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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第39回

2016/09/01
Earth, Wind & Fireのハイレゾはグルーヴの宝箱
~ 祝・ソニーミュージック カタログ配信スタート!~


● グルーヴって何だろう?

デジタル規格での記録&再現が難しいのは、グルーヴではないでしょうか?音楽を時間軸で分割したのが原因だと想像しています。割れた花瓶を接着剤で貼り付けても元に戻らないのと同じです。

確信したのは、アナログマスターテープを聴いたとき。音質云々より、「なんと滑らかにグルーヴが再現されているのか!」とショックを受けました。アナログレコードやカセットテープの時代は、確かに時間軸の精度は低かった。しかし、グルーヴを分断することなく記録していたので、それはそれで良かったのかもしれません。

では、グルーヴって何なのでしょうか?リズムの揺らぎ?音楽のノリ? ネット検索してみても「具体的な定義は決まっていない」と、驚きの回答が載っていました。

世界的なドラマーの神保彰さんにインタビューした時、グルーヴの話題になりました。神保さんから教わったのは、「グルーヴはパルスの共有である」、「みんなの気持ちがひとつになったときにグルーヴというものが生まれる」ということ。

“パルスの共有”という観点からすると、デジタルは音楽の流れに関係なく、一定に時間を分割していきます。つまり、音楽とパルスを共有していないので、そこにはグルーヴは生まれません。デジタル機器がグルーヴを苦手としていて当然ですよね。

でも待ってください。分割されてバラバラになってしまったグルーヴも、“みんなの気持ちがひとつになったとき”には、新たなグルーヴが生まれるかもしれません。グルーヴ再現の鍵を握るのは、リスナー側の心意気次第?

実際、オーディオ・イベントなどで音楽を再生していると、いつもよりイイ音で鳴るときがあるんですよね~。新たなグルーヴが誕生した瞬間なのかもしれません。

● ソニーミュージック・チルドレン?


連載開始当初より、e-onkyo担当者さんに何度もお願いしていたのが「ソニーのハイレゾを早く!」でした。2016年7月に、その夢が叶いました。e-onkyoで、ソニーミュージック カタログ1500タイトル以上を配信スタート! いや~、めでたい。

なぜこんなにソニーのハイレゾを熱望していたのか自分でも不思議でしたが、ふと自分のCD盤ラックを見て納得。圧倒的にソニーミュージック関連が多かったのでした。半分とは言いませんが、1/3近いかも? 間違いなくNo.1の専有率です。

レコード会社ごとの音楽のカラーって、きっとあるのでしょうね。私の音楽人生は、知らないうちに大きくソニーミュージックに影響されていたのでした。そんなソニーミュージック・チルドレンの一員ですから、これから連載でソニーハイレゾを自由に取り上げられるのは嬉しくってたまらないのです。

● Earth, Wind & Fireはグルーヴの教科書


Earth, Wind & Fireの代表曲というと、「宇宙のファンタジー」、「セプテンバー」、「レッツ・グルーヴ」あたりでしょうか? でも、Earth, Wind & Fireファンからすると、ちょっと違うんですよね~。(ちなみに私は「In the Stone」イチオシ。)とにかくファンごとに好きな曲はバラバラ。「やっぱGratitude (灼熱の狂宴)まででしょ!」という生粋のマニアもいれば、「レッツ・グルーヴあたりが一番」という声も。ここにEarth, Wind & Fireの面白さがあります。

私が想像するに、ファンごとに好きなグルーヴがあるのだと思います。Earth, Wind & Fireのグルーヴは、アルバムを重ねるごとに洗礼されていき、例えるなら野生のリズムから都会的なビートへという感じでしょうか。

私が好きなグルーヴは、『I Am (黙示録)』(1979)が最高峰で、その前後の『All 'N All (太陽神)』(1977)と『Faces』(1980)がやっぱりしっくりきます。それより初期は自分的は野生すぎるし、それより後期はカチッとしすぎてくるかなと感じるのです。

とにかく一度はEarth, Wind & Fireのグルーヴを体験してみてください。そりゃもう、ぐるんぐるんと揺れていて、グルーヴに酔いそうになること間違いなし。何せ、メンバー全員のリズムが前乗りで走っているのですから。どんどん曲が早くなっていくようです。それに心が煽られるというか、気持ちイイんですよ。リズムが早くなろうが、メンバー間でしっかりとパルスが共有できている。だからこそ、魅力的なグルーヴが生まれたのです。

● Earth, Wind & Fireハイレゾは2パターン?

Earth, Wind & Fireのハイレゾ、私がファンだということに関係なく、高音質ハイレゾ音源として自信を持ってオススメします。ただし、Earth, Wind & Fireのハイレゾには、実際に聞いてみると2パターンあると思われますのでご注意ください。

Earth, Wind & Fireのハイレゾは、関係者に問い合わせると、確定情報ではありませんが「アメリカ制作だろう」とのことです。Earth, Wind & Fireの復刻CD日本盤ですと、日本にあるマスターを使用した日本マスタリングの作品もありますが、それとは異なる制作ルートだというのは間違いありません。

今回のEarth, Wind & Fireハイレゾの音質は、マスターテープをそのままトランスファーしたようなネイキッドなサウンドのものと、マスタリングし直したものとの2パターンがあるようです。

『Head to the Sky』(1973)と『Faces』(1980)、『Electric Universe 』(1983)の3作品は、ハイレゾ音源の曲タイトルに(Remastered)と入っているので、リマスタリング音源で間違いないでしょう。このリマスターの仕上がりが上々で、私の大好きな『Faces』は、ハイレゾ版が今までで一番のお気に入りなくらいです。

とはいえ、ネイキッド系のハイレゾも凄く良い。『All 'N All (太陽神)』のハイレゾを聴くと、かなりハイ上がりなサウンドにビックリ。サーッとテープのヒスノイズが聞こえるくらいです。CD盤を聴き直してみると、ヒスノイズは見事に抑え込まれています。ですが、マスタリングの副作用として、ホーンセクションの切れ味、ジンバルの輝きなどは、残念ながら後退気味。『All 'N All (太陽神)』のリマスターCD盤が出るたびに購入していたのは、実はこのハイを抑えたマスタリングに何かしらの違和感があったのだと初めて気づきました。ネイキッドなハイレゾ『All 'N All (太陽神)』は、確かにハイ上がりなサウンドです。しかし、これが気持ちイイ! 

一方で、『I Am (黙示録)』はネイキッド系ながら、安定したサウンドです。近年出たリマスターCD盤の『I Am (黙示録)』は、流行りの低音充実ガッチリ系サウンドで、ちょっとイメージと違うなと感じていました。このハイレゾ『I Am (黙示録)』は、レコード盤と同じ印象で、一番好感が持てます。

● Earth, Wind & Fireハイレゾ、オススメの3枚

『I Am (黙示録)』、『All 'N All (太陽神)』、『Faces』の3枚は、レコード盤とCD盤を合わせると、いったい我が家に何枚あるのか。その旅も、いよいよハイレゾ盤の登場で終了です。ハイレゾ版の、この音で聴きたかった! やっと出会えたサウンドなんです。

『I Am (黙示録)』(96kHz/24bit)
/Earth, Wind & Fire


『All 'N All (太陽神)』(96kHz/24bit)
/Earth, Wind & Fire


『Faces』(96kHz/24bit)
/Earth, Wind & Fire



音質で選ぶなら『Faces』、楽曲で選ぶなら『I Am (黙示録)』、やっぱり「宇宙のファンタジー」を聴きたいなら『All 'N All (太陽神)』です。

これから、この名盤たちを初体験するという方も多いでしょう。なんとも羨ましい限りです。ハイレゾのご機嫌なサウンドで再び出会い直せたのは間違いありませんが、初体験のあの日を超える感動には及びません。このハイレゾ太鼓判3枚で、Earth, Wind & Fireのグルーヴをご堪能ください!


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<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。