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晩秋に聴きたいハイレゾ・クラシック新譜~チェロ&ピアノの詩情を味わう

2018/11/21
秋もますます深まり、ハイレゾ・スピーカーからもエモーショナルな音楽を流してみたくなる今日この頃。楽器の質感とロマンティックなメロディが晩秋らしいムードを醸し出す、オススメのクラシック新譜を2タイトルご紹介します。
1.チェロ~19世紀の名チェリストゆかりの「弓」を聴く

まろやかな中低音を奏でる弦楽器、チェロ。J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」などを聴いていると、思索にふける老哲学者のようなイメージを抱きますが、実はもっといろいろな顔を持つ楽器。ときに甘くときに華やかに、ひとりでソプラノからバスまで何役分もこなすことができる楽器、それがチェロなのです。

そんなチェロの新鮮な魅力をお届けするのがこちらの新譜。

「ファンテジー ドゥ セルヴェ」録音風景(チェロ:林裕)


『ファンテジー ドゥ セルヴェ Cellist-Composers Collection II』
林裕, 佐竹裕介



「ヴェニスの謝肉祭」によるファンテジー・ビュルレスク」や、「スパの思い出」といった、タイトルからも詩情がうかがえる7トラックを収録したこちらの新譜。うち6曲(共作も含む)の作曲者は、チェリストのアドリエン・フランソワ・セルヴェ(1807-1866)。ショパンやリストと同世代というだけあって、その作品はいずれもピアノばりの華やかな技巧を散りばめたもの。「チェロって、こんなに飛んだり跳ねたりする楽器なの!?」と驚くこと間違いないです。それでいて、包容力と落ち着きのある音色はさすがのチェロ。どれほど自由自在に弦の上を動き回っても、うるさいということが一切なく、ソファにくつろぎながらゆったりと楽しめます。

そもそも演奏機会が少ないセルヴェですが、この録音にひときわ希少価値を与えているのは、こちらの「弓」。





実はこの弓、セルヴェ本人とゆかりがあると伝えられているもの。長らく個人コレクターの所有物となっていましたが、かつて大阪フィルの首席をつとめ、現在はセルヴェをはじめとした往年のチェロ奏者による楽曲の発掘と演奏に力を注ぐ名チェリスト・林裕の情熱を知った所有者が、この弓と林を引き合わせたというドラマティックなエピソードも。

エンジニアは『飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ』シリーズなどでハイレゾ・ファンにもおなじみの長江和哉。レコーディングは愛知県・碧南市にある452席の室内楽専用ホール「エメラルドホール」で、たっぷり7日間にわたって行われました。下の写真をご覧ください。普段なら客席に向かって開けられるピアノが逆にステージ後方のチェロに向かって開くようにセッティングされています。この見慣れない光景が、むしろ自然で音楽的なサウンドを生み出すということも大変興味深い事実といえるでしょう。



(左から)佐竹裕介(ピアノ)、林裕(チェロ)、長江和哉(レコーディング・エンジニア)

セルヴェ作曲による6曲を堪能したあと、最後に奏されるのは「別れの歌 - セルヴェの想い出に-」。弟子のポールテンが亡き師セルヴェに捧げたこの作品からは、この知られざる19世紀のチェリストが、音楽だけでなく、人間としても愛されていたことを感じさせてくれます。

2.ピアノ~「もうひとりのショパン」?ブーム到来中のポーランド人ピアニスト

ポーランド生まれの作曲家といえば……もちろん「ショパン」。そのショパンに負けず劣らずのロマンティックなピアノ曲を生んだ、もうひとりのポーランド人ピアニストをご存じでしょうか。それがこの人、パデレフスキ。

イグナツィ・ヤン・パデレフスキ(1860-1941)

ショパン・ファンにとっては「ショパンの楽譜の校訂者」として知られている人ですが、最近では彼が作曲した作品にも注目が集まっています。故・中村紘子や横山幸雄といった日本を代表するピアニストが、彼の作品を熱く支持。さらに、若手のホープである藤田真央、黒木雪音も演奏に参加。ピアノ界でブームが起きつつあるこの作曲家の代表作を収めた新譜が、本日ハイレゾ先行配信開始されました。


『パデレフスキ ピアノ名曲集』
横山幸雄, 黒木雪音, 藤田真央



「聴きやすい!」
試聴ボタンを押して、すぐにそう思う方も多いことでしょう。耳にすっと入ってくるストレートなメロディ。過剰すぎない華やかさと品の良さ。横山・黒木・藤田の3ピアニストの演奏センスも相まって、ショパンよりも親しみやすく感じられるのではないでしょうか。

さて、パデレフスキとはどんな経歴の人物なのかというと……
なんと、音楽家にして「ポーランドの初代首相」。ちょうどショパンが生まれてから半世紀後、1860年に生まれたパデレフスキは、幼少期より音楽の才能を示し、ワルシャワ音楽院を卒業。ベルリンとウィーンで作曲とピアノを勉強した後、ピアニストとして国際的に活躍しました。20世紀以降はポーランドの民族運動にも深くかかわり、第一次世界大戦後に独立ポーランドの首相と外務大臣に就任。その後の人生を、音楽と政治活動の両面に捧げました。

ショパンと同じく故国ポーランドを深く愛し、またピアノという楽器を深く愛したパデレフスキ。「違う時代を生きたもうひとりのショパン」として聴いてみるのも面白いのではないでしょうか。

<横山幸雄・藤田真央が弾くショパンはこちら>


『雨だれのプレリュード~ショパン名曲集』
横山幸雄




『passage パッセージ - ショパン: ピアノ・ソナタ第3番』
藤田真央