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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第37回

2016/07/27
CASIOPEAハイレゾ × 一挙18作品 (前編)
~ ハイレゾ界を変える?超高音質音源襲来!~


● 2016年はカシオペアと素敵なご縁続き

「ベースの櫻井です。」
先日、私の携帯にこんなお電話が。はて、櫻井って誰?・・・ええーっ、もしや、あの櫻井哲夫さん?今回の全国ツアーは、全てREQSTケーブルにしたいとのご要望。そりゃもう、頑張って間に合わせましたよ。櫻井さんスペシャルのカスタム・ケーブルは、6弦ベースに相応しいワイドレンジ仕様でチューニングしてお渡ししました。

ドラマー神保彰さんは、著書『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』から始まり、何度かインタビューさせていただいています。2016年2月には、当時私が担当しておりましたラジオ番組に、2時間という長時間枠でゲスト出演していただきました。いつも、とっても優しい神保さんです。

そして先日、飛び込んできたのは、カシオペア初期作品が一挙ハイレゾ化されるとのニュース。神保さん&櫻井さんといえば、この時代のカシオペアを支えた鉄壁のリズム隊です。このところのお二人との素敵なご縁といい、なんだか運命を感じる取材となりました。カシオペア・マニアの私としては、中途半端な音質のハイレゾならば許しませんよ~。いざ、乃木坂のソニー・ミュージックスタジオへ!

● 一発ノックアウトの悶絶ハイレゾサウンドが炸裂!

取材場所は、乃木坂にあるソニー・ミュージックスタジオのマスタリング・ルーム。カシオペアのハイレゾ音源を実際に聴かせていただきながら、チーフ・マスタリング・エンジニアの鈴木浩二氏にお話を伺いました。カシオペアSACD盤のライナーを執筆されたオーディオ評論家・三浦孝仁氏も同席され、一緒に最新カシオペア・ハイレゾの徹底試聴の始まりです。

〈取材が行われたソニー・ミュージックスタジオのマスタリング・ルーム。写真左から鈴木浩二氏、三浦孝仁氏、西野正和氏〉

まずは三浦氏イチオシのファーストアルバム『CASIOPEA』1曲目、「タイムリミット」から試聴スタート。

『CASIOPEA』(96kHz/24bit / DSD2.8MHz
/CASIOPEA


>>全18作品はこちら ※DSD、PCMは商品ページが別になっていますのでご注意ください。

その場では冷静を装っていましたが、実は一発でノックアウトされました。いやはや、降参です。数々のハイレゾ取材を行ってきましたし、自身のプロジェクトではマスター音源を含め音楽制作スタジオで聴くサウンドには慣れています。それでも、この鮮烈なサウンドは初体験。「なんだ、これは!」とショックが隠せません。音に触れば切れてしまいそうな、この凄まじい鮮度の正体は、いったい・・・。

鈴木:「マスターにこのエネルギーがありました。この鮮烈な音が残っていましたので、そこをマスタリングで上手く引き出したんです。この時代は直接的な音での録音で、アンビエントが無くドラムの音も近い。楽器そのままという感じの音が、きちんとマスターに残っていたんです。」

衝撃的だった「タイムリミット」のサウンド。これがこのままの音で家で鳴ったら、カシオペア・ファンは悶絶するに違いありません。レコードにもなかった、CD盤にもなかった、初めて体験するカシオペアの音だと断言しましょう。

● 今回のハイレゾのために、全アルバムを最新リマスタリング

今回のカシオペア・ハイレゾ作品の特徴は、全てがこのハイレゾ配信のための最新リマスタリングだということ。今までに発売されてきたリマスターCD盤とは違うのはもちろん、発売済みのハイレゾ2作品『ULTIMATE BEST~Early Alfa Years』と『recorded LIVE and BEST~Early Alfa Years』とも異なるマスタリングです。全てアルファレコード所有のオリジナルマスターから、ハイレゾ音源専用のマスタリングが施されました。

リマスターCD盤、従来のハイレゾ2作品も同じ鈴木浩二さんのマスタリング。従来作品を超えなければというプレッシャーや、前作に負けるものか的な勝負の感覚はあったのでしょうか?

鈴木:「ハイレゾ配信ですので、CDやSACDといった盤とはまた違う聴き方にもなろうかと思います。従来作品の仕上がり具合はもちろん聴いて、こんな感じだったんだというのを思い出しながら多少意識はしました。しかし、前回のはパッケージとして良いサウンドになるように作業しましたし、今回はハイレゾ配信ですから。データで聴くとまた感覚が変わってきますので、その方向で良い音に聴こえるよう目指しています。同じCD盤の再発だったら、もっと意識したかも(笑)。ハイレゾとCD規格という入れ物の違いが大前提としてあったので、同等の勝負をするという意識はなかったです。」

リマスタリングというと、音圧レベルの設定も気になるところ。

鈴木:「これはリマスターCD盤もそうだったのですが、あんまりレベル的に突っ込まない方向です。特に今回は、余裕を持ったハイレゾらしさを意識しました。ただ、音にパンチのあるところでは、立体感とエネルギー感を大事にして、ダイナミックレンジが出るような方向にしました。」


●アナログマスターテープとデジタルマスターで、異なるハイレゾ化アプローチ

カシオペアは早くからデジタル録音へ移行しており、1980年の『MAKE UP CITY』からはデジタルマスターです。ということは、今回のハイレゾ18作品のうち、マスターがアナログテープなのは初期3作品『CASIOPEA』、『SUPER FLIGHT』、『THUNDER LIVE』と、85年作品の『HALLE』の4タイトル。その他の作品のマスターは、Uマチック(=3/4インチ ビデオカセット・テープ)に記録された44.1kHz/16bitのデジタルデータです。

今回の取材で興味深かったのは、アナログマスターテープとデジタルマスターでは異なるハイレゾ化アプローチが行われたというところ。

【アナログマスターテープの場合】
アナログマスター ⇨ A/D ⇨ DSD ⇨ DD ⇨ 96kHz/24bit wav

【Uマチック・デジタルマスターの場合】
Uマチック ⇨DA/AD ⇨ 96kHz/24bit wav ⇨ DA/AD ⇨ DSD

ポイントは、どちらも音声がアナログ音声を経由しながらハイレゾ化されているということ。エンジニアの鈴木浩二氏が、マスタリング機材として今回はアナログ・イコライザーをメインに使用しているのが第一の理由でしょう。

鈴木:「音作りの基本はアナログのイコライザー。レベルコントロール的なものとイコライザー的なものだけで、あんまりコンプレッサーは使いません。アナログ・イコライザーはAvalonとManley、Sontecを、音源の古さや時代によって、それぞれに合うものをチョイスしました。」

アナログマスターテープの場合、アナログ音声の段階でアナログ・イコライザーを使いマスタリング処理され、デジタル変換によりDSDのハイレゾ音源が完成します。そのDSDデータを元に96kHz/24bit化されます。

鈴木:「DSDデータを96kHz/24bitに変換をした後に、デジタル上でまた96kHz/24bitに合わせた音作りを行っています。デジタル規格の、そのまま単純なトランスファーじゃないです。96kHz/24bitとDSDと、もちろん48kHzでもそうですけど、規格によって鳴り方が変わりますので、フォーマットに合わせた音作りをしています。」

今回のカシオペア・ハイレゾ化では、より万全の体制でUマチック・デジタルマスターからのハイレゾ化が行われました。Uマチック・デジタルマスターは、まずアナログ音声に変換され、アナログ・イコライザーによるマスタリングが行われます。その後デジタル変換されて96kHz/24bit規格へ。この段階で、ソニー独自の超高域補正処理が加わり、いわゆる20kHz以上の超高域成分が補完されます。

鈴木:「ソニーとしてハイレゾ用の補正ソフトウエアを開発しているので、それを使いながら超高域補正をしました。ですので、測定すると20kHz以上も出ています。私の場合、超高域成分の有る無しを特に意識せずに音を作っています。大切なのは、超高域補正後の音をきちんと聴きながらマスタリングすること。ハイレゾ規格に相応しい、サウンドの広がり、奥行き感が出るような音作りを行っています。」


今回のカシオペア・ハイレゾ作品は、96kHz/24bitとDSDの2種類が選べます。上記のように、マスターがアナログかデジタルかによって、96kHz/24bitとDSDでは作られた順番が異なるのでした。アナログマスターの場合は、先にDSD化され、それを元に96kHz/24bitデータが製作されます。デジタルマスターの場合は、超高域補正ソフトがPCM上で動くことから、96kHz/24bitデータが先に作られ、その後DSD化されます。さて、リスナー側はどう選択すれば良いのでしょうか?さらに深く取材を進めました。

・・・後編へつづく

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【バックナンバー】
<第1回>『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス』 ~アナログマスターの音が、いよいよ我が家にやってきた!~
<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー前編
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<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。