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評論家 高橋敦が聴く!『SQUARE ENIX JAZZ Vol.2』

2018/12/05
SQUARE ENIXの人気ゲーム「FINAL FANTASY」の楽曲にジャズサウンドでアプローチした「SQUARE ENIX JAZZ -FINAL FANTASY-」から一年。その完成度から高まった「他のタイトルの曲もこのサウンドで聴きたい!」との要望に応える形で登場したのがこのたび発売の「SQUARE ENIX JAZZ Vol.2」だ。
今回は「FINAL FANTASY」に加え、「NieR」「SaGa」「クロノ・トリガー」「聖剣伝説」シリーズと、同社を代表するRPGタイトルからセレクトした楽曲を収録。よって原曲の曲調は実に様々だが、選曲・アレンジ・曲順などの妙によって、アルバムらしいまとまりとアルバムらしい幅広さを見事に兼ね備える作品として構築されている。

●文:高橋 敦

『SQUARE ENIX JAZZ Vol.2』
V.A.



もちろんまずはそれらの「ゲーム」タイトルのファンに聴いてみてほしい作品ではある。しかし同時に「ジャズ」側から見ても興味深く魅力的な作品だ。

ジャズの魅力のひとつは、ジャズという器の大きさや自由度にあるのではないだろうか。「ジャズとは何か?」を考えるとき、その定義を絞り込むことで理解を深めることもできるだろう。しかし逆にその定義を最大限に緩めることでその本質を見つめることもできると思う。
「何らかのテーマを」
「何でもありのアレンジとプレイで」
「何か素晴らしい音楽に仕上げる」
それだけで十分にジャズ。そんな気もするのだ。

そこで本作。
「何らかのテーマ」はもちろん、スクエニの名作ゲームタイトルのBGMからのものだ。RPGタイトルにおいては様々なシーンをそれぞれ彩るために膨大な曲が用いられており、その膨大な中からプレイヤーの印象に強く残り、今回セレクトされた曲のそれが珠玉のメロディであることは当然だ。素材は最高と言える。
そして「何でもありのアレンジとプレイ」については、原曲そのものアレンジとジャズのアプローチが掛け合わせられることで、まさに「SQUARE ENIX×JAZZ」ならではの魅力が生まれているように思える。
というのもそもそもゲームBGMというのがジャズにも匹敵するほどに「何でもあり」なのだ。エレクトリックサウンドはもちろん、プログレのリズムからクラシックのオーケストレーションまでが、当然のようにそこに内包されている。
その何でもありのゲームミュージックが一流のジャズミュージシャンにインスピレーションを与え、さらに何でもありでのジャズ的な再解釈、編曲・演奏が生み出される。その化学変化や相乗効果の結晶が「SQUARE ENIX JAZZ」のサウンドだ。

そのジャズサイドについては、アレンジャーはもちろん前作から引き続きの中川英二郎氏と川村竜氏に任された。それぞれトロンボーンとベースのトッププレイヤーでもあり、演奏面においても全曲を牽引。前作発売時の両氏へのインタビューも興味深い内容であり、こちらにもぜひ目を通していただければと思う。

アレンジャー両氏に聞く『SQUARE ENIX JAZZ -FINAL FANTASY-』!!

ここからは特に印象的な曲をピックアップして、そのサウンド、音楽的オーディオ的に注目してほしいポイントを紹介していきたい。
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★2.妖星乱舞 Jazz Arrangement(FINAL FANTASY VI)

こちらの原曲はスーパーファミコンでのタイトルであり、使える音色や同時発音数の少なさなど、当時のスペックの制限の中で生み出された曲。なのだが、キング・クリムゾンやドリーム・シアターを思い起こさせるようなプログレッシブなリフやリズム、展開は、実はほぼ原曲準拠だから驚きだ。当時の自分はそんなことを意識してプレイしていなかったが、改めて確認すると恐ろしい音楽を刷り込まれていたものだなと思う。
それをリズムを少し跳ねさせるなどジャズのかっこよさも上乗せしてアレンジしたのが本作収録バージョン。当時の打ち込み音源では難しかったであろう、ディストーションサウンドのエレクトリックギターの活躍もポイントだ。サックスとディストーションギターのコンビネーションでキング・クリムゾン感が強くなっている。これがこの曲の当初からのサウンドだったのでは?というほどのしっくり感だ。ジャズとしては強いて言葉にするなら「プログレッシブ・フュージョン」とでも言うべきか。演奏の盛り上がりとしてはやはり中盤、奇数で組み立てたトリッキーな決めフレーズの連発はぜひ聴いてほしい。
オーディオ的には冒頭のギターの見事にコントロールされたフィードバックノイズの奥行き表現に注目。ギターは以降も奥に配置されている場面が多いが、しかし奥まった印象にはならず、クリアな存在感で描き出される。できればスピーカー再生で確認してほしいところだ。決めフレーズの箇所であえてノイジーでローファイな音色を使い、デジタルノスタルジーとでもいうべき感触を生み出しているのも面白い。
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★5.戦闘シーン Jazz Arrangement(FINAL FANTASY I)

こちらはさらにさかのぼってファミコン時代の作品の曲であり、通常の戦闘シーンの曲ということもあって原曲はシンプル。
そのシンプルさを生かし、ミニマルな繰り返しで盛り上げるファンクアプローチなジャズに仕上げたのが本作収録バージョンだ。ワウワウギターのカッティング、打点を後ろに引っ張ってヘヴィなビートを叩き出すドラムス、バキッと硬質なスラップベース。ニューヨークスタジオミュージシャン的な、クールな雰囲気のファンク&ジャズとなっている。ベースがソロ楽器としても活躍するあたりも含めて、マーカス・ミラー的なかっこよさも。
オーディオ的なポイントもそのエレクトリックベース。単に太いとか重いとかだけではなく、低音域まで緩みなく引き締まってしっかりとアタックしてクリアに伸びる感触をしっかり再現するには、パワフルでいてフラット&ワイドな再生システムが必要だろう。イヤホンだと例えば「ダイナミック型のハイエンドをその力を引き出せるプレイヤーで駆動」といったようなレベルが求められる。そういった点の試金石的な、オーディオリファレンス曲とするのもよいかもしれない。
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★6.風の憧憬 Jazz Arrangement(クロノ・トリガー)

こちらもスーパーファミコン期の名作からの曲。マップ画面の背景として流されていた、ニューエイジ・ミュージックの雰囲気も感じさせる美しい曲だ。
こちらの原曲はマップ画面のBGMという役割から静かでいて淡々としたものだが、本作収録バージョンはそのメロディの美しさを生かしつつ躍動感溢れるアレンジに生まれ変わらせている。掛け合いながら駆け抜けるようなドラムスとベースのリズムに美しいメロディが重なる様は、E.S.T、エスビョルン・スヴェンソン・トリオあたりも思い起こさせるような雰囲気だ。つまりジャズとしては北欧ジャズ的なニュアンスも感じさせるサウンド。イントロとエンディングでピアノとアコースティックギターがテーマメロディを静かに奏で、元のメロディの美しさを最初と最後に改めて提示しているところも憎い。
オーディオ的にはシンバルの感触に注目したい。アップテンポの曲でクラッシュを含めてシンバルの強打連打が多用されるのだが、しかしそれがうるさくないというのがこの曲の演奏と録音の特徴であり、前述の北欧ジャズっぽさでもある。かといってただ穏やかな音として再生されてしまっては疾走感が出ない。よくほぐれていてしかし透明感やスピード感にも優れる、そういった優秀な高域表現を備えた再生システムで聴きたい曲だ。ハイエンドの開放型ヘッドホンでややソフトな音調のモデルなどは、この曲に特によくフィットするかもしれない。
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といったように原曲の素晴しさ、そしてそれをリスペクトするからこそのインスピレーションによって生み出されたのが「SQUARE ENIX JAZZ」シリーズであり、そして本作だ。 これを「ジャズアレンジで演奏されるゲーム音楽」と捉えるか「ゲーム音楽をテーマにしたジャズ」と捉えるかは人それぞれかもしれない。しかしどちらにしても素晴らしい音楽がここにある。そのことに変わりはないだろう。

なお、オフィシャル1st LIVE「Billboard Live presents SQUARE ENIX JAZZ -DEBUT-」の開催も発表された。
このライブには、中川英二郎氏と川村竜氏をはじめレコーディングに参加したメンバーが集結するとのこと。レコーディング時の演奏を踏まえた上でライブならではの瞬発力も加えて、さらに熱い音を届けてくれるに違いない。

◆SQUARE ENIX JAZZシリーズ ポータルサイト

◆SQUARE ENIX JAZZ Vol.2 公式サイト

◆Billboard presents SQUARE ENIX JAZZ –DEBUT- 公式サイト