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20歳になった“手数姫”川口千里のメジャー第一弾 『CIDER 〜Hard & Sweet〜』がハイレゾで好評配信中!

2017/01/27
かつて天才女子高生ドラマーとしてYouTubeを中心に国内外の注目を集めた川口千里さん。女子大生となった今、ドラミングはいっそう磨きがかかり、その実力は、ドラム関連サイト“DRUMMERWORLD”で世界のトップ・ドラマー500人に選ばれ、また海外での単独ライヴを成功させるなど、すでにワールドワイドで証明済み。本作『CIDER 〜Hard & Sweet〜』は、そんな川口さんのテクニカルなドラムと若々しい音楽性が堪能できるメジャー・デビュー・アルバムです。e-onkyo musicでは、そうした彼女の“手数”も隅々まで見渡せるハイレゾ音源で配信中。ここでは20歳を迎えたばかりの川口さん、そして彼女の音楽を支えてきたプロデューサー/エンジニアの木村正和さんのお二人に伺ったインタヴューをお届けします。

文・取材◎大山哲司 撮影◎山本 昇

川口千里『CIDER ~Hard & Sweet~』




 幼少の頃からYouTubeへの投稿などで世界中からその実力に注目が集まっていたドラマー、川口千里が20歳にしてついにメジャー・デビューを果たした。“手数王”菅沼孝三に師事し、自らもすでに“手数姫”の異名を得るほどの存在。そのメジャー・デビュー作となる『CIDER 〜Hard & Sweet〜』にも当然のごとく大きな期待が寄せられている。レコーディングはフィリップ・セスをサウンド・プロデューサーに迎えてLAで行われた。インディーズ・デビュー以来、プロデューサーとして、またエンジニアとして作品作りに関わり、川口本人も絶大な信頼を寄せる木村正和氏にも同席いただき、話を伺った。

最新作のレコーディングなどについて、楽しく語ってくれた川口千里さん



■動画投稿サイトから始まったドラマーへの道

 実際の川口は、会ってみればそのパワフルなドラミングとは対照的に、謙虚で気さくな印象。女性としてもとても魅力的だ。そして彼女が語ってくれたドラムを始めるキッカケは、いかにも新世代のミュージシャンらしいものだった。

「最初にドラムと出会ったのは5歳の時でした。父が自分自身の趣味のために買ってきた電子ドラムをおもちゃ代わりにして遊んでいたんです。当時はPlay Station 2が発売されていて、それにつないで演奏できたので、〈ドラムマニア〉というゲームをやっていましたね。ドラムを習い始めたのも5〜6歳の頃でした。両親に何か習い事をしないかと言われて、ピアノを薦められたんですが、“嫌だ、私はドラムがやりたい”とわがままを通して。最初の3年間は地元の先生に習い、8歳から菅沼孝三先生に師事させてもらいました」

 当時はどんなドラマーが好きだったかを聞くと、意外な答えが返ってきた。そして演奏技術はもちろん、音楽的な経験を積む上でも菅沼の存在が大きかったという。

「一番最初はディープ・パープルのイアン・ペイスが大好きだったんです。憧れでした。両親は全然音楽を知らなかったので、その後はすべて孝三先生がキッカケを与えてくれました。習いに行くことが決まった時に、まずライヴを観に行ったんですが、もう言葉も出ないほどびっくりしちゃって。第一印象は強烈でしたね。
 習い始めると、レッスンに用意してくださった楽曲がすごくカッコ良かったりして、それをキッカケにいろいろな音楽を聴くようになったりして広がっていきました。でも先生のライヴを見に行ったりすると、“それじゃ2部の頭ね”なんておっしゃるんです。“どういうことですか?”と聞くと、“この曲、レッスンでやったでしょ? 僕は2部の最初は休みたいから”と、いきなりステージで叩かされるんですよ。生徒へのそんな無茶振りに、当時は困ったなぁと思ったこともありましたけど、そのおかげでいろいろなミュージシャンとのつながりができました。今思うとありがたいなと思いますね」

 ご存知の方も多いと思うが、その後インディーズでデビューするまでの道のりもまた新しい。チャンスを広げてくれたのはYouTubeだったという。

「中学生の頃に人気アニメ曲を“叩いてみた”シリーズとしてアップしていたんです。YouTubeの動画が流行っていた時期ですし、アニメソングも波に乗っていたので、それがキッカケでいろいろな人が注目してくれました。その中に現在の事務所の社長、木村さんがいて、“東京でライヴをやってみないか?”と誘ってくださったんですよ。14〜5歳の頃でした。その頃からこの道で頑張っていけたらいいなと思い始めたんです。インディーズの1stアルバムをリリースしたのは16歳の時。レコーディング自体もそれが最初でした。私はそういうチャンスに出会うと基本的に引き気味になってしまうんですよ。“もっと前向きになりなさい”とよく言われます。そういった面で背中を押してくれるのが木村さんなんです」

インディーズ時代から川口さんを支えてきたプロデューサー/エンジニアの木村正和さん。
本作の録りとミックスも担当している



■ドラムの鳴りが違うLAでのレコーディング

 インディーズで2枚のアルバムを残し、20歳になった今、満を持してメジャー・デビュー作をリリースすることとなる。名手フィリップ・セスをサウンド・プロデューサーに迎えてLAレコーディングを敢行したことからも、期待の大きさと注目度の高さがうかがえる。その辺りの経緯を彼女の背中を押し続けた木村正和氏が語ってくれた。

「インディーズの1枚目『A LA MODE』(2013年)は日本のいろいろなミュージシャンに参加してもらって、それこそオールスター的な布陣で作らせてもらったんです。その時はとにかくアルバムを1枚作りたいということで、“出せて良かったね”といった感じでした。でもその評判が良くて、周りから“2枚目はいつ作るの?”などと言われていたんです。このアルバムではブライアン・ブロムバーグに1曲だけ参加してもらいました。LA在住なのでデータのやりとりで制作したんですが、間に入ってもらったLA在住の日本人コーディネーターには“1曲だけじゃなくてもっと何曲かやろうよ”と言っていただいていた。予算の関係もあってこの時は1曲だけになったんですが、“2枚目があればお願いします”といった話をしていたんです。2枚目『Buena Vista』(2014年)を作るに当たっては、もちろん1枚目よりも良いものを作らなきゃいけない。せっかく言ってくれていたので、それじゃあLAでやってみようということで、向こうのすごいミュージシャンに参加してもらいました。
 そして、通算3枚目となるメジャー・デビュー作でそれ以上のものを作るとなると、今までと同じようなアプローチじゃ面白くない。そこでメンバーを固定して1枚作ってみるのはどうだろうと思い、『Buena Vista』にも参加してもらったフィリップ・セスさんに白羽の矢を立てました。彼のトリオPSP(フィリップ・セス、サイモン・フィリップス、ピノ・パラディーノ)を聴いても、音楽的にはすごく川口に合うんじゃないかと思ったんです」

 川口本人はフィリップ・セスとの共演について、どのような感想を抱いているのだろうか?

「個人的にもPSPは好きだったんですが、まさかOKしてくださるとは思わなかったんですよ。実際にお会いしてみると、情熱的だし、すごくタフなんですよね。作品に対して常に一直線に取り組んでいるという感じ。そういう姿勢が素晴らしくて、見習わなきゃいけないなと思いました。現地に行く前はメールでやり取りしていて、私が作った2曲のデモ音源を送ると“アレンジしました”と譜面が返ってきたり。デモ音源の段階ではドラムも打ち込みです。私はまだまだソフトの使い方が未熟なので、その辺は日本のキーボーディストの安部潤さんに協力していただきました。現地に行ってからは細かい部分をその場で打ち合わせてレコーディングするといった感じでしたね」

 アルバムを聴いてみると、シンセサイザーを多用したフィリップ・セスのキーボードと川口のドラムの相性の良さがよく分かる。特にクラビの刻みとドラムで紡ぎ出すグルーブは絶妙だ。ドラムとギターという組み合わせでは恐らく実現しなかったサウンドだろう。しかし彼女は、当初はもっとアコースティックなサウンドにしたかったのだと言う。

「もともとはピアノ・トリオのサウンドをイメージしていたんです。最初にいただいた音源が1曲目の〈FLUX CAPACITOR〉で、それほどアコースティックな感じではなかった。でもそれを聴いて、こういうサウンドも意外と面白いなと思ったんです。そこで少しずつ方向転換していったら、当初の予定とはかなり変わっちゃいましたね。でも、より私らしくなった。フィリップさんはどんどん新しい要素を加えていくんですよ。この曲ではクラビをたくさん入れたい、この曲ではマリンバをもっとかぶせたいなどと、いろいろなアイディアを提案してくださるんです。クラビもマリンバも一緒にレコーディングするのは初めてだったんですが、すごく面白かった。新鮮でしたね。おかげで1曲ごとに雰囲気の異なる曲が集まって、良いアルバムが出来上がったと思います」

 先述のとおり、レコーディングはLAのスタジオで行われた。ドラムの鳴りも日本とは全く異なり、LAのスタジオの開放的な雰囲気も音に残っているという。

「2枚目の時には、“何でロスまで行かなきゃならないの?”と思ったんですよ。お金がかかるだけじゃないかと思って……。でも行ってみたらドラムの鳴りが全然違っていて驚きました。空気も乾いていて、スタジオも開放的な感じで。今回は普通の住宅街にある民家を改造したようなスタジオだったんです。コントロール・ルームとブースの間には扉が2枚ぐらいあるんだけど、閉めても音がだだ漏れでしたね。でも、ベースのアルマンド・サバルレッコを始めハッピーな感じの人ばかりで、まずこの場を楽しもうという感じなんですよ。それが音にすごく残ったなと思います。  さすがに自分のセットをLAに持っていくのは難しかったので、向こうのヤマハさんにAbsolute Hybrid Mapleというセットを用意していただきました。音が好きなので、できればいつも使っているドラム・セットがいいとわがままを言って準備してもらったんです。現地のコーディネーターの方がもともとドラムをやられている方なので、その方と相談しながらスネアの音を調整したりして、1曲ごとにチューニングも変えました」

アルバム・タイトルの“CIDER”は、日本では爽快感あるイメージになるので、
20歳という若さを表現できると思ったのと、
海外ではリンゴ酒の意味を持ちますので少し大人の感じもありますよね。
楽曲も、スウィートなものとハードなもの両方を含みますので、こう表記してみました



■細かな手数もハイレゾで聴き取ってほしい

 ミックス・ダウンは木村氏の手により、日本で行われた。今回はハイレゾでも配信されるということで、ハイレゾでの本作の聴きどころを木村氏に伺った。

「スタジオ・ワークで聴いている音は常にハイレゾなんですよね。でも、CDの場合はマスタリングで16bit/44.1kHzに落とさなきゃいけない。その段階で、“ああ、こうなっちゃうよね”という部分があるんです。シンバルの高域のきらびやかさなど、失われる部分が少しある。いつもそこは残念だなと思っているんです。だから常々できればハイレゾで聴いてほしいという思いはありましたね。今回は24bit/96kHzで配信されるということで、ほぼスタジオで聴いていた状態に近い音で聴けます。それはすごくありがたいですね。CDでは失われるような要素も聴き取れると思います。2枚目もそうでしたが、今回も日本からマイクを持って行っているんです。オールドのマイクをリイシューしたTELEFUNKEN(テレフンケン)のELA M251というすごく良いマイクで、1本120万円するんですけど、それを2本ドラムのトップに使いました。その威力もすごく大きくて、シンバルがきれいに録れています。〈ZEMBLA〉のイントロではドラムだけになる部分があって、しかもシンバル・ワークがかなり効いているんですが、そういった部分はきれいに録れていると思いますよ。
 あとはミックスした時の、全体の一体感が、CDだと塊のような感じに聞こえてしまうことがある。ロックなら逆にパワフルに感じられて良かったりするんですが、こういう音楽だと少し音場が小さくなってしまうんですね。少しすき間があったところが、ギュッと詰まって余裕がない感じに聞こえてしまうことがある。やはりハイレゾで聴いてもらえると嬉しいですね。ジャズやフュージョンのような音楽をハイレゾで聴くと、それぞれのプレイヤーがやっていることがクリアに分かると思います。僕自身、個々のプレイヤーが何をやっているのかを聴きたい方なので、それが聴き取れるように作っています。ドラムに関しても、ハイハット・ワークなど、細かい部分も聴き取れるようになっていると思います」

 一方、川口は、音作りに関しては木村氏を信頼して任せているということだが、やはりプレイした音をそのままのクオリティで聴いてほしいという思いは強いようだ。

「3曲目の〈Longing Skyline〉などはシンバル・ワークをテーマにして自分で書いた曲なので、そういった部分が録ったままちゃんときれいに聞こえてくれると思うと嬉しいですね。ドラムのバランスは難しくて、ドラマーのアルバムなんだけど、ドラムが出過ぎてもいけない。1枚目や2枚目は、どちらかと言うと“見せつけてやる”、“かかって来い”みたいなところがあったんですが(笑)、今回のアルバムは何度も聴いてほしいということもあって、“ドラム! ドラム!!”という感じにはしたくなかったんです。いろいろな方のソロ・アルバムを聴かせていただくと、その人の技術を聴かせる部分はたくさん盛り込まれているんですが、音楽として総合的に釣り合っているものが多いなと感じます。今回はそういうところも意識しました。
 私は基本的には自分が一番底辺だと思っていて、ライヴを見に行くとどんなドラマーを見ても素晴らしい部分がたくさん見つかって、毎回興奮しちゃうんです。それをちゃんと吸収して出力できるかどうかは別の問題なんですけどね(笑)。そこは頑張らないと。2枚目から2年経って、いろいろと場数を踏ませていただき、頑張って技術も上げてきたつもりです。そういった部分を高音質のハイレゾで聴き取ってもらえるといいなと思います。一見簡単に聞こえるような部分でも、すごく細かいことをやっていたりするので、そういう部分もぜひ聴いていただきたいですね」

 YouTubeをキッカケにチャンスが広がっていったように、川口はこのアルバムが世界へと飛翔するスタート地点になればいいと言う。そして上原ひろみのように、世界を舞台に活躍できるアーティストになっていきたいと思いを語ってくれた。
 現在20歳の川口千里。彼女の前には前途洋々たる未来が広がっている。

1月14日に目黒ブルース・アレイ・ジャパンで行われた
「川口千里 20th Birthday Special 2days ~ハタチの千里ちゃん祭り~」のセッティング



タムもシンバルも盛りだくさんのドラム・セット



バス・ドラムの上にいるのはいつも一緒の“カエルちゃん”






川口千里『CIDER ~Hard & Sweet~』ハイレゾ配信記念イベント@Gibson Brands Showroom Tokyo開催!

【イベント概要】

e-onkyo music presents川口千里『CIDER ~Hard & Sweet~』ハイレゾ配信記念イベント

川口千里メジャーデビューアルバム『CIDER ~Hard & Sweet~』のハイレゾ配信を記念してハイレゾ試聴&トーク・イベントを開催いたします。

日時:2月18日(土)
時間:15:00 開場 15:30 開演
場所:Gibson Brands Showroom Tokyo
東京都中央区八重洲2-3-12 オンキョー八重洲ビル1F
オフィシャル・サイト



参加費:無料
本イベントはフリーイベントとなりますので、ご自由にお越し下さい。
先着40名様に限りお席のご用意がございます。

【出演】
川口千里

尚、e-onkyo musicにてハイレゾ音源をご購入いただいた方、若しくは当日会場で『CIDER ~Hard & Sweet~』のCDをご購入いただいた方には購入者特典として、イベント終了後にサイン会を実施いたします。
※e-onkyo musicにてハイレゾ音源をご購入いただいた方はレシートメールのコピーやスマホ画面をご提示ください。



◆川口千里 関連作品

川口千里『A LA MODE』

川口千里『Buena Vista』



◆川口千里がドラムで参加!

石川 綾子
『はなまるぴっぴはよいこだけ(石川綾子カヴァー音源)』