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五木田岳彦作曲、作詞家・阿久悠の遺作となった作品「愛の流星群」がDSDハイレゾ作品としてニューリリース!

2015/07/10

『愛の流星群』
/五木田岳彦



5000曲以上の作品を残した作詞家・阿久悠。闘病生活の中で最期に書いたのがこの「愛の流星群」だそうです。
この作品の作曲をした五木田岳彦氏に、制作当時の事や、作品について、また今回の制作にあたっての抱負などをお伺いしました。


- 今回新たにリリースする「愛の流星群」とはどのようにして生まれた作品なのですか?

五木田:「愛の流星群」は2007年、ESCOLTAという男性のボーカルユニットのために作曲しました。 歌を作曲家、作詞家が共同作業で作る場合は、2種類の制作方法があります。完成した歌詞に作曲をする場合と、音楽が先に完成しているものに歌詞を書く場合があるのですが、この作品では、私が作曲をしたものに阿久悠氏が言葉を乗せていく手法でした。

私の場合、デモ音源の段階から全てのアレンジや楽器構成が完成された状態で音源を制作します。この曲についても同様で、音源は出来上がっていました。
その時点で、この作品の作詞を阿久悠氏に依頼するということになり、レコード会社経由で音源を阿久悠氏に送ってもらいました。

- 曲が先行だったのですね。

五木田:はい。ただご病気だということで、引き受けていただけるのかはわからなかったのですが、とにかく楽譜と音源を渡しました。
2007年、春だったと思います。歌詞が阿久悠氏の手により完成したとの連絡がありました。お体の具合が心配だったのですが、渡された直筆の歌詞には力強い筆字で、『愛の流星群』と書かれていました。

- すごく印象的な曲名ですね。

五木田:「愛の流星群」というタイトルは、私の予想を遥かに超えたタイトルでした。
まるでそれはドラマのタイトルのような曲名で、タイトルからは全くその内容がわかりませんでした(笑)。
「宇宙から百万枚もの手紙が舞い来る」という言葉からスタートする歌詞は衝撃的でした。まるで天国からの声を聞いているかのようだと感じました。

- とてもきれいな映像が浮かんでくるような言葉ですね。

五木田:さらに歌詞を読み進めていくと、まず最初に気づいたことは、歌詞の中に「死」という言葉が何度も登場することでした。 それと同様に「愛」いう言葉が作品全体を支配しています。
彼はこの作品を書いていた時、もしかしたら自分の命が残り少ないことを感じていたのではと、思ったほどです。

- そう思って読んでみると、とても切ない気持ちになりますね。

五木田:阿久悠氏は、商業的な作品を数多く書かれている印象がありますが、この作品は、心の中のご自身の気持ちを歌詞に綴ったものだと思いました。

こちらがそのオリジナル原稿です。

- タイトルはまるでデザインのようですね。

五木田:タイトル文字に込められた思い、そして一句一句を書くその美しい文字からも、全身全霊を込めて作品作りに挑んでいる、気品と気迫なようなものを感じました。
もしかしたら最期の作品になるかもしれないという事実に真っ向から向き合いながら、人生の最愛のパートナーに対する感謝と愛のメッセージを残したのがこの作品なのだと思いました。
「凍え死んでも悔いない想いで 時を待てば 心たたく音楽」というこの行(くだり)が、特に私の心に響きました。

- 確かに心に響きますね。

五木田:阿久悠さんの奥様に、告別式でお会いした時に、この作品が奥様に対する遺書のような作品だったと、ご本人から告げられました。また、普通は依頼された仕事は2−3日でほとんどの歌詞を完成させてしまうそうなのですが、この曲とは2週間以上も格闘していて、あんな姿をみたのは初めてだったという逸話をお聞きして、返す言葉が見つかりませんでした。

- 奥様に対するラブレターのようにも受け止められる歌詞ですね。

五木田:そうですね。他にもこの曲に歌詞を作っている時のことや、完成した作品を初めて聴かせてもらった時のことなど、多くのお話を伺うことが出来ました。

いつか二人は眠りに落ちて 時の彼方までも旅した
愛の夜の天体のショーから美しい未来が始まる


このような文章が病床で浮かび上がることこそが、前人未到の偉業を達成した「阿久悠」だからこそなし得ることなのだと思いました。

- 美しい言葉ですね。

五木田:こんな美しい言葉が綴られた作品ですので、もっと多くの人に知っていただけたらと思い、こうして新たな装いでリリースしました。 歌はもちろんですが、他にバイオリンとギターのイントゥルメンタル・バージョン、そして私の即興演奏で収録したピアノソロバージョンと3曲を制作、収録ました。3曲でおよそ16分のミニアルバムです。イントゥルメンタル・バージョンを入れることにより、普段の生活でもBGMとして聴いていただきつつ、阿久悠氏の歌詞の世界を楽しんでいただけたらと思いました。

- 今回は女性ボーカルのラピスラズリさんがボーカルを担当しているのですね。


五木田:はい。元々は男性ボーカルユニットの作品なのですが、今回は女性ソロバージョンですので、歌い方もかなり印象を変えたイメージで作ってみたかったのです。Lapis Lazuliはクラシカルなベースを持ち、さらに先にリリースしているCelticやオリジナル楽曲などに収録されている、とても優しく、透明感のある彼女の声が、この作品にマッチすると感じました。男性ボーカルの迫力ある力強い作品のイメージから、透明感や全てを包み込むような優しい世界が、まるで宇宙の彼方から、包み込まれているような作品になったので、とても満足しています。

- 楽器構成はピアノとギター、バイオリンにボーカルというシンプルな編成ですね。

五木田:オリジナルはストリングス・オーケストラも加わった大編成で制作したのですが、今回はとてもコンパクトな編成制作してみました。アレンジの中で、バイオリンやピアノをボーカルに少しソロ的に絡ませることによって、音の構成を複雑化して、小さな編成ながらも、大きな曲のイメージにすることを試みました。バイオリンは加藤綾子、ギターは山田豪が演奏しています。また3曲目に収録されているピアノソロは私が即興で演奏したものです。メロディーは出来るだけ壊さずに、シンプルに演奏してみました。

- なるほど、そういう仕掛けが、小さな編成でも曲の壮大感が伝わってくるのですね。また即興演奏の収録作品ですと、独特な緊張感が楽しめますね。

五木田:あまり細かいところを聴かれると、あらが見えてしまいますね(汗)

-レコーディング面でも、毎回いろいろと拘った手法を試みていて、いつも楽しみに聴いておりますが、今回の場合はいかがでしたか?

五木田:技術的な面では、柔らかさと透明感を追求したセッティングでレコーディングからミックス、マスタリングまで作業しました。ボーカルマイクはCharterOakというアメリカ東海岸のラージダイヤグラムの真空管マイクです。
マイクプリはNeve 33122というビンテージアンプです。こちらも私のお気に入りの機材の一つで、数台所有しています。Neve 1081も試したのですが、今回は33122の持つサウンド感を選びました。
ピアノはSteinway & Sons のD-274 フルコンサート・グランドピアノをチューブマイクとBK-4003などをミックスしてレコーディングしています。
またバイオリン、ギターはNeumann U87それにCharterOak のM900Tというチューブマイクをミックスしています。
アンプはStuder 961を使っています。

- 音の入り口となる機材選びは大事ですね。

五木田:そうですね。ここで基本的な音の印象が決まりますので、いろいろと悩むことが多いです、、。
作品の印象を宇宙的な世界観にしたかったので、リバーブは少し深めにかけています。

- 今回もDSD5.6でのリリースですね。

五木田:はい。マスターはTASCAM DA-3000を使用。DSD5.6で制作されています。マスタリングでは柔らかく、伸びのあるサウンドでいて、音の輪郭もしっかり聴こえるような音作りを目指しました。 Neve 33609 C, Avalon製EQやコンプ等でトータル・コンプ、トータル・EQをかけ、Studer A80アナログマスターテープレコーダーを通して最終的な音質調整をしています。

- 様々なアレンジ手法と、レコーディングの技術などを屈指して作られている作品なのですね。天国にいる阿久悠氏にも聴いていただきたいですね。

五木田:気に入っていただけたら嬉しいですね。

- ありがとうございました。

【記事掲載:7月12日付け産經新聞】
阿久悠さんのことが取り上げられています。記事では「愛の流星群」についても紹介されています。
http://www.sankei.com/west/news/150712/wst1507120011-n1.html