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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第42回

2016/11/30
強い音楽エネルギーこそ、ハイレゾの魅力
~ 骨太サウンド音源はこれだ! ~


● 音楽エネルギーって何だろう?

「強い音楽エネルギーが記憶されているハイレゾ!」

私がレビューでよく使う殺文句です。しかし、この“音楽エネルギー”という表現、あまり上手く伝わっていなかったような。文章力が乏しくて申し訳ございません。

さて音楽エネルギー、スポーツに例えるなら、プロ野球選手やプロゴルファーのボールが同じ道具を使ってもビシューッ!と飛んでいく、あの感じです。もちろん、野球やゴルフは、ボールの飛距離やスピード、回転数で計測できるエネルギーですが、さて音楽エネルギーはいかに。

音楽教室で学んだ経験があれば、先生の鳴らす音が大きくてビックリした経験はないでしょうか? そんなに力んで弾いているわけでもないのに、同じ楽器なのに、音が響いて自分の方に飛んでくる感じ。音楽エネルギーが身近に体験できるケースです。

私がレコーディング現場で驚いたのは、同じプロのミュージシャンであっても音楽エネルギーの強さは均等ではないということ。葉加瀬太郎さん、井上鑑さん、金子飛鳥さん、神保彰さん、櫻井哲夫さん、そしてアンソニー・ジャクソンさんなどなど。レコーディングやリハーサルで、目の前で演奏するのを体験すると、まさにオーラが炎のように噴き上がります。アニメでパワーアップしたときに使う、金色に輝くあの表現通りです。

そして金色に輝くミュージシャンが奏でる音楽は、決して力任せで弾いているわけではないのに、パワフルで音飛びが良く。ビシビシと伝わってくる。これほどエネルギー量が違うのに、なんとか計測できないものなのでしょうか?

マイクプリやミキサーで音量をアップすることは簡単です。しかし、電気的に増幅した音と、ミュージシャンの強い音楽エネルギーで演奏した音とでは、たとえレベルメーターの振り幅が同じでも、サウンドは全く違います。高音質録音の第一条件は、マイクの種類やセッティングでも、高級ケーブルでも、高精度クロックでもありません。ミュージシャンの音楽エネルギーこそ、もしかすると全てなのではないでしょうか。強い音楽エネルギーで演奏された音楽は、たとえマイクのスイートスポットから外れていても、モニタールームのスピーカーをガンガン揺さぶるのを体験したことがありますから。

そしてこの音楽エネルギー、なんと電気的に記録できるのです。これが面白いところ。測定や解析に長けている人が現代技術を駆使すれば、野球の飛距離や球速のように、もしかすると音楽エネルギーも解明できるかもしれませんね!

電気エネルギーの強さとは異なる、音楽エネルギー。私が伝えたかった意味が、少しは説明出来ましたでしょうか。ハイレゾ規格はデータ量が大きいためなのか、なぜかこの音楽エネルギーの記録に長けています。この連載でのハイレゾ音源の評価は、音圧でも音色でも周波数帯域でもなく、音楽エネルギーをいかに感じられるかを最も大切にしているんです。

● 冒頭のドラムでやられた!

ドッド、ダン!

いやー最初のドラムフィルだけで、このハイレゾ音源が只者ではないことが理解できました。これぞ骨太サウンド!

『57TH & 9TH』(96kHz/24bit)
/Sting


ワンフレーズだけでシビれるドラム。さて誰の演奏かなと思ったら、さすがのヴィニー・カリウタ氏。たった3発のショットだけでも音楽エネルギーの強さを感じられる、素晴らしい例ではないでしょうか。

マスタリング・エンジニアは? これまた、さすがのボブ・ラディック氏。今、世界一イイ音のマスタリング・エンジニアと言っても過言ではないでしょう。
音楽ジャンルからして、音圧は結構高めです。しかし、全く耳に痛くない。ここが日本の多くのエンジニアが間違えているところ。迫力と音圧はイコールではない。音圧をコンプレッサーで高めていけば、音楽を聴いていて疲れるだけで、そこに迫力を感じるわけではないのです。リスナーが、そんな簡単に騙せるわけはありません。ここにボブ・ラディック氏の模範解答があります。こんなサウンドで日本の音楽も聴けたら、なんて幸せでしょうか。

オーディオのイベントで、スピーカーやハイレゾ音源のデモに使えば、お客さんが驚くこと間違い無しのサウンドです。その秘密は、音楽エネルギーの強さ。骨太サウンドは、ミキサーのツマミからは生まれることはありません。演奏家の、そして主役であるスティング氏のパワフルさが、デジタルデータに記憶された結果だと私は思います。

それにしても、スティング氏は65歳、ドラムのヴィニー・カリウタ氏は60歳、エンジニアのボブ・ラディック氏は71歳。諸先輩の皆さん、なんともエネルギッシュに活躍されています。こんなカッコいい60代、70代が果たして自分も迎えられるだろうか・・・。まだまだ全力疾走しないといけませんね、こりゃ。
今月聴いた中で、いや、私が聴いたことのあるハイレゾで、一番の骨太、極太のサウンド。ぜひ一度、体で感じていただきたい太鼓判ハイレゾ音源です。


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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。

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