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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第26回

2015/09/11
配信中のハイレゾ音源から選りすぐりをご紹介する当連載。第26回は、気鋭のピアニスト反田恭平の新作をはじめ豊作となったようです!
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【バックナンバー】
<第1回>『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス』 ~アナログマスターの音が、いよいよ我が家にやってきた!~
<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー前編
<第8回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー後編
<第9回>『MOVE』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~圧倒的ダイナミクスで記録された音楽エネルギー~
<第10回>『機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック』 3作品 ~巨大モビルスーツを感じさせる、重厚ハイレゾサウンド~
<第12回>【前編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
<第15回>『リー・リトナー・イン・リオ』 ~血沸き肉躍る、大御所たちの若き日のプレイ~
<第16回>『This Is Chris』ほか、一挙6タイトル ~音展イベントで鳴らした新選・太鼓判ハイレゾ音源~
<第17回>『yours ; Gift』 溝口肇 ~チェロが目の前に出現するような、リスナーとの絶妙な距離感~
<第18回>『天使のハープ』 西山まりえ ~音のひとつひとつが美しく磨き抜かれた匠の技に脱帽~
<第19回>『Groove Of Life』 神保彰 ~ロサンゼルス制作ハイレゾが再現する、神業ドラムのグルーヴ~
<第20回>『Carmen-Fantasie』 アンネ=ゾフィー・ムター ~女王ムターの妖艶なバイオリンの歌声に酔う~
<第21回>『アフロディジア』 マーカス・ミラー ~グルーヴと低音のチェックに最適な新リファレンス~
<第22回>『19 -Road to AMAZING WORLD-』 EXILE ~1dBを奥行再現に割いたマスタリングの成果~
<第23回>『マブイウタ』 宮良牧子 ~音楽の神様が微笑んだ、ミックスマスターそのものを聴く~
<第24回>『Nothin' but the Bass』櫻井哲夫 ~低音好き必聴!最小楽器編成が生む究極のリアル・ハイレゾ~
<第25回>『はじめてのやのあきこ』矢野顕子 ~名匠・吉野金次氏によるピアノ弾き語り一発録りをハイレゾで聴く!~
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『リスト/反田恭平』、『We Get Requests』ほか、一挙5タイトル
~イイ音のハイレゾ音源が、今月は大漁ですよ!~


■ 今月は厳選できぬほど、太鼓判ハイレゾ音源が豊作

いや~、今月は嬉しい悲鳴です。「これは!」と思えるハイレゾ音源に多数出会うことができました。ひとつの作品に絞り込むことなど、もったいなくて私にはできません。一挙5タイトルを太鼓判ハイレゾ音源としてご紹介させてください。実は次点にもイイのがあったのですが・・・まぁ、あまり多いと目移りしますので、とびっきり音が良く、ハイレゾらしいサウンドの5作品に絞り込んでみました。


『リスト』 (96kHz/24bitほか)
/反田恭平


ステレオ誌2015年9月号のコーナー“今月の優秀録音盤”で、多くの評論家先生がこの『リスト』を取り上げておられました。「ん?見たことのあるジャケット写真だな~」と思っていたら、ハイレゾ版が発売されているではないですか。いくつかのフォーマットが選べますが、私が聴いたのはWAV96kHz/24bitです。

エネルギッシュなピアノが素晴らしい!2015年1月の録音ですので、反田さんは若干20歳。あまりクラシック音楽に用いない表現ですが、グルーヴ感が抜群!このグルーヴは“今”しか出せないエネルギーです。20年後、30年後の反田さんには、出したくても出せないグルーヴが記録されています。「弾きすぎ、叩きすぎ」と評する方もおられるでしょうが、演奏を現代にありがちな平均化サウンドとすることなく、ひとつの作品として仕上げた演奏者&スタッフに拍手!

使用ピアノは、ホロヴィッツ氏が弾いていたという、1912年製のニューヨーク・スタインウェイ“CD75”。この音色がまた素晴らしく、大袈裟に言えばピアノとハープシコードの間くらいに感じるブライトなサウンドです。この名器と若き奏者のコンビネーションが渾然一体となり、強力な音楽エネルギーとなってグイグイ攻めてきます。録音は空間まるごとを切り取ってきたような印象で、ハイレゾならではの広大な音楽再現が楽しめることでしょう。

とにかく癒しとは無縁のピアノサウンドですので、リスナー側がエネルギーあたりする恐れすらあります。私は聴いていてフラフラになりましたよ。10代、20代のハイレゾ音楽好きで、「クラシックはちょっと・・・」という方でも、同年代のエネルギーにはマッチングが良いかもしれません。ぜひ挑戦してみてはいかがでしょう?


『We Get Requests』 (96kHz/24bit)
/The Oscar Peterson Trio


私が紹介するまでもなく、売れに売れている名盤中の名盤。CD盤時代から音の良さで知られる1枚です。私のお客様でもリファレンス盤とされている方が多く、ジャズの定番ディスクとして所有しているのはもちろん、ときどき聴きたくなる音楽的良盤でもあります。

これまでにもジャズ定番作品は多くハイレゾ化されていますが、私はなぜか未だにCD規格で聴くことが多いです。なぜでしょうね?CD盤の器に、綺麗に収まっている感じが個人的に好きなだけかもしれません。

というわけで、この『We Get Requests』も期待せずに聴いたのですが、これは良かった!ハイレゾならではの情報量の多さが活き、目の前で弾いている感が大幅にアップしています。音楽の器が大きくなることで薄味になることもなく、太く、熱く、生々しいピアノトリオが楽しめます。

ハイレゾ音源でジャズの定番を1枚買うとしたら、迷わずコレ!


『ROSE PERIOD ~ the BEST 2005-2015 ~』 (96kHz/24bit)
/山崎まさよし


先日、音楽専門衛星デジタルラジオ“ミュージックバード”で放送中の私の番組『いい音って何だろう?』に、マスタリング・エンジニアの小泉由香さんをスペシャルゲストとしてお呼びしました。その際に小泉さんが用意してくれた比較試聴音源が、この山崎まさよしBESTの3曲目「メヌエット」。CD規格の44.1kHz/16bitマスターと96kHz/24bitハイレゾ音源を比較しましたが、まぁお見事!CDマスターは器いっぱいに音楽が詰め込まれており、ハイレゾ版では「CDより1dB小さく仕上げて、その余裕を奥行に使う」という小泉マスタリングが炸裂していました。

番組でいろいろと質問をしておきましたが、本作のハイレゾ化はCD規格のアップサンプリングなどではなく、きちんと大きな規格でマスターが届けられ、それをハイレゾ用にマスタリングしているとのこと。現代作品のハイレゾ音源化という意味では、ひとつの理想形態ということで太鼓判です!


『トチカ(TO CHI KA)』 (96kHz/24bit)
/渡辺香津美


『トチカ』といえば、なんといっても5曲目「ユニコーン」!マーカス・ミラー氏のベースがご機嫌な名曲です。この「ユニコーン」を少しでも良い音で聴きたいというマニアックな願望から、CDはもちろんレコード盤も所有しています。

「ユニコーン」のハイレゾ化は『ゴールデン☆ベスト 渡辺香津美 Better Days』で実現しているのですが、「ユニコーン」マニアの私としては、ちょっぴり不完全燃焼。もしかすると、私は『トチカ』の「ユニコーン」しか聴いたことがなかったので、『ゴールデン☆ベスト』ではマスタリングなどが少々異なることがその原因かもしれません。

なんとなくモヤモヤしていると、なんと『トチカ』がハイレゾ化されるという嬉しいニュース。期待半分、不安半分で「ユニコーン」を聴いたところ、これがもう最高!所有するCDとレコードの『トチカ』は、これで二度と聴くことは無いでしょう。これから「ユニコーン」は、ハイレゾのみで楽しみたいと思います。

『ゴールデン☆ベスト』を持っている方にも、この『トチカ』はお薦めです。音の鮮度や熱演具合が何倍も良いと、「ユニコーン」マニアの私が太鼓判を押します!


『Last Scene』 (96kHz/24bit)
/為岡そのみ


私は角松敏生氏の大ファン。その最新プロデュース作が発売になると聞いてワクワクしたのですが、なんとCD化されず配信のみの販売とのこと・・・。さすがにCD規格(44.1kHz/16bit)より小さい音源を購入するのは、まだまだ躊躇してしまいます。ところがe-onkyo新譜の中に、その角松プロデュース新作『Last Scene』が混ざっているではないですか!これは嬉しい!

このところ、80年代“風”サウンドの新作をよく耳にします。この“風”というのが曲者で、例えるなら大阪“風”たこ焼きが、大阪出身者には許せぬ味だというのに似ている心情かもしれません。創作たこ焼きなら美味しく食べられるのに、大阪“風”は違和感が先行してしまうアレです。世にある80年代“風”サウンドの数々は、頭では理解できるのですが、私はどうしても楽しめずいました。

しかし、この『Last Scene』は違います。本物の80年代サウンドが、現代“風”に蘇ったというのでしょうか。ブラスやストリングスは「生であってほしかった」というのは本音ですが、打ち込みでも「ここまでできるのか」と驚くほど。生っぽさがあり、打ち込みであっても音楽的には全く気になりません。それよりもピンポイントでの豪華ミュージシャン起用が大きくプラスに働いており、特に山内薫氏のスラップ・ベースが泣かせます。そして、稲妻のような本田雅人氏のサックス・ソロは、80年代マニア心をくすぐるのに十分な破壊力です。

為岡そのみさんのブログによると、通常は30分くらいで録り終えるコーラスが、約3時間半かかったとのこと。1音はずすともう一度最初から録り直しという、角松氏のスパルタ・レコーディングだったようです。コンピュータ上で編集してしまえば、1音くらい外しても簡単に補正できてしまいます。それがリスナーにバレていないと考えているのが、昨今のレコーディングの常識。果たして本当にそうなのでしょうか?歌い直すことと、コンピュータ補正は、本当にイコールなのでしょうか?少なくとも、私は為岡そのみさんの本気を、本作の歌声で感じることができました。

太鼓判ハイレゾ音源としてお薦めしたいポイントは、CD規格用にマスタリングされていないというところにつきます。「またどうせ、耳の痛いガッツリ音圧マスタリングなのだろうな~」と諦めていたら、なんとミックスダウンマスターを聴くような空間に余裕あるサウンド。これもまた、80年代へと心がタイムスリップしていくポイントです。「本作がたくさん売れて、アルバム化が実現すれば嬉しい」という下心ありありの太鼓判です。

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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。音楽専門衛星デジタルラジオ“ミュージックバード”にて『西野正和のいい音って何だろう?』が放送中。