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【4月24日更新】 ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music

2017/04/24
衛星デジタル音楽放送ミュージックバードで、2017年1月にスタートした番組「ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music」と連動したコラム。音にこだわるオーディオ・ファン、ハイレゾに初トライしてみたいクラシック・ファンのために、「ハイレゾ女子」として活躍する音楽ライター・原典子が、e-onkyo musicから選りすぐりのタイトルをご紹介します。
文◎原典子
第5回:確信犯的クラシック――革新的NEXT GENERATIONS

 5月は「確信犯的クラシック――革新的NEXT GENERATIONS」と題して、注目の新世代アーティストをご紹介していく。なにやら大仰なタイトルだが、ただ年齢的に「若い」、技術的に「巧い」というだけではなく、クラシック音楽の新たな扉を開き、その可能性を切り拓いていく革新的なパワーとセンスを持った新人類をフィーチャーしたいと思う。
 とはいえ、いつの時代も「すごい新人」というのは存在するわけで、今では巨匠と呼ばれる音楽家も、その昔、楽壇に登場したときは「革新的な若手」であった。けれど、2000年代に入ってから頭角を現し、現在クラシック界の中心で引っ張りだこの活躍を見せている若手の中には、「なにか根本的に違う」ものを持った新人類がいると感じるのは、果たして私だけだろうか?

 「根本的に違う」ものとは一体なんなのか、それをひとつに限定して説明することは難しいかもしれないが、ひとつ言えることは、それまでの世代とは「育ってきた環境、触れてきた情報」がまったく異なるということ。今の20~30代の音楽家たちは、物心ついたときからインターネットがあり、デジタルのテクノロジーに囲まれて育った、いわゆる「デジタル・ネイティヴ」。iPodにお気に入りの音楽を入れてシャッフルし、ショパンのすぐあとにビョークがプレイされても、なんの違和感も抱かない世代である。知りたいことがあればすぐにネットで検索し、膨大な情報、あらゆる音楽にアクセスできる環境で育った彼らは、やはりこれまでの音楽家とは異なる感性を持っているはずで、それは当然、彼らの演奏にも表れているではないだろうか。皆さんもぜひ、その革新性をご自身の耳で感じ取っていただければと思う。

■テオドール・クルレンツィス、世界を席巻中!

 前置きが長くなってしまったが、とにもかくにも今、私がいちばん気になる音楽家はといえば、指揮者のテオドール・クルレンツィスである。ギリシャ出身、ロシアで学び、みずから創設したアンサンブル・ムジカエテルナを率い、モスクワから1400キロも離れたウラル山脈のふもとの工業都市ペルミを拠点に世界を席巻中。ソニー・クラシカルと専属契約を結んで録音したモーツァルトのダ・ポンテ・オペラ三部作は、日本でも大きな話題となっている。
 放送ではパトリツィア・コパチンスカヤと共演した『チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 他』と、『ストラヴィンスキー:春の祭典』をお届けするが、どちらもクラシック音楽から「威厳」や「伝統」といった要素をきれいさっぱり洗い流したかのような、フレッシュかつ自然美に満ちた演奏である。ムジカエテルナはピリオド楽器もしくはそのコピーを使用しているが、その理由についてクルレンツィスは「歴史的な事実に近づきたいからではなく、作品のドラマを伝えるにあたって必要としている躍動感やスピードのある引き締まったサウンドが実現できるから」と述べている。あくまで自身の追求するサウンドを実現する手段としてピリオド楽器を使用する――これまでの音楽家にはない感覚ではないだろうか。
 ポートレイト写真を見ると、奇抜なファッションに身を包んだクルレンツィスは、まるでロックスターのようでもあり、はっきり言って変人オーラ全開。しかし、新作を出すごとにセンセーションを巻き起こす彼が決してゲテモノ扱いされず、正当的に高く評価されているのは、徹底した研究にもとづく日々の研鑽、そしてオーケストラを統率する技量とカリスマ性があるからこそ。これからも、その魔力で音楽界を翻弄してくれることだろう。

■新時代のヴィルトゥオーゾ像

 「奇抜なファッション」といえば、超ミニのワンピースと、10センチ以上はありそうなハイヒールがトレードマークのピアニスト、ユジャ・ワンが思い浮かぶ。私は大ホールのはるか後方の席でその演奏を聴いたとき、一音一音がまっすぐ自分のところまで届いてくる感覚に驚愕したことがあるが、ユジャは高い技術だけでなく、真の音楽性を持ったピアニストである。そんな才能を武器にスターダムへと登り詰める彼女の姿を見ていると、偉大なる作曲家が作ったクラシック音楽に「奉仕=自分を捧げる」のではなく、ポップやロックのスターと同じく、音楽を通して自己を表現しているように感じられる。今の時代、クラシック界にもYouTubeへの投稿がきっかけでスターになった音楽家が出現しているが、自己表現の手段としてクラシックを演奏する、それこそが「新時代のヴィルトゥオーゾ」像ではないかと思う。

 ほかにも若手カルテットの台頭や、古楽界での新たなムーヴメントなど、ここでご紹介したい新人類はまだまだいるのだが、字数が尽きたので次の機会に。

<ニュースな個性派たち>

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲、ストラヴィンスキー:バレエ・カンタータ「結婚」
録音:2013・2014年/Sony Music Labels Inc.



テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ ストラヴィンスキー:春の祭典
録音:2013年/Sony Music Labels Inc.



パトリツィア・コパチンスカヤ(vn) ほか TAKE 2~ヴァイオリニストとふたりで~
録音:2014年/Alpha



<新時代のヴィルトゥオーゾ>

ダニール・トリフォノフ(p) 超絶! トリフォノフ・プレイズ・リスト
録音:2015年/Deutsche Grammophon


レオニダス・カヴァコス(vn)エンリコ・パーチェ(p) ヴィルトゥオーソ
録音:2015年/Decca


レオニダス・カヴァコス(vn)エンリコ・パーチェ(p) ヴィルトゥオーソ
録音:2015年/Decca


<シーンをリードする先達>

クリスチャン・ヤルヴィ指揮MDR交響楽団、同合唱団、アン・アキコ・マイヤース ほか
ペルト:パッサカリア
録音:2015年/Naive


ダニエル・ホープ(vn)チューリヒ室内管弦楽団 ほか フォー・シーズンズ
録音:2016年/Deutsche Grammophon


アレクサンドル・タロー(p) J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲
録音:2015年/ERATO


<響き合う若き感性>

エベーヌ弦楽四重奏団、ゴーティエ・カピュソン(vc)マティアス・ゲルネ(Br) ほか
シューベルト:弦楽五重奏曲D.956&歌曲
録音:2015年/ERATO


反田恭平(p)アンドレア・バッティストーニ指揮RAI国立交響楽団 ほか ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、パガニーニの主題による狂詩曲
録音:2015・2016年/日本コロムビア


アリス=紗良・オット(p)フランチェスコ・トリスターノ(p) スキャンダル
録音:2013年/Deutsche Grammophon


<チャレンジングな女性たち>

バーバラ・ハニガン(S)アンドリス・ネルソンス指揮バイエルン放送交響楽団 ハンス・アブラハムセン:Let Me Tell You
Winter and Winter


エレーヌ・グリモー(p)ソル・ガベッタ(vc) デュオ
録音:2012年/Deutsche Grammophon


ヴァレンティーナ・リシッツァ(p) ショパン:24の練習曲、シューマン:交響的練習曲
録音:2014年/Decca


<バロックはロックだ>

マハン・エスファハニ(cem) J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲
録音:2016年


録音:2015年/ERATO


アンサンブル・ネヴァーマインド、ジャン・ロンドー(cem) フランス・バロックからロココへ ~カンタンとギユマン、四重奏編成によるソナタと協奏曲~
Alpha






【バックナンバー】
<第1回> 違い歴然!ハイレゾで聴きたい名曲名盤
<第2回> ポスト・クラシカルが止まらない!
<第3回> 世界のこだわりレーベル探訪 その1!
<第4回> 春の声



※衛星デジタル音楽放送ミュージックバード 121ch THE CLASSICにて放送!
新番組「ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music」【24bit放送】
(月~金)15:00~18:00 リピートあり、1月2日(月)スタート
出演:原典子
◆ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music 番組ウェブ・サイト

※ミュージックバードとは
音楽にこだわる人の高音質衛星デジタル音楽放送です。
本格派クラシック、ジャズをはじめ、歌謡・演歌、ロック、J-POPなど、 音楽ジャンルごとに専門チャンネルを放送。いい音にこだわる オーディオ・ファンのためのチャンネル「THE AUDIO」も絶賛放送中!多彩なジャンルを50ch 月額2,000円 (税別)から。
お問合せは、
ミュージックバード カスタマーセンター TEL 03-3221-9000
<平日・日・祝日>10:00~12:00、13:00~18:00 (※土曜休業)
オフィシャル・ウェブサイト


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出演者:原典子(はら・のりこ)
音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在はフリーランス。『intoxicate』『CDジャーナル』など音楽雑誌への執筆のほか、坂本龍一監修の音楽全集『commmons: schola』の編集を担当。鎌倉で子育てをしながら、「レゾナンス<鎌倉のひびき>コンサートシリーズ」の企画にも携わる。
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