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GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」 第4回 The Who 『四重人格』(前編)

2014/11/07
95年のデビュー以来、普遍と革新を併せ持ったサウンドで、ミュージックシーンのみならず、カルチャーシーンからも大きな支持を得てきたバンド=GREAT3。その中心人物であり、業界屈指の音楽マニア、そしてアナログ・コレクターとして知られる片寄明人をセレクターに迎え「ハイレゾでこそ楽しみたい!」という作品はもちろん「隠れた名盤」や「思い入れのある作品」など、e-onkyo musicの豊富なカタログの中より片寄明人が面白いと思う作品をセレクトする、「ミュージシャン視点」のハイレゾ・コラムです。

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【バックナンバー】
<第8回>「Deodato (前編)」
<第7回>「The Velvet Underground(後編)」
<第6回>「The Velvet Underground(前編)」
<第5回>「The Who『四重人格』(後編)」
<第4回>「The Who『四重人格』(前編)」
<第3回>「チェット・ベイカー『枯葉』」
<第2回>「GREAT3『愛の関係』 」
<第1回>「はじめまして、GREAT3の片寄明人です。」



連載 GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」第4回
The Who『Quadrophenia - 四重人格』


『四重人格』(192kHz/24bit)
/ザ・フー

『Quadrophenia[Super Deluxe]』(96kHz/24bit)
/The Who



旧知の知人にして、元はちみつぱいのベーシスト、現在はオーディオ評論家として高名な和田博巳さんがこのコラムを読んで下さったそうで、「お、片寄が生意気にもオーディオについて語ってるぞ」と面白がってくれたのをきっかけに某オーディオ雑誌の取材にお声かけ頂くこととなり、先日和田さんと一緒に様々なUSB DACでハイレゾ音源を聴き比べする試聴企画に参加してきました。

以前はPro toolsなど音楽制作用の機器でハイレゾ音源を聴いていましたが、このコラムを始めるにあたりTEAC UD-501を自宅リビングに導入して日々音楽を楽しんでいる自分。USB DACには興味がわいてきたばかりということもあって、とても楽しみに駆けつけました。当日、和田さんが待つ試聴室には我が家とは比べものにならない高級アンプ&スピーカーが設置され、人生初のハイエンド・オーディオ体験をさせてもらうことに。

まずは愛用するTEACのなんと6万円を切る低価格エントリー機種であるUD-301から始まって、その4倍以上する価格帯のDACまで、様々な機種の音を半日かけて次から次へと堪能。確かに資金をつぎ込めばつぎ込むほどに異次元の音が味わえることも体感。和田さんから色々とためになる情報も教えていただき、「この世界の奧は果てしない。。。」と感嘆させられた一日でありました。

おかげさまでその夜は、「う~ん、もっとお金を貯めなければいけないのか…。」などと煩悩にまみれながら帰宅、おそるおそる試聴室で聴いた音源と同じファイルを自宅システムで再生してみると。。。これがなかなか悪くない!どころか我が家のリビングルームで楽しむには充分すぎるほどの素晴らしい音質でございました。

ハイレゾはアナログ盤の再生に比べ低価格かつ手間いらずなセットで簡単に高クオリティな音が堪能できるのも魅力です。いつかは専用オーディオ・ルームでハイエンド機器を。。。と大きな夢は持ちつつも、いまはこのTEAC UD-501をフル活用しながら様々なハイレゾ音源をもっともっと楽しむぞと、初心に立ち返り気持ちを新たにした次第でございます。


さて今回紹介する音源はイギリスを代表するロックバンドThe Whoが1973年に当時2枚組レコードでリリースした大作「Quadorophenia」。もしかすると秀逸な邦題のほうが有名かもしれません、日本では「四重人格」と呼ばれるアルバムです。

僕がこの作品と出逢ったのは中学3年生になりたての頃。1983年当時、ソニー・レコードが子供達を集めてデビューを控えたミュージシャンの音を聴かせ、その反応を集めるというモニター企画があったのです。僕もそれに応募して、後にデビューする尾崎豊、大江千里などの音源を聴いては偉そうに意見を述べたりなんかしていました。

もちろん中学生なので無報酬だったのですが、1回につき謝礼としてソニーの見本盤をなんでも2枚もらえたのです。2枚組でも1枚扱いになると聞いた強欲な自分は、まずこの「四重人格」を選び、たしかその日のもう1枚はトッド・ラングレン「The Ballad Of Todd Rundgren」をもらって帰ったはず。

ザ・フーは60年代英国の若者文化であるモッズ・シーンから生まれたバンドとして知られています。彼らの6作目となるこのアルバムは1965年のロンドンが舞台。ザ・フーを神と崇めるモッズ少年ジミーを主人公に、若者の成長と喪失を描いたストーリーのコンセプトアルバムです。
Vespa GSにまたがるジミーの後ろ姿をアートワークにした見開きのレコードジャケットを開くと、その中には分厚い豪華な写真集が綴じられ、楽曲と呼応する物語が無声映画のように写真で描かれていました。レコードに針を落とし、メンバーのピート・タウンゼントによってライナーノーツに書かれた物語を読みながら、その写真集を食い入るように見ていた自分は初めて知るモッズの世界にいつのまにか魅入られていました。

ちょうどその頃、近所にある名画座でこの「四重人格」を元に制作された映画「さらば青春の光」(これも大名作青春映画なので、未見の方はぜひ!)が「イージーライダー」と2本立てで上映されるという情報を「ぴあ」で得た僕は、自由が丘まで放課後に自転車で駆けつけました。夕暮れの劇場の外に、誰かのハーレーとベスパが2台ずつ並んでいた景色を昨日のことのように憶えています。

そしてその映画に心を吹き飛ばされるような衝撃を受けた自分はその後の高校生活をモッズ少年として過ごし、同じようにモッズに魅了された若者たちが集まる新宿のライブハウスJAMで後のザ・コレクターズやザ・ブルーハーツのメンバーとも出逢い…そんな個人的ストーリーはさておき、この「四重人格」はモッズというカルチャーに大きな意味を与え、遠く海の向こうでこの作品に人生を変えられた者も少なくないほどに強烈な磁場を持ったアルバムなのです。

もちろんミュージシャンの間にも「四重人格」信奉者は数多く、パール・ジャムのエディ・ヴェダーなどは「このアルバムがなかったら孤独な少年時代を生き抜くことができなかっただろう」とまで語っています。

自分にとってザ・フー最大の魅力はソングライターでギタリスト、そしてインテリ不良とでも形容したくなるパーソナリティーを持つピート・タウンゼントが生み出す繊細で複雑、そして学術的ともいえる楽曲なのですが、このバンドの醍醐味とはそれを繊細なままではなく、アンビバレンツなまでの表現に昇華したことにあると思います。

ステージ上で寡黙に、そして微動だにせず、その指先からリード・ベースさながらに驚愕のラインを繰り出すジョン・エントウィッスルと、まるでオーケストラのティンパニー奏者のように狂気のドラムを叩きまくるキース・ムーンによる稀代のリズムセクションを主軸に、ピートの楽曲が持つセンチメンタルかつ暴力的な二律背反ともいえる世界観を労働者階級出身のボーカリストであるロジャー・ダルトリーがマッチョに歌い上げるのです。

さらにピート自身も己の繊細さを打ち砕くかのように腕を風車のように振りまわし、鋭いカッティングで聴く者の心を射貫き、そのギターをステージに叩きつけて破壊する。それはまるで魂の純粋さと暴力という相反する要素に引き裂かれそうになる若者の心を体現したかのような奇跡のマッチングなのです。

ハードからメロウまで振り子のように揺れ動くザ・フーのアンビバレンツな魅力、その真骨頂が最も深く味わえるアルバムは、この「四重人格」をおいて他に無いと僕は思っています。

15歳で出逢って以来、日本盤アナログ→英オリジナル・アナログ盤→国内盤CD→紙ジャケットSHM-CD…etcと何度となく買い足してきた、自分にとって愛着ある作品です。もちろんハイレゾ化されたニュースを聞いたときは飛びつきました。

e-onkyoでは以前より、英国オリジナル・アナログ・テープを基に作成した2012年最新DSDマスターからのオリジナル・ミックスによる192khz/24bitハイレゾ音源をリリースしています。調べたところこれは日本オンリーで配信された音源のようで、海外のザ・フー・ファンからも高評価を得ています。さらに今月に入り、大量のデモ音源を含む「Quadrophenia (Super Deluxe)」という96khz/24bitハイレゾ版(海外で主に配信されているのはこちらのヴァージョンです)もリリースされたばかり。

次回はこちら2つのヴァージョンの違いについても触れながら、さらに深くハイレゾ版「四重人格」を追求してみたいと思います。




片寄明人 プロフィール

1968年5月23日 B型 東京都出身
1990年、ロッテンハッツ(片寄明人、木暮晋也、高桑圭、白根賢一、真城めぐみ、中森泰弘 )結成、 3枚のアルバムを残し、94年に解散。
1995年、GREAT3のボーカル&ギターとしてデビュー。
現在までに9枚のアルバムをリリース。高い音楽性と個性で、日本のミュージックシーンに 確固たる地位を築いている。最新作は2014年リリース「愛の関係」(ユニバーサル-EMI)。
2000年には単身渡米。Tortoise、The Sea & Cake、Wilcoのメンバーらと、 初のソロアルバム "Hey Mister Girl!"を制作。
2005年、妻のショコラとChocolat & Akito結成。
現在までに3枚のアルバムをリリース。最新作は「Duet」(Rallye Label) 。
明と暗、清濁併せ呑んだ詞世界を美しい旋律で綴り、一糸乱れぬハーモニーで歌うライブは必見。
近年は新進気鋭のプロデューサーとしても活躍。
Czecho No Republic、フジファブリック、SISTER JET、GO!GO!7188、メレンゲ、などを手がけている。
また作詞作曲、CMナレーション、DJ、各種選曲、ラジオDJなどの活動でも活躍中。

◆GREAT3 オフィシャルサイト

『愛の関係』(96kHz/24bit)
/GREAT3





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