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GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」 第16回 Elvis Costello (後編)

2016/02/26
95年のデビュー以来、普遍と革新を併せ持ったサウンドで、ミュージックシーンのみならず、カルチャーシーンからも大きな支持を得てきたバンド=GREAT3。その中心人物であり、業界屈指の音楽マニア、そしてアナログ・コレクターとして知られる片寄明人をセレクターに迎え「ハイレゾでこそ楽しみたい!」という作品はもちろん「隠れた名盤」や「思い入れのある作品」など、e-onkyo musicの豊富なカタログの中より片寄明人が面白いと思う作品をセレクトする、「ミュージシャン視点」のハイレゾ・コラムです。

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【バックナンバー】
<第15回>「Elvis Costello (前編)」
<第14回>「James Taylor (後編)」
<第13回>「James Taylor (前編)」
<第12回>「The Beach Boys & Brian Wilson (後編)」
<第11回>「The Beach Boys & Brian Wilson (前編)」
<第10回>「特別対談 with jan」
<第9回>「Deodato (後編)」
<第8回>「Deodato (前編)」
<第7回>「The Velvet Underground(後編)」
<第6回>「The Velvet Underground(前編)」
<第5回>「The Who『四重人格』(後編)」
<第4回>「The Who『四重人格』(前編)」
<第3回>「チェット・ベイカー『枯葉』」
<第2回>「GREAT3『愛の関係』 」
<第1回>「はじめまして、GREAT3の片寄明人です。」



連載 GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」第16回
Elvis Costello(後編)


『This Year's Model』
Elvis Costello & The Attractions

『Get Happy!!』
Elvis Costello & The Attractions



『Trust』
Elvis Costello & The Attractions

『Imperial Bedroom』
Elvis Costello & The Attractions



前回のエルヴィス・コステロ前編から、更新が遅くなり大変失礼いたしました。今回はその後編をお送りいたします。

ここ1ヶ月、更新も追いつかないほど僕は何をやっていたのか!?といいますと、妻のショコラと組んでいるChocolat & Akitoの新作「Chocolat & Akito meets The Mattson 2」の仕上げをしていて、ようやく3/2にリリースを迎えられることになりました。なかなか斬新な作品になったと自負しておりますので、ぜひ機会がありましたらチェックして下さいませ。

というわけで今回は前編で取り上げたコステロのデビュー・アルバム「My Aim Is True」に続く名作を何枚か紹介しましょう。1977年のデビュー以来現在に至るまで、常に現役感を失うことなく新作をリリースし続けているコステロですが、自分にとっては初期10年間の12作こそが思い入れある黄金期。

現在e-onkyoで配信されているどの盤もレコード、カセット、CD、ハイレゾと、フォーマット違いで何枚も買ってしまったほどの名盤揃いなのです。本当は1枚1枚じっくりと紹介していきたいところなのですが、今回は特に好きな4枚にフォーカスしましょう。

まずは僕がはじめて聴いたコステロ作品でもある2ndの「This Year's Model」。子供の頃、よく図書館に通ってはカセットテープを借りて音楽を楽しんでいたのですが、13歳のある日、図書館へ行くという従兄弟に「エルヴィス・プレスリーが聴いてみたいから借りてきて。」と頼んだところ、「プレスリーはなかったけど、おなじエルヴィスってのがあったから、これでいいだろ。」といま思えば、相当にいい加減なきっかけで、ポンっと目の前に投げ出されたのがこのアルバムの日本盤カセットでした。

お目当てのプレスリーじゃないことにガッカリし、訝しがりながらジャケットを見ると、そこにはまるで漫才師の横山やすしのような眼鏡姿でカメラをかまえ、ロックンローラーのイメージから遠くかけ離れたコステロの姿がありました。「ふざけんなよ!」と思いながら、とりあえずラジカセにテープを入れてみると・・・。まるで小さなスピーカーから掴みかからんばかりの勢いで1曲目の「No Action」が流れてきて、僕はその瞬間、血湧き肉躍り、脳髄まで吹き飛ばされるようなショックを受けたのです。これこそが自分にとってパンク、ニューウェーヴとの出逢いでした。

今までに聴いたことのない強烈なスピード感で繰り出される、ポップで絶妙にひねくれたコステロ・メロディーに一瞬で虜になった僕は、このテープを何度も何度も繰り返し聴き、返却期限がくるとともにレコード店に走り、日本盤LPを手に入れました。いまハイレゾで聴き直しても、その感動、衝撃は変わりません。CDで聴いた時よりも、より鮮やかに13歳の感覚が蘇ることが嬉しい驚きでした。

そして初期コステロ・サウンドを支えた重要なバンド、ジ・アトラクションズとの蜜月が始まったのもこのセカンドからでした。パンキッシュなコステロを聴きたければ、この「This Year's Model」の右に出るアルバムはないでしょう。冒頭の「No Action」「Pump It Up」「(I Don’t Want To Go To) Chelsea」「Radio Radio」といった名曲は必聴です。

60’sに流行ったチープなコンボ・オルガンの音色がこんなにもロックバンドの中で輝くのか!ということを僕に教えてくれたのも、鍵盤奏者スティーヴ・ナイーヴの鬼才としか言いようのない今作でのプレイでした。後にフジファブリックなど鍵盤入りのロックバンドをプロデュースするときにも大いに参考となった名盤です。

余談ですが、このスティーヴ・ナイーヴ氏は奇人変人としても知られています。1984年の来日時にサインをしてもらおうと会場の出待ちをしていたときに彼と遭遇したのですが、色紙を差し出す少年の手を払いのけ、グルーピーらしいファンの日本人女性に抱きつき、そのまま用意された高級車に乗り込んでいく彼の姿に、唖然としたことは忘れられません。なんでもその夜はホテルの噴水に下半身を突っ込み、オルガンを枕に寝ていたなんて噂も・・・。

ちなみに続いて楽屋口から姿を現したコステロはファンにとても優しく、ナイーヴ氏に冷たくされた少年を憐れに思ったのか、僕の顔を見ながら似顔絵らしい絵とサインを色紙に書いてくれ、ナイーヴ氏が女性と乗り込んだリムジンには乗車拒否、スタッフと同じライトバンに乗って去って行ったのも印象的でした。


1984年、渋谷東横劇場で僕がもらったコステロのサイン、管理が悪くてボロボロです。




次に紹介するのは「Accidents Will Happen」「Oliver’s Army」といったキャッチーな名曲を含む、よりポップなコステロが楽しめる3rdアルバム「Armed Forces」をはさみ、1980年にリリースされた4th「Get Happy!!」です。僕がはじめてリアルタイムで輸入盤を買った思い入れ深いアルバムでもあります。

渋谷西武デパートの地下にあった輸入レコード店で買った英国盤には、まるで経年劣化でジャケットがかすれてしまったようなリングウェアがデザインされていて「輸入の時に削れちゃったのかな。。。」なんて思いながら買ったことが懐かしい一枚です。

60年代風を模したこのデザインは当時STIFF RECORDS~コステロ、ニック・ロウ周辺のアルバム・アートワークを多く手がけていた天才デザイナー、バーニー・バブルスによるもの。知らず知らずに彼がジャケットを手がけた盤をたくさん愛聴していた自分は、そのデザイン・センスに大きな影響を受けました。

残念ながら若くして自らの命を絶ってしまったバーニーですが、近年発売された彼の作品集「Reasons To Be Cheerful」は素晴らしい本なので、ぜひ興味ある人は輸入本を探してみて下さい。その本にも掲載されている「Get Happy!!」英国初回盤おまけに付いていた彼のデザインしたポスターは今も見てもずば抜けてクールです。


本文に出てくるバーニー・バブルス本の表紙




「Get Happy!」ポスター




さて、「Get Happy!!」の内容に話を戻しましょう。大名曲!という飛び抜けた曲があるわけではないのですが、どの曲も粒ぞろいで駄曲なし、全編を通して楽しめるのがこのアルバムです。

制作開始当初は、ヒットした前作「Armed Forces」パート2といった趣のニューウェーヴ・ポップサウンドでアレンジしたものの、煮詰まったコステロ&バンドが、自分たちのルーツに立ち返ろうと、モータウン、スタックスなどの60’s R&B、ソウルを思わせるアレンジで全体を仕上げているのもポイント。そのサウンドは結果的に当時英国を席巻していたネオ・モッズ~2トーンの流れともリンクして、80’sに世界的に流行する60’s回顧の先駆けとも言える作品になりました。

サム&デイブのカヴァー「I Can’t Stand Up For Falling Down」はこの当時レコード会社と契約問題で揉めていたコステロが、ザ・スペシャルズの1stをプロデュースした繋がりもある2TONEレーベルから、アルバム前にゲリラ・リリースしようとして発売中止となり話題となった、オリジナルを凌駕する名カヴァーです。

このアルバムはLPレコードの収録限界時間ギリギリに20曲を詰め込んでいたため、レコード、カセットといったアナログ・メディアは、けっして良い音質とはいえない作品でした。しかし、もちろんハイレゾではそういった制約なく、しかもハイクオリティな音質で「Get Happy!」を全曲楽しめるのが最高です。当時のアナログ盤を愛聴した人にとっては、その音の違いに最も感動できるハイレゾ作品かもしれません。

続く5thアルバム「Trust」も大好きな一枚。パンク~ニューウェーヴという時代の波からいち抜けて、現在まで繋がるエルヴィス・コステロというミュージシャンの個性が確立された作品といえる名盤です。

1981年の発表時は様々な音楽を取り入れたその折衷感に少々戸惑いを感じ、「いい曲たくさんあるけど、なんかとりとめのないアルバムだなぁ。」なんて思っていた自分ですが、いま聴き直すと、時代の気分とも合っているのか最も新鮮に聴けた一枚でした。前述したザ・スペシャルズの2ndやスペシャルAKAなどとも共通する無国籍で洒落たポップ感覚が今っぽいのかもしれませんね。

レゲエ~ダブを独自に昇華したかのようなキラーチューン「New Lace Sleeve」を筆頭に、シングルカットされた「Clubland」、スクイーズのクリス・ディフォードとのデュエットで聴かせるビート・ポップ「From A Whisper To A Scream」、エキセントリックなバラード「Shot With His Own Gun」をまずは試聴してみてください。その魅力が分かってもらえるのではないかと思います。

そして最後に紹介したいのが7thアルバム「Imperial Bedroom」です。デビューから休むことなく全力で駆け抜け、アルバム未収録のシングル曲を含む(これらは今回配信された素晴らしいコンピレーション「Taking Liberties」で聴くことができます)信じられない数のオリジナル・ナンバーを産み出してきたコステロが、ひと息入れるかのようにアメリカはナッシュビルに赴き、カントリーのカヴァー集に挑んだ異色作6th「Almost Blue」をはさみ、1982年に発表した作品。

このアルバムはブリティッシュ・ポップ稀代の名盤だと僕は思います。デビュー以来、5thアルバムまでタッグを組んできたプロデューサー、ニック・ロウと離れ、あのザ・ビートルズ中期「リボルバー」以降の作品でエンジニアを務め、実質的なビートルズ・サウンドを創り上げた第一人者でもある、ジェフ・エメリックをプロデューサー、エンジニアとして起用したこのアルバム。

ストリングスやホーンも導入し、今までの作品よりも格段に手の込んだプロダクションと練り込まれた楽曲、そしてスティーヴ・ナイーヴが持つクラシカルな素養を生かした鍵盤アレンジが全篇で光り輝き、ビートルズ直系のスタジオ・マジックも存分に味わえる正統派ブリティッシュ・ポップアルバムに仕上げられています。

どの曲も名曲で甲乙付けがたいのですが、ブリティッシュ・ポップの真髄を味わいたければ「Loved Ones」「You Little Fool」といったキャッチーなナンバーがオススメですし、チェット・ベイカーに捧げられ、晩年のチェットがライブで必ずといって良いほど取り上げた名バラード「Almost Blue」、そして「KId About It」といった美しい旋律にも心しめつけられます。かと思うと「Beyond Belief」のように抑制された狂気を感じさせるエルヴィス・コステロとしか形容できない音楽もあり、とにかく全曲最高。コステロのベストアルバムを選べといわれたら、僕はきっとこの「Imperial Bedroom」を選ぶことでしょう。

あのジェフ・エメリックのサウンドがハイレゾで味わえるというところも、ザ・ビートルズのファンには見逃せないポイントかもしれません。ぜひたくさんの人に再発見してもらいたいアルバムです。

その後、ザ・マッドネスなどを手がけて当時ヒット・プロデューサーとして名を馳せたクライヴ・ランガー&アラン・ウィンスタンレーと組んでリリースした8th「Punch The Clock」、9th「Goodbye Cluel World」も、いま聴くと当時流行の80’sサウンドに対してコステロがどう挑んだかがよくわかる興味深いポップ・アルバムですし、アメリカでTボーン・バーネットをプロデューサーに迎え、プレスリーのバンドメンバーはじめ米国の手練れミュージシャンと組んだ名盤 10th「King Of America」も、新たなコステロの旅立ちとなった作品。今回詳しく紹介できなかったアルバムも素晴らしいものばかりなので、ぜひお聴き逃しなく。

この12枚のハイレゾ・ファイルを愛用のポータブル・ヘッドホンアンプ/プレイヤー、TEAC HA-P90SDに全部入れて、街歩きしながら10代の頃に心をタイムスリップさせている今日この頃。

あの頃もカセットテープとウォークマンでこんな感じに楽しんでいたっけ。。。と想い出し、当時好きすぎてレコードだけでは飽き足らず買ってしまった市販のコステロ輸入カセットテープを実家から発掘してみると、これがまたテープ・コンプレッションが効いたいい音なんです。自分の原体験に訴えかけてくるからなのか、音のレンジ感うんぬんよりも感情を揺さぶる何かがそこにありました。


コステロの英国盤カセットテープの数々




そこで、ふと僕は思いました。市販のテープはきっと高速ダビングされたものだろう・・・ということはこのハイレゾ音源をマスターにしてカセットテープへ録音したら当時のテープよりいい音がするんじゃないか!?なんて倒錯したことを考えて、しまい込んでいたカセットデッキを設置し、わくわくしているところです。我ながら馬鹿だなぁと思いますが、これもまた旧譜を楽しむ醍醐味なのでございます。




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片寄明人 プロフィール

1968年5月23日 B型 東京都出身
1990年、ロッテンハッツ(片寄明人、木暮晋也、高桑圭、白根賢一、真城めぐみ、中森泰弘 )結成、 3枚のアルバムを残し、94年に解散。
1995年、GREAT3のボーカル&ギターとしてデビュー。
現在までに9枚のアルバムをリリース。高い音楽性と個性で、日本のミュージックシーンに 確固たる地位を築いている。最新作は2014年リリース「愛の関係」(ユニバーサル-EMI)。
2000年には単身渡米。Tortoise、The Sea & Cake、Wilcoのメンバーらと、 初のソロアルバム "Hey Mister Girl!"を制作。
2005年、妻のショコラとChocolat & Akito結成。
現在までに3枚のアルバムをリリース。最新作は「Duet」(Rallye Label) 。
明と暗、清濁併せ呑んだ詞世界を美しい旋律で綴り、一糸乱れぬハーモニーで歌うライブは必見。
近年は新進気鋭のプロデューサーとしても活躍。
Czecho No Republic、フジファブリック、SISTER JET、GO!GO!7188、メレンゲ、などを手がけている。
また作詞作曲、CMナレーション、DJ、各種選曲、ラジオDJなどの活動でも活躍中。

◆GREAT3 オフィシャルサイト

『愛の関係』(96kHz/24bit)
/GREAT3





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