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GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」 第10回 特別対談 with jan

2015/04/01
95年のデビュー以来、普遍と革新を併せ持ったサウンドで、ミュージックシーンのみならず、カルチャーシーンからも大きな支持を得てきたバンド=GREAT3。その中心人物であり、業界屈指の音楽マニア、そしてアナログ・コレクターとして知られる片寄明人をセレクターに迎え「ハイレゾでこそ楽しみたい!」という作品はもちろん「隠れた名盤」や「思い入れのある作品」など、e-onkyo musicの豊富なカタログの中より片寄明人が面白いと思う作品をセレクトする、「ミュージシャン視点」のハイレゾ・コラムです。

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第10回目となる今回は「サウンド&レコーディング・マガジン」誌の人気企画「Premium Studio Live Vol.9」で、エレクトリック・ピアノ=Rhodesの名手として知られるINO hidefumiと、ひそかに注目を集めるアシッド・フォーク・デュオ、jan and naomiという異色のコラボレーションで収録されたアルバム『Crescente Shades』をピックアップ。GREAT3のベーシストとしても知られるjanをゲストに迎え、片寄明人×janの特別対談をお届けします。

毎回、レコーディング手法には徹底的にこだわり抜く「Premium Studio Live」シリーズ。若手エンジニアの米津裕二郎を迎えた今回の収録の模様はこちらで詳しく紹介されています。




【バックナンバー】
<第9回>「Deodato (後編)」
<第8回>「Deodato (前編)」
<第7回>「The Velvet Underground(後編)」
<第6回>「The Velvet Underground(前編)」
<第5回>「The Who『四重人格』(後編)」
<第4回>「The Who『四重人格』(前編)」
<第3回>「チェット・ベイカー『枯葉』」
<第2回>「GREAT3『愛の関係』 」
<第1回>「はじめまして、GREAT3の片寄明人です。」



連載 GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」第10回
特別対談 with jan -- 『Crescente Shades』


『Crescente Shades』
/INO hidefumi + jan and naomi





今回はいつもと趣向を変えて、GREAT3のベーシストであるjan(ヤン)との対談をお送りします。janはGREAT3とは別にjan and naomiというフォーク・ユニットをやっているのですが、2月にエレクトリック・ピアノ=Rhodesの名手として知られるINO hidefumiさんと一緒にDSDレコーディングをして、e-onkyoで『Crescente Shades』というアルバムとして配信を開始したんです。僕もDSDにはとても興味があるので、そのあたりのことを中心に話してみました。


片寄明人(以下:片寄):今回の『Crescente Shades』はレコーディング・スタジオで一発録りしたんだって?


jan:ええ、サウンド&レコーディング・マガジンの企画で、TASCAMのDA-3000というDSDレコーダーにステレオで一発録りしたんです。


片寄:DSDだとPro Toolsのようにダビングや編集ができないから、演奏の間違いとかが許されなくて大変だったでしょ?


jan:実は俺ら、その大変さがよく分かっていなくて(笑)。演奏の力量が追いつかなくて、本番で初めて通せた曲もあるくらいかなり緊張したレコーディングだったんですけど、その異常な緊張感までが録れているのに驚きました。


片寄:うん、本当に素晴らしい作品に仕上がっているよね。このコラムでもDSD音源は幾つか紹介してきたけど、どれもアナログのマスターテープをもとにしたものだったので、最初からDSDで録るとどうなのかとても興味があったんだ。で、この『Crescente Shades』を聴いて分かったのは、DSDは個々の音というよりは全体で心に迫ってくる音が録れるんだっていうこと。本当にjan and naomiのライブを近くで聴いている感覚そのままだったからビックリしたよ。


jan:俺も今日、初めていいオーディオで聴いたんですけど、声を出したときに自分の体の中で響いている音に近い音が聴こえてきました。エレキギターの音も、音の粒がギターアンプから放たれ、解放される瞬間が封じ込められている。ギターだけじゃなく全部の楽器がそうなっているから、そのぬくもりが体の内側からじわっときて気持ち良かったですね。


片寄:ミュージシャンとしての経験上、演奏しているときに聴いている音がそのまま録れたことはなかった。どうしても本当の音とは違うから、それをどうやってかっこ良くしていくかってことを追求してきたわけなんだけど、DSDだと聴いているそのままの音が録れている。ミュージシャンにとっては不思議な体験かもしれないね。とにかく額縁が大きいというか音のフレームが広がっている感じ。PCMは24bit/96kHzだろうが192kHzだろうが、良くも悪くもデジタル的にバキっとした部分が出てくるんだけど、DSDはそうではなくもっとアナログに近い気がした。


jan:個々の音が独立しているというより、いい感じに干渉してますよね。





片寄:面白いというか不思議だなって思ったのは、今日ここに来る途中、TEACのHA-P90SDっていうDSDが再生できるポータブル・プレーヤーでこの音源を聴いてきたんだけど、曲を飛ばせないのね。僕はせっかちなんでPCMだとすぐ早送りするし、レコードもすぐ針を持ち上げちゃう(笑)。だけどDSDに関しては世界に入っちゃうっていうのかな……飛ばせないんだよね。電車の中で聴いてたんだけど、目を閉じているとjan and naomiのライブに居るような感覚だった。


jan:確かにこの音源を街中で聴くと半端ないトリップ感がありますよね。それこそドラッグやって実社会からちょっと離れたところから見ているみたい(笑)。


片寄:時間も場所も超えて、違う空間に居る感じだよ。オーディオの世界でよく“空気感を収める”って言い方がされるけど、本当にその表現通り。楽器の音だけじゃなくて、空気だったりとか、普段音として認識していないものが入っているとこんなに印象が違うんだね。


jan:空気が入っている音源と言えば、昔、片寄さんの部屋でニール・ヤングの“The Needle And The Damage Done”のハイレゾを聴かせてもらいましたよね?


片寄:『アーカイヴスVol.1』のブルーレイ……24bit/192kHzの音源だよね。まだjanがGREAT3に入る前だけど、それをかけたらjanが感動して涙がこぼれそうになっていて、ニール・ヤングってやっぱりすごいんだなと思うと同時に、素晴らしい音楽をハイレゾで聴くとこんなにも心を……しかも時代を超えて若者の心までも揺さぶるんだっていうのが衝撃だった。


jan:本当に目の前でニール・ヤングがギターを弾いてるじゃんっていう感じだった。だから今回のレコーディングも、お客さんの目の前で演奏して、その“目の前でやっている様子”をそのまま録ってもらえてすごくうれしかった。





片寄:今回の企画はINOさんとの組み合わせっていうのも良かったね。一曲目の“A Portrait of the Artist as a Young Man”はINOさんのRhodesとjan and naomiの歌だけの演奏だけど、お互いに探り合っている感じがよく分かる。INOさんがスクエアなリズムじゃなくやっているのがすごくいいんだよね。jan and naomiがいつもよりすごくポップに聴こえたよ。


jan:俺らはjan and naomiで都会的なところと土着的なところが混ざった音楽をやっているつもりなんですけど、INOさんには都会的な側面を思いっきり引き出してもらえた気がします。


片寄:良い意味でソフィスティケイトされたよね。あと、INOさんの歌も良かった……ケヴィン・エアーズのカバーはボーカルのダブリングが効いていて、まるでビル・ウィザースみたいな声にも聴こえてツボだったな。カバー曲ではシャーデーの“Smooth Operator”も良かったね。


jan:あの曲は去年の終わりから、酔っ払うとよく聴いていたんです(笑)。


片寄:僕の世代にはカフェバー・ミュージックなんだけどね(笑)。あと、CSN&Y“Our House”のカバーでのアコースティックギターの音も良かった……ホント、janが弾いている音そのまんまだね。


jan:爪の長さによって音の響きが変わる感じとかがちゃんととらえられていた。アコギが入るとよりいっそう目の前でやっている感が増して聴こえましたね。


片寄:Rhodesの音も付属のスピーカーから出して録ったんだよね? アコギを録るマイクにその音もかぶりまくっているわけで、それがいいんだよね。今や空気を録るってこと自体がぜいたくな時代だから。1950~60年代のレコードにはスタジオの音っていうのがあったけど、今は世界的にどんどんスタジオが閉鎖されて、そういう唯一無二の音が日々失われつつある。でも、DSDやこのサウンド&レコーディング・マガジンの企画みたいなものをきっかけに、聴き手や作り手の意識が真の空気感を捉えることのの大切さに向いて、歴史的なスタジオが生き残ることになれば素晴らしいんだけどな。


jan:同世代の人はみんな体を傷つけているような音ばかりだしてるので、がんばって抵抗してるんです……彼らにしたら俺らの音はモワっとしたものに聴こえるのかもしれないけど(笑)。


片寄:痛い音って疲れるし、長く愛することができないよね。


jan:うん、もっと中毒性のあるものを作りたいです。


片寄:でも、最近は世界的にそういう若者が増えてきているよ。きちんと揺り戻しってあるんだなって思った。janみたいに世の流れとは違う聴き方をしている連中が出てきて、そういう人達が作る音楽に期待したいし、そういう連中と一緒に音楽ができたら最高だね。


jan:時代の空気と歴史からのインスピレーションの割合みたいなのが、いいバランスにできればいい……時代の空気7割、歴史3割くらいだといいものができるかもしれない。





片寄:最初にDSDのレコーディングって修正ができないから大変だって言ったけど、僕はプロデューサーとしての耳もあるから、歌のピッチが外れていると結構気になってしまうタイプなんだよね。でも、この『Crescente Shades』を聴いたときには、そういうのがまったく気にならなかった。むしろ、そういうピッチのあやふやなところがかえってよく聴こえる。昔の歌謡曲などアナログ録音された時代の歌を聴いた時に、その不安定さが逆に心にぐっとくる感覚に近い。


jan:俺もGREAT3のアルバム『愛の関係』のとき、「丸い花」という曲だけ歌をアナログで録ってますけど、ピッチがイカレてるのに気にならなかった。ほかの曲でPro Toolsを使って歌を録るときの方が難しかった。


片寄:そうだよね。今回のも一発録音だからいろいろあったと思うけど、ぱっと聴いたときに、そういう細部よりも音楽全体に耳が惹かれる。それがDSDの特性だとしたらすごく興味深いことだと思う……音楽的っていうことだからね。数値とか画面で見たピッチのずれ、タイミングのずれ、そういうのじゃないところで音楽を聴きたい。だから、みんなちゃんと練習していい演奏をすればいいんだよ。


jan:でも、俺らは本番でしか通せなかった(笑)。


片寄:janはいつだって本番に強い(笑)。しかし、24歳にしてPro Toolsでのレコーディング、アナログでのレコーディング、そしてDSDでのレコーディングも経験したわけだからすごいよね。


jan:片寄さんも自分のアルバムをDSDでレコーディングするのはどうですか?


片寄:いやー、オレは自分の音には厳しいからなぁ……他人のミスは楽しめるけど、自分のミスは楽しめないんだよ(笑)。


当日は、片寄氏も自宅で愛用するTEAC社製のUSB-DAC「UD-501」をONKYO製のプリアンプ「P-3000R(S)」とメインアンプ「M-5000R(S)」、そしてスピーカー「D-77NE」と組み合わせ『Crescente Shades』 の試聴を行った。








片寄明人 プロフィール

1968年5月23日 B型 東京都出身
1990年、ロッテンハッツ(片寄明人、木暮晋也、高桑圭、白根賢一、真城めぐみ、中森泰弘 )結成、 3枚のアルバムを残し、94年に解散。
1995年、GREAT3のボーカル&ギターとしてデビュー。
現在までに9枚のアルバムをリリース。高い音楽性と個性で、日本のミュージックシーンに 確固たる地位を築いている。最新作は2014年リリース「愛の関係」(ユニバーサル-EMI)。
2000年には単身渡米。Tortoise、The Sea & Cake、Wilcoのメンバーらと、 初のソロアルバム "Hey Mister Girl!"を制作。
2005年、妻のショコラとChocolat & Akito結成。
現在までに3枚のアルバムをリリース。最新作は「Duet」(Rallye Label) 。
明と暗、清濁併せ呑んだ詞世界を美しい旋律で綴り、一糸乱れぬハーモニーで歌うライブは必見。
近年は新進気鋭のプロデューサーとしても活躍。
Czecho No Republic、フジファブリック、SISTER JET、GO!GO!7188、メレンゲ、などを手がけている。
また作詞作曲、CMナレーション、DJ、各種選曲、ラジオDJなどの活動でも活躍中。

◆GREAT3 オフィシャルサイト

『愛の関係』(96kHz/24bit)
/GREAT3





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