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GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」 第6回 The Velvet Underground (前編)

2014/12/26
95年のデビュー以来、普遍と革新を併せ持ったサウンドで、ミュージックシーンのみならず、カルチャーシーンからも大きな支持を得てきたバンド=GREAT3。その中心人物であり、業界屈指の音楽マニア、そしてアナログ・コレクターとして知られる片寄明人をセレクターに迎え「ハイレゾでこそ楽しみたい!」という作品はもちろん「隠れた名盤」や「思い入れのある作品」など、e-onkyo musicの豊富なカタログの中より片寄明人が面白いと思う作品をセレクトする、「ミュージシャン視点」のハイレゾ・コラムです。

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【バックナンバー】
<第8回>「Deodato (前編)」
<第7回>「The Velvet Underground(後編)」
<第6回>「The Velvet Underground(前編)」
<第5回>「The Who『四重人格』(後編)」
<第4回>「The Who『四重人格』(前編)」
<第3回>「チェット・ベイカー『枯葉』」
<第2回>「GREAT3『愛の関係』 」
<第1回>「はじめまして、GREAT3の片寄明人です。」



連載 GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」第6回
The Velvet Undergr(前編)


『The Velvet Underground
& Nico 45th Anniversary Remaster』
/The Velvet Underground, Nico



今回から前、後編にわたって取り上げるのはThe Velvet Undergroundです。
ローファイの元祖なんて言われることもあるヴェルヴェットの音をハイレゾで!?と思われるかたもいるかもしれませんね。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはその短い活動期間中に4枚のオリジナルアルバムを残しましたが、現在e-onkyoでは1stから3rdまでを96kHz/24bitでリリースしています。

しかもこの12月には3rd「The Velvet Underground」が別MIXやモノラル・ヴァージョン、2014年最新MIX、同時期に録音された未発表テイク、大量のライブ音源などを含む全65曲に拡大されたSuper Deluxe仕様もハイレゾ・リリースされたばかりです。

残念ながら昨年2013年秋に逝去してしまったヴェルヴェットの首謀者ルー・リードですが、彼はニール・ヤングと並び、音質に対して偏執狂的なまでのこだわりを持っていた人物として知られています。

また懐古的になることなく、常に最新の機材、録音方法に興味を示すミュージシャンでもありました。自身の作品をハイレゾ化することに対しても強い願望を抱いていた発言をインタビューで読んだこともあります。

現在発売されているこれらのハイレゾ音源にどこまで生前のルー・リード自身が関わっていたかは不明ですが、そんな彼の志に想いを馳せつつ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのハイレゾ音源を堪能することを、ルー・リードの音楽から少なからぬ影響を受けたミュージシャンのひとりとして、供養とさせて頂きたいと思います。

僕が初めて聴いたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのレコードは1967年にリリースされた1stアルバム「The Velvet Underground and Nico」です。68年生まれの僕がこのアルバムを初めて聴いたのは中学三年生の時だったので発売から16年経った1983年、マイケル・ジャクソンの「スリラー」が発売された年のことでした。

そのころ学校で洋楽ロックの話ができた数少ない友人のひとりMくんに「ついにあのヴェルヴェットを買ったから一緒に聴こう!」と声をかけられ、放課後に彼の家でどきどきしながらそのレコードに針を落とし、スピーカーの前に並んで座り、その音を待ち構えたのです。

このアルバムは当時から雑誌などでも取り上げられることが多く、有名なバナナ・ジャケットのインパクトもあり、すでに伝説化、アイコン化していました。麻薬、同性愛、SM、暴力…などなど、人間の闇を描いた作品だと語られていたので「ど、どんな凶暴な音楽なんだろう。。。」と脳内妄想が広がっていた少年2人だったのですが、いきなりスピーカーから甘美なチェレスタの音色とともに流れて来たのは拍子抜けするほど美しいメロディーの「Sunday Morning(日曜の朝)」。唖然としてしまったことを思い出します。

そして続く「I'm Waiting For My Man(僕は待ち人)」。80'sのバンドが使っていたディストーション系の音色とはまったく違う、ガレージ感ただようギターの歪みや単調とも言えるリズムのグルーヴに新鮮さと生々しさを感じこそすれ、英語も分からず、歌詞の過激さなんて微塵も理解できない極東の少年には少々ハードルが高すぎました。

その後も彼らのマスターピースとも言える楽曲が続いたのですが「意外とメロディーがポップだね…」とかなんとか適当な感想でお茶を濁し、あとはこの作品のプロデューサーであるアンディ・ウォーホルが手がけたあの有名なバナナ・ジャケットをゆっくり剥がし、その中身を見ることに夢中になったものです。(当時バナナのシールを再現した国内再発盤が出たばかりだったんです。)

僕が洋楽に夢中になった1980年代、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは音楽の趣味が「主流ではなくオルタナティブだ」と自負する少年少女にとって、欠かすことのできない通過儀礼ともいえるアイテムだったのかもしれません。ご多分に漏れず当時の自分も、どのクラスにも実は必ずひとりはいる、そんな型にはまった変わり者のひとりだったような気がします。

ヴェルヴェット初体験から数ヶ月後、僕は法政大学の附属高校へと進学するのですが、そこでのぞいた軽音学部の部室にもそのころ全盛だったBOOWYやラフィン・ノーズなどのコピーバンドに混じって、ヴェルヴェットの「Sweet Jane」を演奏するいかにも内向的な耽美系ニューウェイヴ・バンドがいました。おっ!と少々同胞意識をかきたてられた自分は、そのルー・リードを遥かに不安定にした先輩のボーカルに耳を傾けたものです。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに心底夢中になっていったのもそんな高校生活が終わりに近づいた頃。退廃や倒錯をくぐり抜けた後に迎える真っ白な「日曜の朝」、その歌の怖ろしさに気がつくことができたのは、やはり自らが日常生活の中で規律や普通といった概念から逸脱する行為を重ねるようになってからだったのも皮肉なことです。僕もいつの間にかヴェルヴェットの音、そしてルー・リードの描く言葉にリアリティを感じることができるほどに成長を重ねていたのです。

大学時代、はじめて一緒にバンドを組んだ友人が「The Black Angel's Death Song(黒い天使の死の歌)」をウォークマンで聴きながら、同棲しているアパートに帰ったところ、彼女が知らない男と行為に及んでいるところに鉢合わせ、黙ってドアを閉めたその足で我が家に来たことがありました。「二匹の獣がそこにいたよ」と彼が静かに涙を流したとき、僕の部屋で流れていたのも「The Velvet Underground and Nico」でしたね。。。

自分にとってはそんな青臭く、自意識過剰だった青春時代と深く結びついてしまっているこの1stアルバムですが、一般的には基本4日間のレコーディングで制作された、高音質とは無縁の元祖ローファイ的な作品と評されることも多い一枚です。しかし米国オリジナル初回プレス盤、特に貴重なモノラル盤を聴いたことがある人は、これを単なるローファイ・アルバムだとは到底言えないことに気がつくでしょう。僕自身、その生々しい音に触れたときの感動は忘れることができません。

あれはGREAT3として翌年のメジャーデビューが決まった1994年の暮れ。前途を祝してメンバー3人で仲良くハワイ旅行を計画したものの、当時のベーシスト高桑が肺気胸にかかってしまいドラムの白根賢一と男ふたり旅でハワイへ行った時のことです。その日はふたりバラバラに別行動しようということになり、僕はひとりでホノルルの中古レコード店「Purple Haze」へ向かいました。

このお店には東京の中古盤店も買い付けに行っているとの噂を聞き足を運んだのですが、そこで僕は想像もしていなかったお宝と出逢い、レコード・コレクターとして一生忘れることのできない体験をするのです。そのお宝こそが「The Velvet Underground and Nico」米国初回プレスのモノラル盤でした。

小さなスペースに日本では考えられないほどのレコードが雑多に詰め込まれた店内。オーナーらしきおじさんに「暑いから脱ぎなよ」と促され、上半身裸となり夢中でレコードを漁ること数時間。ふと気がつくとオーナーはどこかに出かけてしまい、カウンターにはアルバイトとおぼしき若いスタッフが替わりに座っていました。

ふとレジ脇を見ると、そこには入荷したばかりとおぼしきレコードの山が。その中にあのバナナ・ジャケットがチラリと見えたので、なにげなく手に取ってみると…なんと驚くことにジャケットのバナナが美しくキープされた(このバナナが美麗な状態で残っていることは珍しいのです)かなり状態の良い「The Velvet Underground and Nico」のオリジナル盤、しかもよくよく見れば、当時聴くことは一生叶わぬ夢だと思っていた貴重なモノラル盤だったのです。

さらにジャケットをひっくり返すと、そこにはさらなる衝撃が…裏ジャケのメンバー演奏写真をよく見ると、ステージの背面にエリック・エマーソンというパフォーマーの姿が大きく逆さに投影されているではないですか!これはトルソ・カバーと呼ばれる発売直後のわずかな枚数にのみ見られる特徴で、後のプレスではエリック・エマーソン本人からのクレームによりエアブラシ処理がされ、消されてしまうものなのです。

「こ、これは凄いものと出逢ってしまった。。。ほ、欲しい。。。」はやる心と震える手を押さえつつ「いったい幾らなんだろう。。。」とジャケットの隅から隅まで値札を探すも、プライスがどこにも見当たりません。おそらく入荷直後でまだ値段が付けられていなかったのでしょう。

東京のレコードショップの壁面には「レアなモノラル初回プレス盤!」と書かれてたしか10万円の値札と共に飾られていたはず…とおぼろげな記憶を辿りつつ恐る恐る店員に値段を尋ねてみると。。。 

以下後編に続きます。




片寄明人 プロフィール

1968年5月23日 B型 東京都出身
1990年、ロッテンハッツ(片寄明人、木暮晋也、高桑圭、白根賢一、真城めぐみ、中森泰弘 )結成、 3枚のアルバムを残し、94年に解散。
1995年、GREAT3のボーカル&ギターとしてデビュー。
現在までに9枚のアルバムをリリース。高い音楽性と個性で、日本のミュージックシーンに 確固たる地位を築いている。最新作は2014年リリース「愛の関係」(ユニバーサル-EMI)。
2000年には単身渡米。Tortoise、The Sea & Cake、Wilcoのメンバーらと、 初のソロアルバム "Hey Mister Girl!"を制作。
2005年、妻のショコラとChocolat & Akito結成。
現在までに3枚のアルバムをリリース。最新作は「Duet」(Rallye Label) 。
明と暗、清濁併せ呑んだ詞世界を美しい旋律で綴り、一糸乱れぬハーモニーで歌うライブは必見。
近年は新進気鋭のプロデューサーとしても活躍。
Czecho No Republic、フジファブリック、SISTER JET、GO!GO!7188、メレンゲ、などを手がけている。
また作詞作曲、CMナレーション、DJ、各種選曲、ラジオDJなどの活動でも活躍中。

◆GREAT3 オフィシャルサイト

『愛の関係』(96kHz/24bit)
/GREAT3





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