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「Kilauea Forest 24Hours」24時間録音についてbyジョー奥田

2017/06/24
24時間録音について考え始めたのは、ハワイの森に住み始めてからのことだった。
それまでも録音ロケではいつも森の中に入ってはいたが、実際に森の中で生活してみると、1日の時間の流れが、自然の音と共にあることの心地良さに、改めて気がつく。 鳥達の声と共に朝が始まり、虫の音と共に一日が終わる、そんな森の24時間をそっくりそのまま録音して、人に届けることが出来たら面白いだろうな、と思い始めたのがきっかけだった。


『Kilauea Forest 24Hours』/ジョー奥田



この『Hawaii Forest 24hour』 は、ハワイ島ボルケーノの森を、24時間録音したファイルを1時間ごとに区切り、その各時間帯の中から、それぞれ2分30秒ずつ選んで切り取り、ひと続きに並べて繋げてある。つまり、24時間の時間の流れを1時間に圧縮している。これは最近一般化した映像の手法、タイムラプス・ムービーの手法と同じだ。言わば、サウンド・タイムラプスと呼んで良いかもしれない。

そういった意味で、本作品は、私の今までの作品とは手法もアプローチも全く違っている。今までの作品は、録音した素材をもとに、自然のストーリーをひとつの流れに添って展開していく手法だったが、この『Hawaii Forest 24hour』はより実験的であり、より客観的であるように思う。

森の24時間が、実際の24倍の早さで流れていく、そんな体験の面白さを感じていただければありがたい。



各トラックの解説

1. 06am-12pm
ここボルケーノの森は1年に288日雨が降るレインフォーレストだ。夜は大抵しとしとと雨が降る。ボルケーノの鳥たちは雨には慣れっこなので、少々の雨でも空が明るくなる前に鳴き始める。
この日は朝7時頃に雨が止み、薄陽が差し始めた。森の中は雨が止んだ後も、木々の葉に溜まった雨水が、雫を落とし続ける。そして昼前には、日差しがだんだんと強くなり、木々の葉も乾き、小鳥達の声が響く。


2. 12pm-18pm
山奥とはいえ、ひとは暮らしている。なので人が作り出す騒音から逃れることは出来ない。現在、地球上で人が作り出す騒音が届かない場所は極めて限られているそうだ。
人が住んでいるところでは必ず飛行機やヘリコプターが飛ぶ。必ず犬が鳴く。どこかで誰かがチェーンソーで木を切る音が聞こえる。そして大抵の場合、それらの音は不快なものだ。今回、シーンを選ぶにあたって、なるべく人工的な音は省くようにしているが、 それでも遠くに薄っすらと、飛行機が飛ぶ音や車が通過する音が聞こえる。ここハワイ島の人里離れた山奥ですら、人の気配から逃れることはとても難しい。



3. 18pm-24pm
夕方になるとハトが鳴き始める。鳥達が巣に戻り始めるように、人も家路へと向かうので車の行き来が多くなる。陽が落ちて鳥達が鳴き止む頃、虫達が交代で登場する。鳥達の声が止んで森が静かになり、 より遠くの音が聴こえ始める。遠くの幹線道路を通る車の音や、ヒロ空港に出入りする飛行機の音が聞こえる。人の営みの音。これも今や地球の音の一部なのだ。静寂を愛する森の生き物達は、この音をどんな風に聞いているのだろう。



4. 00am-06am
午前0時を過ぎると、人の気配はまったく感じなくなる。聞こえるのは、虫の声、夜露が落ちて葉を打つ音だけ。ずっと耳を澄まして聴いていると、夜の森の闇に吸い込まれそうになる。 明け方近くから霧雨が降り始める。遠くから犬の声、ニワトリの声が聴こえ始め、人の生活の気配を感じ始める。5時を過ぎた頃、明るくなり始め、一番鳥が鳴く。こうしていつものように森の一日が始まる。





アーティスト紹介

ジョー奥田

自然音録音家・音楽プロデューサー・音響空間プロデューサー。バイノーラルマイクとDSDレコーダーで、世界各地の自然音を録音する。その素材を元に、音楽制作で培った編集でストーリー性豊かな世界をクリエイトする。1980年に大阪歯科大学卒業後、ロサンゼルスに渡り音楽活動を開始する。1991年にはサザンオールスターズのカバーアルバムをソニーレコードより発売し、25万枚のセールスを記録。フィリップ・ベイリー(EW&F)、レオン・ラッセル、ロバータ・フラック、ピーボ・ブライソンなど、著名アーティストのプロデュースを行い、1998年から自然音楽家として活動開始する。現在、活動拠点を東京からハワイ州ハワイ島に移し、ボルケーノヴィレッジに移住。自宅には水道が来ていない代わりに、雨水を再利用したシステムを作っている。失われてゆく自然環境の実態に警鐘を鳴らし、そのことに無関心になっている人の心にさらなる危機感を持つ。時代の「目撃者」として、残された美しい自然を音の記録として、七代先の世代へと伝えてゆくことをライフワークとする。