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【イベントレポート】『蜜蜂と遠雷 音楽集』リリース記念イベント” @Gibson Brands Showroom TOKYO

2017/07/07
『蜜蜂と遠雷』は、音楽が聴き手の心の中でどう輝くかを描いた作品なんです────“音楽小説を《聴く》 ~ 『蜜蜂と遠雷 音楽集』リリース記念イベント”@Gibson Brands Showroom TOKYO
直木賞&本屋大賞ダブル受賞で話題沸騰中の『蜜蜂と遠雷』(恩田陸)より、物語に登場する19曲を収録したコンピレーションアルバム『蜜蜂と遠雷 音楽集』。

『蜜蜂と遠雷 音楽集』
192kHz/24bit(eilex HD Remaster)2980円(税込)
全19曲(アルバム2枚組相当)



e-onkyo musicでも1位を獲得したこちらのアルバムのリリースを記念して、『蜜蜂と遠雷』ほかさまざまな音楽小説&マンガの魅力を、トークとハイレゾ試聴でお届けするイベントが、6月28日夜に「Gibson Brands Showroom TOKYO」で開催されました。

ダイジェスト動画



なんと、ハイレゾイベントとしては珍しく、会場は半数以上が女性のお客様!
「蜜蜂と遠雷」や「音楽小説」というテーマに惹かれてお越しになった方が多かったようです



トークゲストは、音楽ジャーナリスト・評論家の林田直樹さん、本屋大賞実行委員の高頭佐和子さん。
林田さんは、クラシック音楽を深く愛する立場から。高頭さんは、本を深く愛する立場から、音楽と小説をめぐる熱いトークを繰り広げてくださいました。


イベントの前半は、『荒野のおおかみ』(ヘルマン・ヘッセ/新潮社)、『騎士団長殺し』(村上春樹/新潮社)、『ピエタ』(大島真寿美/ポプラ社)、『テレプシコーラ』(山岸凉子/KADOKAWA メディアファクトリー)など、古典的名著から21世紀のマンガまで、作品内に登場する音楽を織り交ぜつつの紹介。
会場の熱気も高まったところで、いよいよメインの『蜜蜂と遠雷』の話へ……!


●『蜜蜂と遠雷』~本と音楽と「賞」をめぐって~

『蜜蜂と遠雷』は、直木賞と本屋大賞のダブル受賞作であると同時に、ピアニストたちが賞を争うピアノコンクールを舞台とした作品。おふたりのトークは、自然と、「賞」というものをめぐる問題からスタートしました。


林田直樹:昨年の本屋大賞受賞作である『羊と鋼の森』にしろ、(2012年に3位になった)『ピエタ』にしろ、本屋大賞では、音楽小説が受賞/ランクインすることが多いように思いますが、それはなぜでしょうか?

直木賞・本屋大賞ダブル受賞の帯が入った書影


高頭佐和子:音楽小説だから受賞する・しやすいというわけではないと思います。小説というのは「想像する」世界。音楽がかかわると、よりいっそうその「想像」が広がっていく。そこに魅力を感じられるのではないでしょうか。
それから、『蜜蜂と遠雷』に関していえば、ピアノコンクールが舞台ではあるけれど、誰が勝った負けたとか、それだけの話ではないところも魅力ですね。

林田:しばしば誤解されがちですが、音楽のコンクールというのは、音楽家にとっては通過点にすぎません。だから、ピアニストがショパンコンクールで1位になることと、スポーツ選手がオリンピックで1位になることとは、本質的に意味が異なります。
ですので、僕自身は、基本的に、演奏に優劣をつけることはしたくありません。けれど、順位をつける側のポリシーに共感できる場合はまた別です。本屋大賞の場合は、書店員の方の「本への想い」が伝わってくるところが良いと思います。

本への深い愛が伺える高頭佐和子さんのトーク

高頭:本屋大賞は、本屋のお祭り。本の優劣を選ぶのではなく、私たちがかつぐおみこしに乗ってもらう人を選ぶのが本屋大賞なんです。恩田陸さんは若い読者に人気がある作家ですが、『蜜蜂と遠雷』に関しては、受賞の結果、ご年配の男性にも手にとっていただけていて、読者の広がりを作れていると感じます。

●『蜜蜂と遠雷』~音楽小説と、作品内の音楽をめぐって~

おふたりのトークは、音楽の聴き手/小説の読み手をどうやって広げていくかという問題に及び、『蜜蜂と遠雷 音楽集』収録曲の試聴を経て、「音楽小説」の本質へと迫っていきました。

林田:音楽はすばらしいものですが、やはり「言葉がない」という点が弱点でもあります。思考する道具であり、ひとの背中を押す存在でもある「言葉」は、やはり、とても重要なもの。だから、音楽が、小説の存在によって助けられることはとても多いと思います。
また、今は、小説の側も音楽の側も、受け手──つまり、読み手と聴き手の掘り起しが必要な時代。音楽と文学との結びつきが、重要な役割を果たす面も多々あるでしょう。「音楽小説」を、一ジャンルとしてあらためてとらえることもできそうですね。

音楽と小説との関係性を紐解いていく林田直樹さん


高頭:書店では「音楽小説フェア」も企画できそうですね!クラシック、ジャズ、ロックなど、音楽のジャンルごとに小説を分類して展開したり……。
今回の『蜜蜂と遠雷 音楽集』のような音楽商品の存在も、良い役割を果たすと思います。たとえば、クラシック音楽が好きな方であれば、CDの方をまずご覧になって、「あ、この曲が小説に登場するのか。それじゃ読もう」と思うこともあるのではないでしょうか。

(ここで、『蜜蜂と遠雷 音楽集』より、メインの登場人物たちの演奏曲をハイレゾで聴きながら)

林田:登場人物のひとり“高島明石”が予選で弾いているのが、「黒鍵のエチュード(ショパン)」ですね。

高頭:私、明石がいちばん好きなんです!若い出場者が多いなか、彼は28歳の妻子持ちのサラリーマンでありながら、これが最後のチャンスだとコンクールに挑む……がんばって♡ と応援したくなります(笑)

林田::芸術家は、いつも「やろうか、やめるか」という苦しい葛藤のなかに生きています。子供の頃から練習に明け暮れ、将来、音楽家になることが決定づけられていたように見える人でさえも、音楽家になろうという覚悟を持ったのはデビューして久しい30歳を過ぎた頃、という話もよく耳にします。
その意味でも、この『蜜蜂と遠雷 音楽集』の演奏者のセレクトは非常に面白い。「黒鍵のエチュード」を演奏しているのは、もと天才少女ピアニストと呼ばれていたイディル・ビレット。しかしこのトラックでは、大人になった彼女だからこその、爽やかで成熟した演奏を味わえますよね。 それから、小説のなかで優勝候補No.1と目されているピアニスト、“マサル・カルロス・レヴィ・アナトール”が演奏している「音の絵(ラフマニノフ)」。アルバムのなかで同曲を弾いているボリス・ギルトブルグは、現在のナクソス・レーベルにおける実力NO.1ピアニスト。これもまた、非常にこだわりのあるセレクトなのではないでしょうか。

ボリス・ギルトブルグ(NAXOSレーベルのアルバムより)



高頭:主人公“風間塵”の演奏する「ジュ・トゥ・ヴ(サティ)」が、実際にはコンクールでは演奏されない曲だということは、実ははじめて知りました。でも、こうして実際に聴いてみると、確かにコンクールらしくない曲ですね。

林田:現実のコンクールなら、選んだだけで落ちてしまうでしょう。しかし、こういうセレクトもフィクションならでの妙ですよね。
さらに、この小説のすごいところは、演奏や作品の特徴を細かくなぞるような描写ではなく、他のコンテスタントや観客がそれを聴いたときの心の動きでもって音楽を描写しているところ。これは、音楽評論には決してできない仕事です。音楽が、さまざまな人生を負ったひとの心の中で、どのように複雑に輝くか。それを描くことによって、コンテスタントらの「出会いの物語」を紡ぎ出している。『蜜蜂と遠雷』は、そんな小説だと思います。

●「ハイレゾに耳が開かれる」ということ
今回のイベントでは、『蜜蜂と遠雷 音楽集』『ハイレゾクラシック the First Selection (eilex HD Remaster version)』『天使のハープ ~ 5台のヒストリカル・ハープがいざなう、中世のダンス・パーティ、ダ・ヴィンチのアトリエ、マリー・アントワネットのサロン』など、e-onkyo musicで配信されているハイレゾアルバムから、さまざまな音楽小説に登場する10トラックを試聴していただきました。

来場したお客様からは、

・きれいできもちよかった
・ピアノの鍵盤の感触や重みまで伝わるような立体的な音色でした
・空気に雑味がなく、音が美しく響いていたのが印象的でした
・まるで演奏会で音楽を聴いているような音質だった
・体の中で音が鳴っている感じがした
・ほど良い響きで、低音ののびも心地良い。高音もきつすぎず、ずっと聴いていたくなる
・水滴が落ちる瞬間をブラウン管で見るときと、最新のプラズマで見たときみたいな感じだった

など、さまざまな声があがりました。
特に、『蜜蜂と遠雷 音楽集』収録曲の「喜びの島(ドビュッシー)」にはたくさんの反響が。

・奥ゆきを感じた。音の輪郭がくっきりでした。ドビュッシーの音源がとても良かった
・高音が水晶のように輝いていました。喜びの島の冒頭部分、光が反射しているような美しい音でした
・ボレロと喜びの島で臨場感を感じました

なかには、

・CDとの違いがわかりませんでした

という率直なご感想もありましたが、「実は僕も最初はわからなかった」と、林田直樹さん。

「自分がプレゼンターを務めるインターネットラジオ「OTTAVA」でハイレゾに触れるようになってから、少しずつ違いが実感できて、「耳が開かれる」ようになってきたんです。「質(クオリティ)」というものの恐ろしさは、1回味見しただけではわからないけれど、毎日毎日摂取しているうちに、身体に影響を与えるほどのものになっているところ。音楽は身体に入れるものなので、音が良いというのは非常に大事なことです」

おふたりとも、ハイレゾに熱心に耳を傾けていらっしゃいました

ご来場者様へのアンケート結果によると、ハイレゾを日常的に聴いているという方が約2割。「1~2回くらい聴いたことがある」という方が7割。文化への感度が高く、すでにハイレゾを試し聴きしたこともあり、その上でさらなる耳の体験を求めてお越しくださった方が多かったようです。
良質な本を読み、そして、良質な音を聴く。コアなオーディオファンでなくても、「音」の質というものに価値を感じはじめている方が増えている、ということを実感させられます。

音楽小説『蜜蜂と遠雷』を通して、またひとつ、ハイレゾの新たな可能性を感じさせられる一夜でした。

『蜜蜂と遠雷 音楽集』は、引き続き、e-onkyo musicで配信中です。

『蜜蜂と遠雷 音楽集』