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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第27回

2015/10/09
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【バックナンバー】
<第1回>『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス』 ~アナログマスターの音が、いよいよ我が家にやってきた!~
<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー前編
<第8回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー後編
<第9回>『MOVE』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~圧倒的ダイナミクスで記録された音楽エネルギー~
<第10回>『機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック』 3作品 ~巨大モビルスーツを感じさせる、重厚ハイレゾサウンド~
<第12回>【前編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
<第15回>『リー・リトナー・イン・リオ』 ~血沸き肉躍る、大御所たちの若き日のプレイ~
<第16回>『This Is Chris』ほか、一挙6タイトル ~音展イベントで鳴らした新選・太鼓判ハイレゾ音源~
<第17回>『yours ; Gift』 溝口肇 ~チェロが目の前に出現するような、リスナーとの絶妙な距離感~
<第18回>『天使のハープ』 西山まりえ ~音のひとつひとつが美しく磨き抜かれた匠の技に脱帽~
<第19回>『Groove Of Life』 神保彰 ~ロサンゼルス制作ハイレゾが再現する、神業ドラムのグルーヴ~
<第20回>『Carmen-Fantasie』 アンネ=ゾフィー・ムター ~女王ムターの妖艶なバイオリンの歌声に酔う~
<第21回>『アフロディジア』 マーカス・ミラー ~グルーヴと低音のチェックに最適な新リファレンス~
<第22回>『19 -Road to AMAZING WORLD-』 EXILE ~1dBを奥行再現に割いたマスタリングの成果~
<第23回>『マブイウタ』 宮良牧子 ~音楽の神様が微笑んだ、ミックスマスターそのものを聴く~
<第24回>『Nothin' but the Bass』櫻井哲夫 ~低音好き必聴!最小楽器編成が生む究極のリアル・ハイレゾ~
<第25回>『はじめてのやのあきこ』矢野顕子 ~名匠・吉野金次氏によるピアノ弾き語り一発録りをハイレゾで聴く!~
<第26回>『リスト/反田恭平』、『We Get Requests』ほか、一挙5タイトル ~イイ音のハイレゾ音源が、今月は大漁ですよ!~
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『岩崎宏美、全53シングル ハイレゾ化』
~ビクターの本気が、音となって届いたハイレゾ音源!~


■ イベント『厳選 太鼓判ハイレゾ音源を聴く!』は大成功!

9月に開催しましたイベント『厳選 太鼓判ハイレゾ音源を聴く!』は、たくさんのお客様にお集まりいただき、大成功でした。本当にありがとうございます!


平日夜の開催にもかかわらず、会場はほぼ満席。「ハイレゾのイベントの音としては、今までで最高でした」、「初心者でもおもしろかった」、「本当に楽しく、実感した知識が身に付きました」と、いただいたアンケートには嬉しいご感想が多数。皆さんと一緒に太鼓判ハイレゾ音源をガンガン聴くことができ、私もアドレナリン出まくりの1時間半でした。11月に第2回を開催できればと企画中ですので、これからも応援よろしくお願いします!

■ これぞ、岩崎宏美・愛が詰まったハイレゾだ!

さて、本日の太鼓判ハイレゾ音源は、イベントでも鳴らして大好評だった岩崎宏美シングルのハイレゾです。53作品もあるので迷いますが、私がお薦めしたいのは筒美京平氏の作・編曲作品。筒美氏が編曲まで担当するのは、80年代に入ると忙しさのためか見かけることが少なくなりましたが、天才は作曲家としてだけでなく編曲家としても天才だったのです。そんな岩崎作品をピックアップしてみました。太鼓判の音質で、日本歌謡史に残る名曲たちをぜひ!

『ファンタジー』 (96kHz/24bit)
/岩崎宏美



『未来』 (96kHz/24bit)
/岩崎宏美



『シンデレラ・ハネムーン』 (96kHz/24bit)
/岩崎宏美



『女優』 (96kHz/24bit)
/岩崎宏美


『ファンタジー』は、ディスコ歌謡の創世記的プロダクツのひとつ。ブラック・ミュージックに強く影響を受け、それをアイドルと掛け合わせ茶の間に届けるという画期的な作品。「叩きすぎか?!」と思えるほどのドラムが快感です。「あ~れは~♪」の微妙なコブシが、歌謡曲とディスコ曲の境界線をいったりきたりしているようで、素晴らしい歌唱ですよね!

『未来』は、「この娘、どこまで難しい曲が歌えるのだろう?」と挑戦させたのではないかと思えるほど、難解なメロディーとリズム。しかし、当時のテレビを見ていた人は誰一人気付かなかったほど、楽々と歌い上げてしまった岩崎宏美さん(ちゃん?)の凄さが光ります。

『シンデレラ・ハネムーン』は、「コロッケのものまね」という別の意味で超有名曲ですが、私が着目したのはカップリングの『南南西の風の中で』。神曲ですよ!日本歌謡界の金字塔アルバム『パンドラの小箱』のエンディングを飾る名曲中の名曲。まさかハイレゾで聴ける日が来るとは!鼻歌でも絶対に歌えないほどの難解なメロディーを、脱力感満載のボーカルで聴かせてくれます。『シンデレラ・ハネムーン』の二人とは対照的に、『南南西の風の中で』の主人公は、とっても幸せそうです。

『女優』は、『シンデレラ・ハネムーン』で完成したディスコ歌謡が進化を遂げ、頂点に達したと思える楽曲。完成度の高さではナンバーワンだと思いますので、岩崎宏美シングルのハイレゾでどれか1曲購入してみるなら、この『女優』はいかがでしょうか?

■ マスタリング・エンジニアの袴田剛史氏に電話インタビュー

2013年の春、ビクターさんのハイレゾ試聴会に参加した私。そのときに岩崎宏美さんの初ハイレゾが公開されたのですが、私は試聴会直後にビクターのプロデューサーさんに食ってかかりました。「これでは、岩崎宏美・愛が感じられない!」

そのとき、どんな岩崎宏美ハイレゾが聴きたいのか、力説したのを覚えています。「現代風アイドル曲と同列に聴こえるよう、マスタリングで加工する必要はない!1970年80年当時の、ビクタースタジオで鳴っていた音。マスター音源そのままでなくてもかまわないので、当時のマスターテープを想像させるような岩崎宏美ハイレゾが聴きたい!」と物申したのでした。

それから2年半が過ぎ、『岩崎宏美、全53シングル ハイレゾ化』の発表です。私の直訴は、制作時に少しでの思い出してもらえたのか・・・。ドキドキしながら聴きはじめました。数曲聴き終えた私は、VICTOR STUDIO HD-Sound.のプロデューサー高田英男氏にメールをお送りしました。「参りました」と。

特に、アナログマスターテープからハイレゾ用にリマスタリングした初期作品群がズバ抜けて素晴らしい。分析的に聴くと、マスタリングにより微調整したサウンドであり、マスターテープそのものでないことは音から感じられます。しかし、それがなんとも絶妙のバランス。岩崎宏美・愛がしっかりと感じられるのです。歌唱の魅力である、太い中低域の声の響きが、活き活きと感じられます。マスターテープを想像することができる音でありながら、聴き続けた岩崎宏美マニアにも訴えかけることができる新しい音楽世界感。完璧なハイレゾ化だと私は思います。

マスタリングを担当したエンジニアの袴田剛史さんから、ちょうど別件でお電話がありました。そのときに、せっかくの機会ですので電話インタビューを敢行。

Q1:
マスターテープの音は、ぶっちゃけどうでしたか?がっかりする音、それとも良い音?

A1:
良い音でした。今回のハイレゾ化のマスタリングでは、マスターテープそのものというよりも、歌がしっかりと聴こえるようにと意識して微調整しています。そのあたりは一緒に作業したディレクター(森谷秀樹氏)の意向でもありました。もし私一人で作業していたら、もっとアナログ的なサウンド方向へ振っていたのかもしれません。

Q2:
マスターテープの状態は?

A2:
かなり良好でした。ですが、初期作品のテープの中には、ダメージが出始めているものもあります。そのあたりは、せっかく現代デジタル修復技術がありますので、積極的に改善しました。

Q3:
『万華鏡』のお化け問題は?マスタリングでお化け退治したのですか(笑)?

A3:
あのお化けの正体は、曲のエンディングでコーラスのフェイクが少し不協和音になっているためなんです。今なら、ミックスの段階でコーラスを絞ってしまうかも?当時はそのまま収録したので、お化け騒動になったみたいです。今回のハイレゾ化では修正していませんので、当時のままです。ただし、聴こえない周波数帯域の低音で2発の不要ノイズが冒頭にあったので、お化けではないですが、それはカットしました(笑)。

■ 今後の岩崎宏美アルバム・ハイレゾ化に期待!

ここまでシングル曲ハイレゾ化が素晴らしいと、やはり岩崎宏美アルバムのハイレゾ化にも期待しちゃいます。前述の名盤『パンドラの小箱』はもちろん、全曲・筒美京平作品のもう1枚『WISH』は絶対にお願いしたいです。1997年作品の『SHOWER OF LOVE』もぜひ!

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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。音楽専門衛星デジタルラジオ“ミュージックバード”にて『西野正和のいい音って何だろう?』が放送中。