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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第33回

2016/03/23
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【バックナンバー】
<第1回>『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス』 ~アナログマスターの音が、いよいよ我が家にやってきた!~
<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー前編
<第8回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー後編
<第9回>『MOVE』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~圧倒的ダイナミクスで記録された音楽エネルギー~
<第10回>『機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック』 3作品 ~巨大モビルスーツを感じさせる、重厚ハイレゾサウンド~
<第12回>【前編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
<第15回>『リー・リトナー・イン・リオ』 ~血沸き肉躍る、大御所たちの若き日のプレイ~
<第16回>『This Is Chris』ほか、一挙6タイトル ~音展イベントで鳴らした新選・太鼓判ハイレゾ音源~
<第17回>『yours ; Gift』 溝口肇 ~チェロが目の前に出現するような、リスナーとの絶妙な距離感~
<第18回>『天使のハープ』 西山まりえ ~音のひとつひとつが美しく磨き抜かれた匠の技に脱帽~
<第19回>『Groove Of Life』 神保彰 ~ロサンゼルス制作ハイレゾが再現する、神業ドラムのグルーヴ~
<第20回>『Carmen-Fantasie』 アンネ=ゾフィー・ムター ~女王ムターの妖艶なバイオリンの歌声に酔う~
<第21回>『アフロディジア』 マーカス・ミラー ~グルーヴと低音のチェックに最適な新リファレンス~
<第22回>『19 -Road to AMAZING WORLD-』 EXILE ~1dBを奥行再現に割いたマスタリングの成果~
<第23回>『マブイウタ』 宮良牧子 ~音楽の神様が微笑んだ、ミックスマスターそのものを聴く~
<第24回>『Nothin' but the Bass』櫻井哲夫 ~低音好き必聴!最小楽器編成が生む究極のリアル・ハイレゾ~
<第25回>『はじめてのやのあきこ』矢野顕子 ~名匠・吉野金次氏によるピアノ弾き語り一発録りをハイレゾで聴く!~
<第26回>『リスト/反田恭平』、『We Get Requests』ほか、一挙5タイトル ~イイ音のハイレゾ音源が、今月は大漁ですよ!~
<第27回>『岩崎宏美、全53シングル ハイレゾ化』 ~ビクターの本気が、音となって届いたハイレゾ音源!~
<第28回>『A Twist Of Rit/Lee Ritenour』 ~これを超えるハイレゾがあったら教えてほしい、超高音質音源!~
<第29回>『ジム・ホール・イン・ベルリン』、『Return To Chicago』ほか、一挙5タイトル ~多ジャンルから太鼓判続出の豊作月なんです!~
<第30回>『Munity』、『JIMBO DE JIMBO 80's』 神保彰 ~喜びと楽しさに満ちたLA生まれのハイレゾ・サウンド!~
<第31回>『SPARK』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~ハイレゾで記録されるべき、3人の超人が奏でるメロディー~
<第32回>『究極のオーディオチェックCD2016~ハイレゾバージョン~』 Stereo ~付録CD用音源と侮れない、本物のハイレゾ!~
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『パンドラの小箱』ほか、岩崎宏美アルバム全22作品ハイレゾ化(前編)
~史上初?! アナログマスターテープ vs ハイレゾをネット動画で比較試聴!~


■ 研究! 名盤『パンドラの小箱』

ここに1枚のアナログレコードがあります。兄から譲り受けた、1978年のレコード盤です。



日本歌謡界に輝く名盤中の名盤、『パンドラの小箱/岩崎宏美』。昭和の名曲は数々あれど、アルバム全曲となると名盤級レコードはなかなか数少ないものです。その名盤が、岩崎宏美という当時19歳のアイドルのレコードから誕生したというのが、この『パンドラの小箱』が持つ特殊性ではないでしょうか。

筒美京平氏による全作曲・編曲は、もちろん『パンドラの小箱』の大いなる原動力。そして、巨匠・阿久悠氏をはじめとする豪華作詞陣、なかでも阿木燿子さんの2曲は19歳アイドル曲という概念を超え、妖艶な魅力を放っています。

更に私が注目するのは、1970年に日本ビクターが開発した“CD-4”というディスクリート方式4チャンネルステレオと、『パンドラの小箱』の関係性です。『パンドラの小箱』は、通常レコード盤の他に、このCD-4規格の4チャンネルステレオ盤というミックス違いのレコードが発売されたという歴史があります。“もしかするとレコーディング段階から4チャンネルステレオ化が想定されていたのでは?”と思えてならない節が、『パンドラの小箱』にはあるのです。岩崎宏美さん自身も、4チャンネル仕様『パンドラの小箱』を聴いて、「もう音がグルン、グルンって立体的で驚きました」と発言されています。う~ん、私も聴いてみたい!現代のサラウンドシステムで当時のCD-4規格音源を聴くと、どうなるのでしょうかね~。

その『パンドラの小箱』の一曲目「媚薬」は、なんとツインドラム。左右に広げて定位された2セットのドラムによるグルーヴを初めて聴いたときの衝撃といったら!アイドル曲にツインドラムとは、音楽産業全盛の当時でも異例中の異例。そんなことからも、CD-4規格と連動した音楽制作だったのではないかと、私は想像するのです。

『パンドラの小箱』のドラマーは、あの名手の林立夫氏。ツインドラムは林立夫氏が2回演奏したのか、はたまた誰か別のゲストドラマーと林立夫氏の同時録音だったのか?当時のレコーディングスタイルからすると二人のドラマーが同時に叩くほうが現実的ですが、クレジットは“演奏:Dr.ドラゴン&サウンド・オブ・アラブ”となっているだけで、詳細まで確認できませんでした。残念!

そう、この“Dr.ドラゴン&サウンド・オブ・アラブ”が、実は凄いメンバーなんです。Dr.ドラゴン=筒美京平氏なのは有名な話です。そしてサウンド・オブ・アラブの正体は、林立夫(ドラム)、後藤次利(ベース)、松原正樹(ギター)、佐藤準(キーボード)、坂本龍一(キーボード)、渋井博(キーボード)、斎藤ノブ(パーカッション)という、今では泣く子も黙る名手たちだったのでした。そんな大御所たちも、当時まだ20代半ば。きっと、音楽創造のエネルギーが有り余っていたころなんでしょう。若き日の巨匠たちのパワフルな名演奏も、『パンドラの小箱』の聴きどころです。



■ ついに!『パンドラの小箱』アナログマスターテープと対面

そんな私の想い出のレコード盤である『パンドラの小箱』。そのアナログマスターテープと出会えるチャンスがやってきました。岩崎宏美アルバム全22作品のハイレゾ化というニュースをキャッチしたのです。全22作品ということは、『パンドラの小箱』が間違いなくハイレゾ化される!すぐに取材オファーのメールを送ったのでした。

嬉しいことに、ビクタースタジオさんから、アナログマスターテープ試聴を含む取材のOKが出ました。取材はビクタースタジオ内にあるマスタリング・スタジオFLARルーム。マスタリングエンジニアの袴田剛史さん、今回のアルバム全22作品ハイレゾ化プロジェクトの担当A&Rの森谷秀樹さんにお話を伺いました。

マスタリングエンジニアの袴田剛史さん(左)、筆者(中央)、担当A&Rの森谷秀樹さん(右)

まず初めに質問したのが、マスターテープの素性。間違いなく想い出のレコードの源流なのかどうかでした。

袴田: 「1/4インチマスターテープで、本物のオリジナルです。バックアップではありません。ここにAと書いてあるのがA面のマスターテープで、これがそのまま再生されてレコード盤が作られました。」

おお!まさに感激の源流との対面。もちろん私は皆様の代表としてマスターテープとハイレゾを比較試聴するのですが、こんな幸せな体験を独り占めするのはあまりに心が痛い。そこで、このレビューを読んでいる皆様にも、マスターテープとハイレゾの比較試聴を疑似体験していただける動画を撮影してきました!



■ 史上初?! アナログマスターとハイレゾをネット動画で比較試聴

『パンドラの小箱』(96kHz/24bit)
/岩崎 宏美




このネット動画比較試聴ですが、私がよく活用している手法で、いつもオーディオアクセサリーやケーブルなどの違いをネット動画でお伝えしています。それが結構評判がイイんです。

ネット動画の音質で、果たして違いが聴き取れるのか?問題はネット動画の音声品質ではなく、オーディオという伝言ゲームで“一部分だけ差し替えた違いを感じる”というところ。まぁ、百聞は一見にしかず。まずはマスターテープとハイレゾを比較試聴してみてください。実際に聴いた私の音質レビューは、次回後編でお伝えしましょう。

簡易動画レコーダーを三脚で設置し、スピーカー前のテーブルから定点録画しました。ボリューム位置は固定で、マスターテープとハイレゾの音量は、エンジニア袴田さんが聴感で合わせてもらいました。ですので、実際に私がスタジオで比較試聴したそのままを、動画レコーダーで撮影したという感じです。



・岩崎宏美「媚薬」【アナログマスター】を聴く!



・岩崎宏美「媚薬」【ハイレゾ96kHz/24bit】を聴く!



・・・後編へつづく

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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。