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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第36回

2016/07/08
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【バックナンバー】
<第1回>『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス』 ~アナログマスターの音が、いよいよ我が家にやってきた!~
<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー前編
<第8回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー後編
<第9回>『MOVE』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~圧倒的ダイナミクスで記録された音楽エネルギー~
<第10回>『機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック』 3作品 ~巨大モビルスーツを感じさせる、重厚ハイレゾサウンド~
<第12回>【前編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
<第15回>『リー・リトナー・イン・リオ』 ~血沸き肉躍る、大御所たちの若き日のプレイ~
<第16回>『This Is Chris』ほか、一挙6タイトル ~音展イベントで鳴らした新選・太鼓判ハイレゾ音源~
<第17回>『yours ; Gift』 溝口肇 ~チェロが目の前に出現するような、リスナーとの絶妙な距離感~
<第18回>『天使のハープ』 西山まりえ ~音のひとつひとつが美しく磨き抜かれた匠の技に脱帽~
<第19回>『Groove Of Life』 神保彰 ~ロサンゼルス制作ハイレゾが再現する、神業ドラムのグルーヴ~
<第20回>『Carmen-Fantasie』 アンネ=ゾフィー・ムター ~女王ムターの妖艶なバイオリンの歌声に酔う~
<第21回>『アフロディジア』 マーカス・ミラー ~グルーヴと低音のチェックに最適な新リファレンス~
<第22回>『19 -Road to AMAZING WORLD-』 EXILE ~1dBを奥行再現に割いたマスタリングの成果~
<第23回>『マブイウタ』 宮良牧子 ~音楽の神様が微笑んだ、ミックスマスターそのものを聴く~
<第24回>『Nothin' but the Bass』櫻井哲夫 ~低音好き必聴!最小楽器編成が生む究極のリアル・ハイレゾ~
<第25回>『はじめてのやのあきこ』矢野顕子 ~名匠・吉野金次氏によるピアノ弾き語り一発録りをハイレゾで聴く!~
<第26回>『リスト/反田恭平』、『We Get Requests』ほか、一挙5タイトル ~イイ音のハイレゾ音源が、今月は大漁ですよ!~
<第27回>『岩崎宏美、全53シングル ハイレゾ化』 ~ビクターの本気が、音となって届いたハイレゾ音源!~
<第28回>『A Twist Of Rit/Lee Ritenour』 ~これを超えるハイレゾがあったら教えてほしい、超高音質音源!~
<第29回>『ジム・ホール・イン・ベルリン』、『Return To Chicago』ほか、一挙5タイトル ~多ジャンルから太鼓判続出の豊作月なんです!~
<第30回>『Munity』、『JIMBO DE JIMBO 80's』 神保彰 ~喜びと楽しさに満ちたLA生まれのハイレゾ・サウンド!~
<第31回>『SPARK』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~ハイレゾで記録されるべき、3人の超人が奏でるメロディー~
<第32回>『究極のオーディオチェックCD2016~ハイレゾバージョン~』 Stereo ~付録CD用音源と侮れない、本物のハイレゾ!~
<第33回>『パンドラの小箱』ほか、岩崎宏美アルバム全22作品ハイレゾ化(前編) ~史上初?! アナログマスターテープ vs ハイレゾをネット動画で比較試聴!~
<第34回>『パンドラの小箱』ほか、岩崎宏美アルバム全22作品ハイレゾ化(後編) ~アナログマスターテープの良いところ、ハイレゾの良いところ~
<第35回>『エラ・フィッツジェラルドに捧ぐ』 ジェーン・モンハイト ~オーディオ好き御用達の歌姫は、やっぱりハイレゾでも凄かった!~
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『Queen』ハイレゾ×5作品
~ 超高音質CD盤をはるかに超えるサウンド!~


■ 秋葉原イベントで実感した、ハイレゾの誤解

先月開催のイベント、『太鼓判ハイレゾ音源を、イヤホン/ヘッドホンで聴く!』に、たくさんご来場いただき、まことにありがとうございました。私も皆さんと直接コミュニケーションができて、とっても楽しい時間でした!

皆さんとの会話から、ハイレゾについてまだまだ大きな誤解があるな~と痛感した次第です。

多かったのは、「イヤホン/ヘッドホンでは、ハイレゾが認識できないのではないか?」その理由は、イヤホン/ヘッドホンではきちんとした超高域が再生できないためとのこと。私は「そんなことないですよ、イヤホンでもバッチリとハイレゾは楽しめますよ!」とお答えし、実際に試聴してもらいました。

イベントでしていたお話を、ここでも書いてみます。例えば、あなたがとっても素敵な写真を撮ったとします。仮に、その写真データの大きさを、分かりやすいように1GBとしましょう。その写真を友人にプレゼントすることになったのですが、「データは500MBまでで送ってね」と制限されてしまいました。写真の圧縮を試みましたが、なんだか色鮮やかさが半減してしまい残念な結果に。1GBのまま渡せたらな~と、あなたは悩んじゃうのでした・・・。と、こんな例え話です。

大きな容量のデータ受け渡しは、通信速度が速くなってきた現代でも悩みの種ですから、この例え話のような経験が皆さんにもあるのではないでしょうか?ここでのポイントは、データの大きさというよりは、“素敵な写真の色鮮やかさ”なんですよね。どっちでも良いデータは、どれだけ圧縮しようが、内容さえ正確に伝わればイイんです。さて、音楽でも、果たして同じようなことが起こるのでしょうか?

こんな風に考えると、ハイレゾの意義が見えてくると思います。その音楽の魅力を伝えるために、大きなデータでのやり取りが必要かどうか。どっちでも良いなら、データは軽い方が扱いやすいというものです。しかし、“素敵な写真の色鮮やかさ”が半分の容量に圧縮できないときがあるように、音楽の魅力も半減する時があります。CD規格の倍以上の容量で、あなたに届けたい音楽だってあるんです。

超高域といった細かいパーツで音を考えるのではなく、ひとかたまりの音楽としての魅力を想像してください。その魅力を伝えんがためのデータ容量とすれば、ハイレゾの必要性が見えてくるのではないでしょうか。

イヤホン/ヘッドホンでも、大いにハイレゾは楽しめます。その証拠に、イベントで太鼓判ハイレゾ音源を試聴した皆さんは、キラキラした目で音楽を聴いていましたよ。

■ 誰にでもわかる、超高音質なハイレゾ作品の登場!

というわけで、今回は“これなら絶対にハイレゾが体感できる!”という作品をご紹介しましょう。Queenのハイレゾ5作品はどれも素晴らしいのですが、どれか1枚と言われると、やはりこの名盤でしょう。

『A Night At The Opera』(96kHz/24bit)
/Queen


超高音質CD盤として有名な『伝説のチャンピオン~アブソリュート・グレイテスト』を使って、「ボヘミアン・ラプソディ」、「キラー・クイーン」でハイレゾ版と比較試聴しました。このベスト盤、私も著書『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』でご紹介しているくらい、ものすごく音の良いCD盤です。「ハイレゾでも勝てないんじゃないかな~」と、ずっと思っていました。

まずQueenハイレゾ版を聴くと、「スタジオでアナログマスターテープをそのまま鳴らしているんじゃないか?!」と思えるほど、超高鮮度なサウンドが魅力です。音に触れそうで、思わず手を伸ばしたくなりました。

CD盤を聴くと、確かに上手くまとまっているんです。しかし、失われた音楽の部品があると感じるのも事実。ハイレゾが100点とすると、大目に見ても60点くらいですかね~。それが、ハイレゾ不要と今まで思っていた、あの超高音質CDとの比較なんですから驚きです。

マヅタリング・エンジニアは、CD盤、ハイレゾ版ともにボブ・ラディック氏。世界ナンバーワンと言っても過言ではないボブ・ラディック氏にかかると、ハイレゾではここまでのサウンドが可能なのだと驚かされるばかりです。残念ながら、日本のマスタリングではこの領域に到達できていないと私は思います。ハイレゾ制作に関わるエンジニアの皆さん、是非このQueenハイレゾを研究してみてください。昭和時代、海外録音に追いつけ追い越せと、模倣からスタートしたではありませんか。大いなるハイレゾの教科書となる、ボブ・ラディック氏のマスタリングは、研究の価値アリです。

そして、Queenハイレゾ作品の根底に流れるのは、私は“音楽愛”だと感じました。このQueenハイレゾが大成功しているのにはちゃんと理由があって、「みんな、クイーンが大好きなんだな~」と音だけで伝わってくるところ。単にコンプレッサーで音圧をアップさせたのでも、現代風のハイファイ調サウンドに仕上げたのでもありません。当時、Queenファンが大好きで聴いていたあのサウンドを、そのままハイレゾという大きな器で大盛りにして届けてくれているんです。Queenへの大いなるスペクトを感じます。

ハイレゾ制作で絶対に忘れてはいけないのは、その音楽を楽しみに聴いてくれるリスナーがデータの向こうに存在するということ。楽しんで聴いてもらうために、愛情を注ぎ音楽制作をするのは当然のことです。アーティストへの愛、リスナーへの愛、それぞれがボブ・ラディック氏という名手によって奇跡的とも言えるバランスで完成されたのが、このQueenハイレゾ作品。CD盤をはるかに超えるサウンドは、もちろんイヤホン/ヘッドホンでも楽勝でわかるほどです。ぜひお楽しみください!

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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。