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【1月20日更新】 ミュージックバードで新番組がスタート『ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music』

2017/01/20
衛星デジタル音楽放送ミュージックバードで、2017年1月にスタートした番組「ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music」と連動したコラム。音にこだわるオーディオ・ファン、ハイレゾに初トライしてみたいクラシック・ファンのために、「ハイレゾ女子」として活躍する音楽ライター・原典子が、e-onkyo musicから選りすぐりのタイトルをご紹介します。
文◎原典子
第2回:ポスト・クラシカルが止まらない!

 ロックやポップスの世界では、ひとつのムーヴメントが誕生してから5~10年ぐらいのサイクルで別のムーヴメントへと移行していくのが常である。よって2000年代の初めからポスト・ロックやエレクトロニカ界隈で耳にするようになってきた「ポスト・クラシカル」という新たな潮流も、2010年を過ぎたあたりからは次第に下火になっていくものだと思っていた。ところが、である。ちょうどその頃から、今度はクラシック音楽の世界でポスト・クラシカルがにわかに注目を集めるようになってきた。その勢いは止まらず、いまやポスト・クラシカルはクラシックのメインストリームのひとつになったと言っても過言ではない。というわけで今月は、ポスト・クラシカルの誕生から現在までの流れと注目アーティストをご紹介していこう。




■極北の地アイスランドから

 そもそもポスト・クラシカルとは、ピアノやヴァイオリン、チェロといった伝統的なクラシック楽器によるサウンドと、現代的なエレクトロニクスの手法を融合して作られた音楽のこと。ミニマル・ミュージックの影響を強く受けており、その源流はスティーヴ・ライヒやアルヴォ・ペルトをはじめ、エリック・サティまで遡ることができる。だが「ポスト・クラシカル」という言葉が聞かれるようになったのは2000年代に入ってからのこと。なかでも極北のアイスランドがポスト・クラシカルの中心地として注目を集めるようになる。
 ビョークやシガー・ロスといった先鋭的なアーティストの出身地として知られるアイスランド。長年にわたりビョークと仕事をしてきたヴァルゲイル・シグルズソンというプロデューサー/作曲家が、2006年に「Bedroom Community」というレーベルを立ち上げ、ニコ・ミューリーやベン・フロストらのアルバムをリリースした前後あたりから、レイキャヴィークを中心にポスト・クラシカルのシーンが形成されていく。現在、シーンを牽引するヨハン・ヨハンソンとオーラヴル・アルナルズは、いずれもアイスランド出身。ひんやりとした肌触りの響きと、オーロラのように刻々と変化していく音楽は、アイスランドの自然が生み出したものだと思わずにはいられない。

■ドイツ・グラモフォンのポスト・クラシカル戦略

 アイスランドの外でも同時多発的に世界のあちこちでポスト・クラシカル的な感性を持ったアーティストが活躍するようになった近年、その潮流にいち早く乗ったのがクラシックの名門レーベル、ドイツ・グラモフォンである。ヒラリー・ハーンがプリペアド・ピアノのハウシュカとコラボレートしたアルバム『シルフラ』には、シグルズソンがプロデューサーとして参加。アルナルズとアリス=紗良・オットによる『ショパン・プロジェクト』もショパンの音楽にまったく異なる角度から光を当てた名作である。アイスランド勢と並びポスト・クラシカルの旗手とされるドイツ出身のマックス・リヒターによる『25%のヴィヴァルディ Recomposed By マックス・リヒター』は昨年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンでフィーチャーされ、日本でも大きな話題になった。「クラシックの伝統」の象徴でもあるイエロー・レーベルが先陣をきってポスト・クラシカル化を推し進めている、その意味をクラシック・ファンはいま一度、考えてみるべきだろう。

オーラヴル・アルナルズ, アリス=紗良・オット
『ショパン・プロジェクト』





Max Richter
『Recomposed By Max Richter: Vivaldi, The Four Seasons』






■ロックとクラシック、両刀使いの作曲家たち

 最後にもうひとつ、ポスト・クラシカルの一歩先を行く音楽のご紹介を。レディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッドがペンデレツキやメシアンから影響を受け、現代音楽の作曲家としても活動していることはよく知られている。かのライヒさえも、レディオヘッドの音楽に感銘を受けて「レディオ・リライト」という作品を書いているのだから、すごい時代になったものだ。アメリカのバンド、ザ・ナショナルのギタリストであるブライス・デスナーもまた現代音楽の作曲家としての顔を持ち、クロノス・カルテットとのコラボ・アルバム『アヘイム』などを発表している。このように、世界的人気を誇るロック・バンドの頭脳が、現代音楽の素養を持った作曲家であるということは、今の時代、決して偶然ではないと思う。インディの世界でもクラシックの音大を卒業したメンバーが在籍するバンドやユニットが数限りなくある昨今、彼らの音楽は「インディ・クラシック」と呼ばれ、ポスト・クラシカルよりも現代音楽寄りの先鋭的なサウンドで注目を集めている。
 21世紀に入って15年、インターネットを通してあらゆる人と音楽とが横につながっていく時代に生まれたクラシック音楽の潮流は、今後もまだまだ新たな展開を見せてくれることだろう。

Steve Reich
『Radio Rewrite』





Kronos Quartet with Bryce Dessner
『Bryce Dessner: Aheym』






<ポストクラシカルの源流>

ギドン・クレーメル(vn)キース・ジャレット(p)他
『ペルト:タブラ・ラサ』

ECM/録音:1977・83・84年



クリスチャン・ヤルヴィ指揮 MDRライプツィヒ放送交響楽団 他
『ライヒ:デュエット』

SONY CLASSICAL/録音:2014・16年



中島ノブユキ(p,ピアニーノ)北村聡(バンドネオン)関美矢子(ob)
田村玄一(スティール・パン,g)田中佑司(マリンバ)
『TOUCH OF CLASSIC "Eric Satie"』

intoxicate Records/録音:2015年



<極北の地から>

オーラヴル・アルナルズ
『アイランド・ソングズ』

Mercury Classics/録音:2016年



ヨハン・ヨハンソン
『オルフェ』

DG/録音:2009~2016年



フランス・バク
『サウンド・オブ・ノース』

Mercury Classics/録音:2016年



ニコ・ミューリー&タイター
『Confessions』

Nonesuch Records/録音:2016年



<名曲から生まれる新たな響き>

ダニエル・ホープ(vn)アンドレ・デ・リッダー指揮
コンツェルトハウス室内管弦楽団ベルリン、マックス・リヒター(モーグ・シンセサイザー)
『25%のヴィヴァルディ(RECOMPOSED BY マックス・リヒター)』

DG/録音:2012年



オーラヴル・アルナルズ、アリス=紗良・オット(p)
『ショパン・プロジェクト』

DG/録音:2015年



フランチェスコ・トリスターノ(p)
『ロング・ウォーク』

DG/録音:2012年



<静謐なるサウンドスケープ>

ルドヴィコ・エイナウディ
『エレメンツ』

Decca/録音:2015年



中島ノブユキ(p)
『clair-obscur』

SPIRAL RECORDS/録音:2013年



エレーヌ・グリモー(p)ニティン・ソーニー(key,Prog,G)
『ウォーター』

DG/録音:2014年



<ポストロック世代のクラシック>

ジョニー・グリーンウッド(g)ヴィッキー・チョウ(p)アラン・ピアソン指揮
アラーム・ウィル・サウンド
『ライヒ:レディオ・リライト』

ノンサッチ/録音:2014年



ブライス・デスナー、アーロン・デスナー
アンドレ・デリッダー指揮コペンハーゲン・フィルハーモニー管弦楽団
『ブライス・デスナー: St. Carolyn By The Sea、ジョニー・グリーンウッド:Suite from "There Will Be Blood" 他』

DG/録音:2012・13年



ヴォーチェス8
『永遠の光~神秘のア・カペラ』

Decca/録音:2014年



<現代音楽シーンとの融合>

エイト・ブラックバード
アラーム・ウィル・サウンド
『フィラメント』

Cedille Records/録音:2013年



クロノス・カルテット、ブライス・デスナー
『アヘイム』

Epitaph/録音:2012年



笹久保伸+藤倉大
『マナヤチャナ』

SONY CLASSICAL/録音:2014年





【バックナンバー】
<第1回> 違い歴然!ハイレゾで聴きたい名曲名盤



※衛星デジタル音楽放送ミュージックバード 121ch THE CLASSICにて放送!
新番組「ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music」【24bit放送】
(月~金)15:00~18:00 リピートあり、1月2日(月)スタート
出演:原典子
◆ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music 番組ウェブ・サイト

※ミュージックバードとは
音楽にこだわる人の高音質衛星デジタル音楽放送です。
本格派クラシック、ジャズをはじめ、歌謡・演歌、ロック、J-POPなど、 音楽ジャンルごとに専門チャンネルを放送。いい音にこだわる オーディオ・ファンのためのチャンネル「THE AUDIO」も絶賛放送中!多彩なジャンルを50ch 月額2,000円 (税別)から。
お問合せは、
ミュージックバード カスタマーセンター TEL 03-3221-9000
<平日・日・祝日>10:00~12:00、13:00~18:00 (※土曜休業)
オフィシャル・ウェブサイト


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出演者:原典子(はら・のりこ)
音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在はフリーランス。『intoxicate』『CDジャーナル』など音楽雑誌への執筆のほか、坂本龍一監修の音楽全集『commmons: schola』の編集を担当。鎌倉で子育てをしながら、「レゾナンス<鎌倉のひびき>コンサートシリーズ」の企画にも携わる。
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