しました。ヴァイオリンの弾き方も意識的に変えています。アニメということは歌のあるメロディで、ひとつひとつの音に気づかれないくらいのアクセントを付けて弾いています。普通、クラシックだと音の間がスムーズに流れるようにレガートに弾くのですが、アニメの曲は言葉をヴァイオリンで表現するために、音の頭を弓の毛で弦を噛むようにして弾いています」

●『SAKURA SYMPHONY』(2016年11月)
「世界に誇ることのできる日本の楽曲を和のイメージで作ったアルバムです。〈Merry Christmas Mr. Lawrence〉はかつてシドニーでよくリクエストをいただいた曲で、海外でもとても愛されています。尺八やお琴の和楽器を素晴らしい奏者の神永大輔さんといぶくろ聖志さんにご参加いただき、生の和の魅力に溢れたアルバムです。〈糸〉も心に染み入るメロディで、私は演歌や歌謡曲をヴァイオリンで弾くのが大好きなんです!歌詞を意識して、演歌のこぶしをヴァイオリンでどう表現できるかなといろいろ試みています(笑)」

「クラシック以外の曲を演奏する際に一番心掛けているのは、原曲を尊重するということです。その曲が好きで、歌詞に思い入れがある方もいらっしゃるので、インストゥルメンタルでも歌詞が見えてくるよう、歌うように弾かせていただいています」

■今後の方向性を予感させる新曲も収録!

 さらに、本作に収録された3曲の新曲についても語っていただこう。
●「CHILD'S ANTHEM」
「この曲はTOTOのカヴァー。今まではヴァイオリンですべてメインのメロディを弾いてきたのですが、この楽曲ではエレクトリック・ギターがメロディを弾いているのに対して、ヴァイオリンが伴奏的なアルペジオのフレーズを弾く役割も果たしています。これが私の中でもとても新鮮で、楽しいです」

●「『誓い』」
「11曲目に収録されている〈『PASSION』〉も私のオリジナル曲ですが、今回はもう一曲新たにオリジナル曲を収録しました。落ち込んでいた時にファンの方々から“泣きたい時は泣けばいいんだよ、いつか光が差す時が来るから”という言葉をいただき、その言葉が心に響き、このメロディが浮かびました。すごく思い入れのある曲で、ファンの方の支えがあって、今、こうした音楽を続けることができているという気持ちを込めています」

●四季より「夏」ビバルディ
「この曲自体は、300年以上前に作られた曲ですが、大胆なロック・アレンジにしました。とてもかっこいいアレンジになったと思います! まずはクラシックと思わないで聴いていただけたらと思います。クラシックを聴かない人にこそ楽しんでほしいとも思っています!」

 この3曲は、これからの石川綾子の方向性を感じさせるような曲でもあり、録音の仕方も次の段階に入っているという。
「レコーディング・エンジニアのニラジさんは今までも一緒にやっていただいてきたとても信頼している方ですが、今回が最高の録り音になったのではと私たちも思っています。新曲ではリボンマイクを使用し、ヴァイオリンの深い音色を上手に録音していただき、あらためて“ヴァイオリンっていい音だな…”って思いました(笑)。ヴァイオリンはやはり音色が命だと思っています。今回は特に、出そうとしている音色がすごくクリアに聞こえてきます。また今回のベストでは、エイベックスのフォームスタジオでマスタリング・エンジニアの小柳令奈さんに全曲リマスタリングしていただいています。昔のアルバムからの曲も、音が生まれ変わっているので、そちらも是非、楽しんでいただきたいです」
 ちなみに新曲を録音したスタジオは「NK SOUND TOKYO」。エンジニアはニラジ・カジャンチ氏という。ヴァイオリンを収録するのに使ったマイクはNEUMANN 269、ROYER R122、ROYER SF24という3本を使い分けているそうだ。

インタヴューの合間、『ジャンルレス THE BEST』の楽曲をハイレゾで試聴。インタヴュアー(右)はオーディオ評論家の鈴木裕さん

■石川綾子の集大成となるベスト・アルバム

 録音について短くリポートしておこう。本人の出しているヴァイオンの音自体が浸透力のある音のエネルギー感が高いもので、語弊があるかもしれないが、どう録っても聴きやすい音にはなる。ただし、今回のベストは4枚のアルバムがリリース順に並んでいるので、その「録音」自体が成長しているのもまた聞こえてくるのがハイレゾらしいところだ。
 冒頭の「初音ミクの消失」では、よく鳴るヴァイオリンをそのまま響かせて録っているが、2、3曲目ではマイクを楽器に近目にして音像がかなり肥大。試行錯誤をしている様子が伺える。『CINEMA CLASSIC』ではよりリアルなヴァイオンリの音色感を獲得。音像の大きさも安定する。『ANIME CLASSIC』ではサウンドステージの奥行きや広がりが優秀な一方、音自体もよりダイナミックに。『SAKURA SYMPHONY』では音がさらに繊細になり、音像どうしの間に空間が見えてくる。そして新曲では、それぞれの曲に合わせてヴァイオリンの音の捉え方を変えており、音のテンション、階調表現、響かせ方など、説得力がさらに上がっている。こういったものが俯瞰できるベスト盤であり,ハイレゾだ。

 最後に、e-onkyo musicのリスナーへ向けたメッセージを尋ねると、こう答えてくれた。
「今回のアルバム『ジャンルレス THE BEST』は私の集大成となる1枚で、思い入れのあるものばかりを収録しました。是非、私たちがこだわり抜いた音を、そのままいい音で聴いていただけたらうれしいです。今日は試聴もさせていただきましたが、特にハイレゾはいいですね。ヴァイオリンの音色の魅力を楽しんでください」
 今の時点の石川綾子がすべてぎゅっと詰まったベストだ。本作の発売記念コンサートはクラシック音楽用のホールで、ストリング・クァルテットとピアノとパーカッション、そして彼女のヴァイオリンの編成で行われるという。前進し続ける“デビルズ・アヤコ”の魅力を楽しめそうだ。

「やはりハイレゾはいい音ですね。新曲は特に、ヴァイオリンの魅力がそのまま伝わってくるようで、聴いていて気持ちがいいです」

◎ライヴ情報
「石川綾子 ジャンルレス THE BEST Concert Tour」

[東京公演]
日程◎2017年11月18日(土)
会場◎第一生命ホール
開場/開演◎17:00/18:00

[名古屋公演]
日程◎2017年11月26日(日)
会場◎今池ガスホール
開場/開演◎13:30/14:00
*詳細はこちらをご参照ください。