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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』第19回

2015/03/04
現在配信中のハイレゾ音源から、選りすぐりをご紹介する当連載。第19回は96kHz/24bitで最新作をリリースした神保彰さんのインタビューなども交えた濃い内容となっています!
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【バックナンバー】
<第1回>『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス』 ~アナログマスターの音が、いよいよ我が家にやってきた!~
<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー前編
<第8回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー後編
<第9回>『MOVE』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~圧倒的ダイナミクスで記録された音楽エネルギー~
<第10回>『機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック』 3作品 ~巨大モビルスーツを感じさせる、重厚ハイレゾサウンド~
<第12回>【前編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
<第15回>『リー・リトナー・イン・リオ』 ~血沸き肉躍る、大御所たちの若き日のプレイ~
<第16回>『This Is Chris』ほか、一挙6タイトル ~音展イベントで鳴らした新選・太鼓判ハイレゾ音源~
<第17回>『yours ; Gift』 溝口肇 ~チェロが目の前に出現するような、リスナーとの絶妙な距離感~
<第18回>『天使のハープ』 西山まりえ ~音のひとつひとつが美しく磨き抜かれた匠の技に脱帽~
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『Groove Of Life』 神保彰
~ロサンゼルス制作ハイレゾが再現する、神業ドラムのグルーヴ~


■ ミュージックバードで、ハイレゾを積極的に鳴らす新番組スタート

私事で恐縮ですが、音楽専門衛星デジタルラジオ“ミュージックバード”で、新番組を担当することになりました。この4月に開設されるオーディオファン向け専門チャンネル“THE AUDIO”での放送で、番組名は『西野正和のいい音って何だろう?』です。

ミュージックバードは高音質デジタル放送。規格は48kHz/16bitとCD規格の44.1 kHz/16bitを超えるフォーマットです。それを利用し、番組では積極的にハイレゾ音源を鳴らそうと企画を練っています。

既に収録は始まっており、一般的な番組は放送局のCDプレーヤーを使用して音楽を流すのですが、私の番組では自分のプライベートシステムを持参することにしました。ハイレゾを鳴らすシステムといっても大掛りな装置ではなく、小型ノートパソコンとUSB-DAコンバーターのみ。あとはUSBケーブルと鳴らす音源を持っていくだけです。もちろん市販機そのものではなく多少のチューンアップはしてありますが、総額でも10万円弱くらい。この手持ちで運べる小さなシステムがなかなかの優れもので、放送局の高価なCDプレーヤーを超える音質で鳴るのですから、とんでもない時代になったものです。更にはノートパソコンですから、私の住む軽井沢から東京のスタジオへと移動する新幹線では、ネットやメールはもちろん、この連載の原稿まで書けてしまいます。


ところで、48kHz/16bit放送で、96kHz/24bitやDSDのハイレゾ音源を鳴らす意義はあるのでしょうか?論争するよりも実際に放送して、その音を聴いてみるのが一番。頭で考えていても結果は手に入りません。実は、この新番組はそういった実験的な企画をどんどん行っていくのがポイントです。リスナーの皆さんと一緒に比較試聴することで、自宅に居ながらオーディオイベントを疑似体験できる。そんな番組になれば嬉しいと考えております。

番組で鳴らすハイレゾ音源は、この連載とも連動して太鼓判クラスのものを毎回「今日のハイレゾ」というコーナーを設け用意していきます。ミュージックバードのリスナーの皆様、4月からの新番組をどうぞよろしくお願いいたします。

■ ロサンゼルス制作の意義

本日ご紹介する太鼓判ハイレゾ音源は、第6回の『Crossover The World』に続き、2回目の登場となる神保彰さんの新作『Groove Of Life』です。

『Groove Of Life』 (96kHz/24bit)
/神保彰


連載ではできるだけ広いジャンルから作品を選びたいと考えているのですが、神保さんを再び取り上げるというのは理由があります。私が神保さんの大ファンということだけではなく、今では珍しくなった米国ロサンゼルスでのレコーディング、ミックス、マスタリングという、音楽制作の全てを海外で行うということに非常に重要な意義を感じているためです。

20世紀の後半、各アーティストはこぞって海外での音楽制作を行いました。アメリカやイギリス音楽への単なる憧れもあったことでしょう。しかし、それ以上の結果が間違いなく得られていました。今でもなお輝き続ける当時の音楽を聴くと、決してレコーディング予算の無駄遣いではなく、海外での音楽制作の大切さを感じるのは私だけではないと思います。

今ではインターネットの普及で、お互いが顔を合わすことなく音楽制作できるようになりました。海外ミュージシャンの演奏を、データのやり取りで自身の楽曲に取り入れることが可能です。マスタリングを著名エンジニアにデータのみで依頼することもできます。それはそれで素晴らしいことなのですが、実際に海外へ行き音楽制作することと、インターネット経由での音楽制作は本当にイコールなのでしょうか?

昨年に引き続き、神保彰さんに直接インタビューすることができました。インタビューの詳細は、リットーミュージックのページでご確認ください。前・中・後編の3回にわたるロング・インタビューです。

≫前編URL  http://rittor-music.jp/drum/column/c/40424


神保さん曰く、ロスへ行くのは「一緒に演奏したいミュージシャンがそこに居るから」とのこと。データのやりとりだけではなく全員が顔を合わせ同時に演奏することで、音の足し算だけではない、音楽の掛け算が生まれるのだと。便利さの誘惑に負け、コスト重視の現代社会で私達が忘れそうになっている重要なポイントではないでしょうか。

今回のインタビューでは、ミックスダウン直後のマスター音源の試聴をリクエストしました。つまり、マスタリング前のサウンドが聴きたかったのです。ロスのミックスダウンとはどのようなものか?皆さんの代表として、キングレコードのマスタリング・スタジオで比較試聴を行ってきました。

あえてボリュームを同じにして聴き比べをスタート。マスタリング前のサウンドは音量感が小さく思えたのは当然ですが、マスタリング後のサウンドと印象が大きく変わることはありませんでした。つまり、『Groove Of Life』は、ミックスダウンの段階でほぼ完成しているということです。このミックスの仕上がりならば、マスタリング・エンジニアの作業がどれだけ楽なことか。音を無理に修正していく必要はなく、音楽を磨く作業に集中できます。実際、マスタリングのビフォーアフターを聴くと、心地よい音圧アップと同時に、過多な低音成分が上手くまとめ上げられ、より音楽としての再生し易さを実現しているという印象です。近年で日本のミックスやマスタリング技術はもちろん進化していますが、まだまだロスでの作業は魅力あるものだと痛感する貴重な経験でした。

前作のハイレゾ『Crossover The World』が44.1kHz/24bit作品だったので、昨年のインタビューで「次回作は、より大きな規格でぜひ!」とリクエストしておきました。そして、今回の新作は、「今回は録りの段階から24ビット/96kHzで作業をしました」と、嬉しいインタビューでの第一声。果たして96kHz/24bit録音の成果は、ハイレゾ音源の音質として実感できるのでしょうか。新作『Groove Of Life』のハイレゾ音源とCD盤を比較試聴してみました。

ハイレゾ音源とCD盤を聴き比べると、両方とも同じマスタリングデータから作成されているのがわかります。CD盤だけ音圧が高くするといった作為は全く感じられません。良い音楽を作っておいて、それを大きな器(=ハイレゾ音源)と従来の器(=CD盤)にそれぞれ記録させた。そんなイメージです。

ではCD盤で全てが満足かというと、ハイレゾ音源のほうを聴いてしまうともう元には戻れません。CD盤が悪いということではなく、ハイレゾ音源の器の大きさが効果的に作用したという好例です。ドラムというダイナミクスが大きく周波数特性の広い楽器、そして神保さんが生み出す世界最高峰のグルーヴを考えると、96kHz/24bitという器で録音するということは素晴らしいと思います。既にCD盤をお持ちの神保ファンの皆さんにも、ぜひ一度はハイレゾ音源を聴いてみていただきたいところです。

このロス制作のハイレゾ音源は、奇をてらったところがない良質なサウンドが魅力です。実際、私はオーディオの音質チェックに『Groove Of Life』の1~4曲目を試聴曲として活用しはじめました。音の見え具合が抜群に良く、立体的な音像をチェックするだけで、オーディオ製品の実力が浮き彫りになる良いリファレンスとしてお薦めできます。特に2曲目冒頭2秒間ほどのドラムフィルは、フォーカスの合っていないシステムだと上手く鳴りません。腕自慢の方はぜひ挑戦してみてください。

同時発売のカバーアルバム『JIMBO de CTI』も、もちろんサンドクオリティーは同レベルでお薦めです。個人的な好みで、参加ミュージシャンの多いオリジナルアルバム『Groove Of Life』をより強く推したいと思います。今年の新作、ファンという贔屓目を差し引いても間違いなく太鼓判ハイレゾ音源です。

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筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず)
3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。