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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第41回

2016/11/02
オーディオ大定番音源の進化は、音の色温度に注目
~ デジタルでも、あったかいサウンドは可能だった! ~


● CDとMP3の関係からハイレゾを考えてみる

「ハイレゾ音源とCDを聴き比べても違いが分からないのですが・・・」

この問題の原因を、自分自身のリスニング能力不足と考える方が多いようです。人によって耳の良さなんて、そんなに変わりませんよ。私が比較試聴をその同じシステムで、同じ音源で行っても、やっぱり違いは分りにくいと思います。

解決方法は簡単。まず、この連載で取り上げた太鼓判ハイレゾ音源から聴いてみましょう。半分は冗談ですが、半分は本気です。

音源によっては、ハイレゾ効果が分かりにくいものが多数あるのも事実。それは、音楽制作側が30年超という長きにわたりCD規格音源を作り続けた結果、その器の大きさに慣れてしまっているというのが原因ではないか? 私はそう想像しています。

音楽エネルギーって、もっと巨大なもの。どう考えたって、器の大きいハイレゾ規格の方が良いサウンドになるはず。全てがその通りにならない現状を料理に例えるならば、大きなお皿に折り詰め弁当がちょこんと盛り付けられている。そんな感じではないでしょうか。

この連載で取り上げているハイレゾ音源は、“CD規格に比べて圧倒的に高音質である”という基準を掲げています。この先、10年20年と経っても色褪せないレビューができないものか。志高くガチで選んでいる太鼓判ハイレゾ音源です。やみくもに買うよりは、大当たりの高音質ハイレゾ音源に出会う確率は高いと思うのですが、皆様いかがでしょうか。

「なーんだ、ハイレゾ音源なら、なんでも音がいいと思っていたのに・・・」

そうガッカリしないでください。あながち間違いでもないのですが、簡単な話でもないんです。

MP3とCDの関係を思い出してください。CD規格のデータを圧縮するのですから、必ずMP3よりもCD盤の方が高音質なはずです。しかし、色々な条件がありますよね。

車で音楽を聴く場合、私はMP3に圧縮して聴いています。MP3でもノリノリの海岸線ドライブ。そんなに音質劣化は感じないものです。しかし、仕事で使っているメイン試聴システムでMP3は聴く気にはなれません。やはり圧縮する前の音源と比べると、確実に音質劣化しています。具体的には、音の立体情報に狂いが生じている。これははっきりと認識可能です。

では、必ずMP3の音質がCDより劣るかというと、当然ながら元の音源のサウンドに左右されますよね。高音質CDをMP3に変換したものと、元からひどい音のCD。あんまり想像したくない比較試聴ですが、おそらくMP3に軍配を上げたくなると思います。

このCDとMP3の関係から、ハイレゾとCD規格(44.1kHz/16bit)の関係が想像できるのではないでしょうか? 器が大きいことは、なんでも音質が良いという意味ではありません。しかし、器が大きいことは、高音質につながる可能性が高い。やっぱりハイレゾには夢があるということが、ご理解いただけましたでしょうか?

● いろいろ聴いたけど、やっぱりノラ・ジョーンズ強し

「珍しいジャンルから太鼓判ハイレゾ音源を!」ということで、10月はたくさんのハイレゾ音源を聴きました。結局は大定番を選んでしまったというか・・・。しかも、『10月度最優秀ハイレゾ音源大賞』のe-onkyo music推薦作品とカブってしまうとは。でも、良いものは良いんです。

『Day Breaks』(96kHz/24bit)
/Norah Jones


ノラ・ジョーンズといえば、アルバム『Come Away With Me』がオーディオ試聴のロングセラー。1曲目「Don't Know Why」は、もうお腹いっぱいなくらい聴いています。低音のチェックに、3曲目「Cold Cold Heart」のベースがよく使われますよね。私が試聴に使うのは、ラストの「The Nearness Of You」が多いかな。ピアノとボーカルが絶品です。

新作『Day Breaks』は名盤『Come Away With Me』に比べると、オーディオ試聴やデモには「ちょっぴり地味かな~」というのが私の第一印象。ですがハイレゾ『Day Breaks』をじっくり聴いていると、なかなかどうして、素晴らしいサウンドに出会えました。

最大の特長は、音に光の陰影を感じられるところ。これはもうLED光源ではなく、ロウソクの炎でもなく、間違いなく白熱電球の灯です。こういったサウンド、なかなか狙って出せるものではありません。最初は「楽曲のせいかな」と思って分析的に聞いてみたのですが、これはミックスやマスタリングの成果だと私は思います。

「声、割れてんじゃん」と、オーディオマニアなら指摘しそうなボーカル。結構ギリギリまで攻めていますね。この割れ具合が、ソフトディストーションというか、真空管風というか。匠の仕事っぷりを感じました。

名盤『Come Away With Me』はCD/SACD/ハイレゾでマスタリングが異なり、私が好きなのはCD盤の巨匠テッド・ジェンセン氏のサウンド。『Come Away With Me』大ヒットは、このテッド・ジェンセン氏のマスタリングが一役買っているのは周知の事実です。

新作『Day Breaks』のマスタリングは、こちらも巨匠グレッグ・カルビ氏。私はアメリカ至上主義者というわけではありませんが、やっぱり「凄いな!」と感じずにはいられない、質感の素晴らしいサウンドでした。

デジタル臭さ、冷たくて硬い、聴き疲れがする・・・といった、デジタル音源の否定的コメントとは無縁の新作『Day Breaks』。ハイレゾでこんなサウンドが出せるのだという、一聴しただけでは気付きにくいエポックメイキングな作品だと思います。 イヤホンでのリスニングでも素敵さはもちろん伝わりますが、オールドのスピーカーでゆったり朗々と鳴らしても素晴らしいだろうな~と想像してしまいます。これからの季節にピッタリの、ほんわかあったかサウンドのハイレゾ。もう『Day Breaks』をご購入された方も多いと思いますが、サウンドの色温度に再度注目しながら聴いてみてくださいね。太鼓判です!


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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。