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TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND ハイレゾ版YMO試聴座談会

2018/12/07
YMOから多大な影響を受けているTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのメンバーが集まって行われた、YMO結成40周年を記念してリリースされた1stアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ<日本版><US版>』、2ndアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』ハイレゾ版試聴座談会の様子をお届けします。
●Text:松井洋平
①1st Album 『イエロー・マジック・オーケストラ』<日本版><US版>聴き比べ

1. 『コンピューター・ゲーム “サーカスのテーマ”』

松井(以下 松):「明確に違うなぁ、ハイレゾで聴くと音がすっきり整理されてるから違いがわかりやすいね」
フジムラ(以下 フ):US版のほうが派手というか…」
石川:(以下 石)「高域を広くとってる」
フ:「日本版は音の素材やニュアンスの意図を、しっかり出してきてる感じがする」
松:「刺身か、調理されてる魚が好きか(笑)…でも、全体的にそんなイメージかも」


2. 『ファイアークラッカー』

フ:「US版はクラップの捉え方が印象的に違う。」
石:「日本版はドラムのナチュラルなリバーブを感じるね」
フ:「ハイレゾだとパリッとした高域の点も気持ちいいし、低域のグルーブで踊らそうとしてるのがわかる」
石:「US版の音はデフォルメだよね、しっかり締めてディスコにしようとしてる」
フ:「今も昔も、アメリカのミックスの基本理念は一緒って感じさせるね」
松:「元々有名な曲だから、その当時のYMOと海外の音楽性の違いって考えると面白い」


3.『 シムーン』

石 :「今みたいにサンプリングがないから、シンセでの表現が挑戦的だね」
松:「US版はやっぱりビートを押し出そうとしてるイメージ…聴覚の違いとかあるのかな?」
石:「視覚はきいたことあるけど聴覚は…耳毛が多いからハイ突こうみたいな?」
松:「あるかもしれんぞ…(笑)」
フ:「空間のつけ方が全然違う。…まだこの時はシンセがあまり世に出てないから、日本版は試行錯誤的に音色を正確に捉えてるのに対して、US版は空間表現が大胆」
松:「曲の分析は日本版のほうがわかりやすい」


4. 『コズミック・サーフィン』

石:「日本版のベースはすごいパーカッシブだね。GS風のミュートもあいまって、点でつくるグルーブというか。US版は腰を重くしてアンサンブルを重視してる」
フ:「確かにUS版はベースのゴリっとした部分をふくらましてるよね。」
石:「ドラムとベースでひっぱろうという意図が分かりやすい」
松:「逆に、日本版はこの生々しさを避けたのかも。テクノ感を意識して」
フ「たしかにUS版はフュージョンやファンク要素強いけど、機械的なノリは日本版」
松:「記憶の中のUS版のこの曲より、ハイレゾのせいかごちゃっとした印象が少ないなぁ。広い場所で大きい音鳴らしてミックスしてたんだろうなぁっていうのが伝わって来る」
石:「昔NYのスタジオに行った時、録るブースよりコントロールルームのほうが広かった。そこで踊りながらミックスしてるらしい。」
松:「寺田康彦さんにTECHNOBOYSの曲をミックスしてもらった時、自分が踊れるミックスにしてるって言ってた!」
フ:「そうなんだろうね、実際」


5. 『コンピューター・ゲーム “インベーダーのテーマ”』

ー閑話休題ー
松:「この頃の一般家庭の再生技術だと、音が塊になっていたところもハイレゾで意図がすごいわかる。TECHNOBOYSは最初からハイレゾを意識してるけど、当時はアナログだったから…研究的な意味でも、この頃の音源のハイレゾ化ってありがたいね」
フ:「音楽の答え合わせをしてる気がする。合わせて欲しくない場合もあるかもだけど(笑)」

石:「SEも色々試してるよね、アルバム全体通して。こういう試みが新しかったんだね」
松:「日本版のほうが鋭いイメージかな…今、これ聞いてインベーダーゲームって分かる人少ないだろうね」
フ:「当時は、だれが聞いてもわかるほど世界を席巻していた音だったからね」



6. 『東風』

石:「ブラームス的なオーケストレーションから始まって。今回、ハイレゾになって音の輪郭がはっきりしたから、アナログシンセという楽器のピッチの曖昧なところも剥き出しになってしまうね(笑) でも、それがアナログの魅力なんだけど。ほとんどの生楽器はピッチが正確じゃないから」
フ:「100%合うことはないもんね」
松:「女性ボーカルはUSサイドの指示だったのかな?」
石:「そうなんじゃない?TECHNOBOYSもお呼びしてるじゃない。我々のようなおっさんの声だけでは商売にならない」
全員「(笑)」





7. 『中国女』

フ:「日本版とUS版の違いが一番感じられる曲だね。ハイレゾでリバーブの印象が強くなるから、違いも顕著になってるような」
松:「日本版はシンセやドラム、ギター、楽器の特色を明確にだして印象付けてるように感じる。全体的にドライ気味で機械的に音を強く突出させてるような…二次元的なデフォルメなのかな」
石:「US版はひとつひとつの音に空間を与えて3次元的に広げつつも、全部の音を意識的になじませて、一つのバンド感を出してる。*ボブ・ジェームスとかの、シンセとフュージョンの前例もたくさんあったし。この曲の質感はいわゆる初期YMOのイメージを一番感じる最初の曲じゃないかな」
 *クインシー・ジョーンズに見出されたキーボーディスト、作編曲家。
 ジャズ・フュージョン、コンテンポラリーのジャンルで活躍。


8.『ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージック』

松:「こういう曲の進化系にクラブミュージックがあるような気もする…」


9. 『マッド・ピエロ』

石:「このアルバムの中では一番好き、この曲。坂本さんのアンテナの張り方ってすごいよね。当時、多分そんなに日本人が知らなかったようなキーボード奏者の雰囲気を持ってきてる…」』
フ:「アルバム通して、低域が強く出てるのがUS版だったのに、この曲だけ日本版の方が低域強いよね…どうしてだろう…?。」
松:「日本版の方がシンセパーカッションが奥にいってて…」
石:「一番『今』に近いミックスって感じる。SEのバランスもおしゃれ…メロの音は*ポップコーン的な方向性?」
 *ドイツ生まれのアメリカ人、Gershon Kingsley を中心としたグループHot Butter がリリースしたMoog シンセサイザーを使用した曲。

松:「シーケンスのバランスも、オーケストレーションも盛り盛りだし、リードをブラスで支えてるバランスといい…
この曲の音の派手さとか、ハイレゾですごくすっきりして伸びやかに聴こえるね」
フ:「全編通して、日本版マッド・ピエロが一番ハイレゾのポテンシャルを引き出してるんじゃないかなぁ」


10. 『アクロバット(日本版のみ)』

松:「聴き比べにはならないけど…カーテンコールかつアルバム頭に戻っていくと」
石:「矢野顕子さんのオーエスオーエスツアーの一番最後の方にこういう曲やってた…」
フ:「皆様さようなら、みたいな」

-総評-

石:「全体的にやはり空間の広さの印象がまったく違う。リスナーの聞く環境の意識の違いかも。US版は結構大きな音で聴けていただろうから。」
松:「ハイレゾのいいところは解像度が細かいから、音量に頼らず音楽を精査できるところだね。」
フ:「音の素材感を楽しめる日本版は、よりハイファイになって、いわゆるハイレゾらしさが活きてる。米国版は、ともすれば音が塊になってしまいそうな圧を出すミックスでもすっきり聞くことができるというイメージだったかな」



②2nd Album 『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』

『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(2018 Bob Ludwig Remastering)』
YELLOW MAGIC ORCHESTRA



1. テクノポリス

松:「これまたあきらかに一枚目から変化してるね。こんなに変化する2枚目というのも珍しいような」
石:「リバーブの嵐!」
フ:「時代を感じるよね…1年ごとに実験の成果がでているような。ノウハウがたまったのかな」
松:「1stのUS版を経たのが大きかったんだろうね」
石:「そうそう、海外の機材もさらに導入したのでは」
松:「リバーブのグラデーションも綺麗で解けて、バッキングとかでもハイレゾならではの分離をしっかり感じる」
フ:「トラック数の制限があるっていうもいいのかもね、音が厳選されて」
石:「最近192で録ってるから、そういうのは考えるね」
フ:「スラップとシンセベースの共存もさらにすっきりしてる」
石:「TECHNOBOYSも意識してる部分だね…このボコーダーのリズムの外し方がほんと絶妙」
フ:『レコードで聞くと懐かしさを感じるのに、ハイレゾ版はほんとに現代的な音!』
石:「すごくいいね」



2. アブソリュート・エゴ・ダンス

松:「来た!エイサーテクノ!」
フ:「いわゆる沖縄のノリを打ち込みで再現するとどうなるかっていう。インストなのにメロディーを目立たせないという」
石:「この曲が一番1stアルバムを引き継いでる感あるね」
松:「でも空間の使い方や低域の出し方は変わってきてるのはハイレゾだとよく分かる」
フ:「チャンキーという言葉を一番感じる」
石:「細野さんのアルバムの延長線上にあるYMOだよね」


3. 『ライディーン』

石:「大ヒット曲が!」
松:「ほんとに1stのドライ感とは逆に振ってきてるね」
石:「ハイレゾで聞いてもハイファイを感じる!当時もそうだったのかな」
フ:「まるで、今の現代的なハイファイという音を見越したかのような
松:「ハイレゾ思考での曲作りになってるような、音の明るさとか」
フ:「いわゆる空間表現とかね」
石:「レコードの頃でも、それなりの音量で大きなスピーカーで聴くと、後ろから音出てた」
松:「ハイレゾ予言曲(笑)展開のコンピューターゲーム感は1stのオマージュなのかな」
石:「この曲の質感は街道モノらしいよ、七人の侍とか、街道を歩いてるような」
松:「馬の走ってる音も聞こえるしな」
石:「私はYMOはサーヴィスから遡って聴いたから、とっても騒がしい曲だなって思ってた(笑)」
フ:「後期のアルバムから聴くとそうかもね」



4. 『キャスタリア』

フ:「けっこう音歪んでるというか、ギリギリ狙ってるよね」
石:「そういう印象なかったんだけどね…アナログ版では音がなじんでる感じだったけど」
松:「ハイレゾの音の方向性だとイメージが変わる典型なのかもね」
フ:「レコードというかアナログ録音ならではの音の表現ってあるのかも」
石:「これはPoly Moogなのかな、全音ポリシンセならではの音に感じる」
フ:「ビット感というか、機械的なイメージの音色だねぇ」


5. 『ビハインド・ザ・マスク』

フ:「曲によって低域の感じ方が全然違う、CDで聞いたときはそんなに感じなかったのに。ハイレゾはいろいろわかって面白いね」
松:「一枚のアルバムとは思えないほどバリエーションがあって、やっぱり実験的な要素も多かったのかな。それに、ハイハットの一音一音に付随してる残響まで明確なのはさすがハイレゾ」
石:「シンセにリバーブをかけての宇宙的広がりとかね、そりゃシンセでSFの音楽やろうかっておもうよ。」
フ:「ボコーダーがすごくすっきり聴こえる、というかCDより全体的に声モノがすごく聴こえやすい」


6. 『デイ・トリッパー』

フ:「低域の距離感がまた変わってる…」
石:「すごくバランスよくできてるアレンジだよね。」
松:「ギターの音色がすごいなじんでる、シンセとギターの音の関係性がはっきりしてきたような」
石:「ギター鮎川さん?すごく音楽に合うように丁寧に音を作ってる。」

7. インソムニア

フ:「やっぱり、チャンキー・ミュージックの方向性なのね、このアルバムの細野さんの楽曲」
石:「こんなに全編ボコーダーを使ってると思ってなかった、すごく聴こえる」
フ:「気づいてなかった音もCDよりはるかに明確になってる」
松:「マスキングされがちな音までしっかり…」
フ:「この曲が一番それを感じるかもね。ハイレゾ版、すごく丁寧に音を扱ってるなって」


8. 『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』

松:「曲の構造としての音色がしっかり分かる!なにより、ボーカルとボイスがしっかり分かれてる!爆発的に低域をもとめた時代と違って、全体的にハイまで伸びやかなハイレゾ時代がありがたい。ハイレゾの表現では全体的に音の明度が高い印象はあるんだけどね」
フ:「確かに」



-総評-
松:「今回のハイレゾリリースで、1stから2ndへの音の変化と、US版の立ち位置っていうのがより研究できるのでは?海外展開時のミックスの戦略も、時代は違えど細かく聞くと興味深い。」
石:「アンサンブルの細部が分かるのもあるけど、意外とハイレゾだと現代的な音に聴こえる曲も多かった」
フ:「ハイファイな音の捉え方や扱い方っていうのは、今も当時もそんなに変化がなくて、技術的な部分で現代的になってるのかもね。」




松:「というわけで、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDによるYMO結成40周年記念1st&2ndアルバムハイレゾ試聴会でした!」






TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND

フジムラトヲル(プログラミング・ベース・ボーカル)※写真中央、松井洋平(プログラミング・ノイズギター・ボーカル)※写真右、石川智久(プログラミング・キーボード・ボーカル)※写真左 の3人組。

1994年、結成。2006年、1st.album 『music laundering』を発表。2007年、映画『EX MACHINA -エクスマキナ-』にて、音楽監修、細野晴臣氏の抜擢により、『LOST SECOND』を提供。2014年、TVアニメ「ウィッチクラフトワークス」を皮切りに、数々の劇伴を手がける。 同年、8年振りとなる2nd.album『good night citizen』を発表。
ハイレゾ版は、「e-onkyo music」CLUB / ELECTRONICA部門で、1年以上1位を記録するロングヒットとなった。
2015年11月、シングル『打ち寄せられた忘却の残響に』にて、Lantisよりメジャーデビュー。
社会現象にもなったTVアニメ『おそ松さん』のエンディング主題歌『SIX SAME FACES 今夜は最高!!!!!!?』『SIX SHAME FACES 今夜も最高!!!!!!?』は、大きな話題となる。その後も「魔法陣グルグル」「賭ケグルイ」「深夜!天才バカボン」「ガイコツ書店員 本田さん」など、話題の作品に楽曲を提供し続けている。