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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第32回

2016/03/04
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【バックナンバー】
<第1回>『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス』 ~アナログマスターの音が、いよいよ我が家にやってきた!~
<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー前編
<第8回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー後編
<第9回>『MOVE』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~圧倒的ダイナミクスで記録された音楽エネルギー~
<第10回>『機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック』 3作品 ~巨大モビルスーツを感じさせる、重厚ハイレゾサウンド~
<第12回>【前編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
<第15回>『リー・リトナー・イン・リオ』 ~血沸き肉躍る、大御所たちの若き日のプレイ~
<第16回>『This Is Chris』ほか、一挙6タイトル ~音展イベントで鳴らした新選・太鼓判ハイレゾ音源~
<第17回>『yours ; Gift』 溝口肇 ~チェロが目の前に出現するような、リスナーとの絶妙な距離感~
<第18回>『天使のハープ』 西山まりえ ~音のひとつひとつが美しく磨き抜かれた匠の技に脱帽~
<第19回>『Groove Of Life』 神保彰 ~ロサンゼルス制作ハイレゾが再現する、神業ドラムのグルーヴ~
<第20回>『Carmen-Fantasie』 アンネ=ゾフィー・ムター ~女王ムターの妖艶なバイオリンの歌声に酔う~
<第21回>『アフロディジア』 マーカス・ミラー ~グルーヴと低音のチェックに最適な新リファレンス~
<第22回>『19 -Road to AMAZING WORLD-』 EXILE ~1dBを奥行再現に割いたマスタリングの成果~
<第23回>『マブイウタ』 宮良牧子 ~音楽の神様が微笑んだ、ミックスマスターそのものを聴く~
<第24回>『Nothin' but the Bass』櫻井哲夫 ~低音好き必聴!最小楽器編成が生む究極のリアル・ハイレゾ~
<第25回>『はじめてのやのあきこ』矢野顕子 ~名匠・吉野金次氏によるピアノ弾き語り一発録りをハイレゾで聴く!~
<第26回>『リスト/反田恭平』、『We Get Requests』ほか、一挙5タイトル ~イイ音のハイレゾ音源が、今月は大漁ですよ!~
<第27回>『岩崎宏美、全53シングル ハイレゾ化』 ~ビクターの本気が、音となって届いたハイレゾ音源!~
<第28回>『A Twist Of Rit/Lee Ritenour』 ~これを超えるハイレゾがあったら教えてほしい、超高音質音源!~
<第29回>『ジム・ホール・イン・ベルリン』、『Return To Chicago』ほか、一挙5タイトル ~多ジャンルから太鼓判続出の豊作月なんです!~
<第30回>『Munity』、『JIMBO DE JIMBO 80's』 神保彰 ~喜びと楽しさに満ちたLA生まれのハイレゾ・サウンド!~
<第31回>『SPARK』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~ハイレゾで記録されるべき、3人の超人が奏でるメロディー~
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『究極のオーディオチェックCD2016~ハイレゾバージョン~』 Stereo
~付録CD用音源と侮れない、本物のハイレゾ!


■ 多才な生形三郎氏

音楽専門衛星デジタルラジオ“ミュージックバード”で放送中の私の番組『西野正和のいい音って何だろう?』(http://musicbird.jp/programs/iioto/)が、2016年3月で終了となります。いや~1年間頑張りました。リスナー・アンケートでは上位にランキングされる人気番組だったのですが、様々な理由から最終回を迎えます。まぁ、惜しまれながら終了するのは、パーソナリティー冥利に尽きるというものです。

番組の最終月は非常にスペシャルな内容で、そのゲストに来てくださったお一人が生形三郎氏。たまたま収録スタジオの前を通りがかったのを、強引に呼び込みゲスト出演してもらいました。

〈生形三郎氏(右)とミュージックバード収録スタジオにて〉


生形三郎氏は、オーディオ評論家、ミュージシャン、録音エンジニアと、多方面で活躍されています。オーディオ評論家として、私が信頼し期待しているお一人が生形氏。長くオーディオ界に居ると、良い意味悪い意味、様々な人間関係が形成されていきます。そうすると、なかなか本音で製品評価できなくなるものです。生形氏は、まだそういう世界に染まっていないのが強み。そして、その凄耳たるや、若手ナンバーワンといっても良いでしょう。特に音楽を形成する立体的な情報である“位相”を厳しく評価するのに定評があります。皆さんも、オーディオ誌での生形三郎氏のレビューにぜひ注目してみてください。

ミュージシャンとしても活躍中で、実はハイレゾ作品を以前にリリースされています。これも太鼓判級のハイレゾ音源で、軽井沢にある私の試聴環境で聴くと、まるで自然音が「窓の外から聞こえてきたの?」と感じるくらい、不思議でナチュラルな音場が楽しめるのです。

『Singing in My Ears』(192kHz/24bit)
/saburo ubukata + Joe Okuda


生形氏が録音エンジニアとしての才能を発揮しているのが、お馴染みのステレオ誌付録CDの制作。おそらく音楽制作会社にオファーすると、その10倍は軽く制作費が必要であろう内容を、付録CDの予算で毎年実現しているのには本当に脱帽です。そして何より、生形氏の凄耳で録音&制作されるものですから、その音源のクオリティーたるや!圧倒的な位相感の良さからくる高音質な音源には、私も毎年楽しみにしております。

私の番組出演後の生形氏曰く、「デンジャラスな内容で、あんな番組は初めてで楽しかったです(笑)。」とのこと。その番組で比較音源として鳴らしたのが、発売されたばかりのステレオ誌の付録CD『究極のオーディオチェックCD2016』でした。

■ ヴィンテージ機器での録音が冴える

ステレオ誌の付録であるCDバージョンも良かったですが、ハイレゾは更に素晴らしい。太鼓判です!

『究極のオーディオチェックCD2016~ハイレゾバージョン~』 (192kHz/24bit)
/Stereo


「ヴィンテージの録音機器を敢えてハイレゾ録音で使用していることがポイント」と語る生形氏。なるほど、ハイレゾ録音は20kHz以上が録音できることが重要と思われがちですが、私はそのために超高域対応のマイクやプリアンプ、再生装置を揃える必要は無いと思います。それよりも、“音楽をより大きな器で記録できる”のが、ハイレゾの醍醐味ではないでしょうか。ヴィンテージの録音機器、大歓迎です!

私のお薦めは、1曲目「ピアノ・ソロⅠ」と6曲目「ベース・ソロⅡ」です。単一楽器で、生形録音の位相の良さが更に光っているように感じます。1曲目冒頭、本作品のオープニングを飾るのは、ピアノの美音ではなく、なんとペダルの反響音。なんとも“オーディオチェックCD”の名に相応しい、とっても異様な音からスタートします。その「ゴォォ~ン」というサウンドが、エフェクティブではなく、面白いことにしっかりと音楽しています。ペダルの音に続くのは、名器“FAZIOLI F278”の低音から高音へと目まぐるしく動くピアノサウンドは、「よくもまあ・・・」と呆れるほど難関。スピーカーネットワークの繋がり、異質なオーディオアクセサリーでの高音強調など、あっという間にジャッジされてしまいそうな、まさに“オーディオチェック”というトラックです。

6曲目「ベース・ソロⅡ」は、ぜひ大音量で挑戦してみてください。根性の無いシステムなら、すぐにギブアップしてしまいそうな低音の洪水です。イヤホン/ヘッドホンで聴くと、演奏者の息づかいまで聴こえてしまうので、解像度テストにも使えると思います。あとは、この太っとい低音の連続を、いかに単調にならずに鳴らし切るかがポイントでしょう。

他のトラックにもお薦めがいっぱいあり、更にオーディオ的変態度が増すチェック項目が満載です。生形氏に「他のトラックでお薦めは?」と質問すると、下記のように回答をいただきました。

「ジャズトリオ編では、Tr.09~11のトリオ演奏が、通常のジャズ録音と違った、自然なステレオイメージを狙って録ってみた音源です。生録編では、Tr.20の海、Tr.21の大梵鐘などがオーディオチェック音源としてなかなかレアな存在かと思います。特に海は、オーディオ機器の特徴が非常につかみやすいです。鉄道編では、元カシオペアの向谷実さんが録音で参加されているのが鉄道ファンにはお勧めのポイントかと思います。」

■ ハイレゾバージョンは更に究極?

『究極のオーディオチェックCD2016』は、CD版とハイレゾ版の違いが、かなり大きくある音源だと思います。それは「192kHz/24bitが優れている」という意味ではなく、この音源が元々192kHz/24bitの録音で音楽を切り取ったことが重要な鍵を握ります。この192kHz/24bitハイレゾ版が、おそらく生形氏が感じ取った録音現場で鳴っていた音楽そのものなのでしょう。CD版は、44.1kHz/16bitへの変換やプレス工程での音質の変化・・・これらを感じないかというと、やはり個人的には残念に思えるポイントは存在します。ハイレゾ版を100点とすると、辛口になりますがCD版は私的に65点~70点といったところでしょうか。ハイレゾ版とCD版、その違いを感じ取れるかどうかですら、オーディオチェックに最適な音源だと思います。

『究極のオーディオチェックCD2017』が一年後に製作されるとするなら、天才・生形氏のことですから、更にハイレゾ版とCD版の差を埋めてくるのではないでしょうか。ワクワクしてきますね!

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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。音楽専門衛星デジタルラジオ“ミュージックバード”にて『西野正和のいい音って何だろう?』が放送中。