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【インタヴュー】 小山豊 meets 島裕介 ~和ジャズ~ vol.2

2018/10/26
日本最大流派のひとつである小山流の三代目である小山豊さんは、古典からクラブ・ミュージックまで、ジャンルの枠を超え国内・海外で演奏活動を行っている津軽三味線奏者。トランペット奏者/プロデューサーの島裕介さんは、400タイトル以上のアルバムへの参加実績を持ち、数々のプロジェクトやヒット作品『名曲を吹く』を筆頭とする自作品も意欲的に発表し続けている重鎮。
和楽器と洋楽器、それぞれバックグラウンドの異なる楽器を操る両者は、ジャンルを超えてさまざまな楽曲に取り組んだコラボレーション作品『小山豊 meets 島裕介 ~和ジャズ~』を2016年に発表し、大きな支持を獲得しました。
そしてこのたび、同作の第2弾『小山豊 meets 島裕介 ~和ジャズ~ vol.2』をリリース。さらなる成熟感がサウンドに表れた本作について、お話をお聞きしました。

文・取材◎印南敦史


『小山豊 meets 島裕介 ~和ジャズ~ vol.2』
/小山豊 meets 島裕介




――今作は、2016年のファースト・アルバム『小山豊 meets 島裕介 ~和ジャズ~』に次ぐ2作目のコラボレーションですね。そもそも、このプロジェクトはどのような経緯からスタートしたものだったのでしょうか?

島裕介(以下:島) 「僕がやろうって言い出したんですけど、15、6年前にクラブ・イヴェントで会ったことがきっかけだったんです。そのあと、他のイヴェントでも遭遇する機会は何度かあったんですけど、なかなか音を交わす機会はなくて……。でも、ずっと気にはなっていたんですよね。で、3年くらい前、僕とギターの斎藤純一くんが、別の仕事で『名曲を吹く』というプロジェクトと連動したライヴを自由が丘の「ハイフン」でやったとき、そこにゲストで小山くんを呼んだんです。ちょうど斎藤くんが小山くんと別の仕事をしてた時期だったので、いいタイミングだったんですよ。

――そんなに昔からつながっていたとは驚きです。

 そのときにとてもいいサウンドになったので、アイデアがわーっと出てきて、『アルバムを録ろう』という話になって。それで、丸一日で12、3曲録ったんですが、そうやってあのファースト・アルバムが生まれたんです。

――グループではなく、あくまでプロジェクトなんですね。

 そうです。たとえば、“小山豊 meets 島裕介”というタイトルにも意味があるんですよ。ジャズに詳しい方ならおわかりかと思うんですけど、昔のジャズには、“meets”のついたタイトルがあったじゃないですか。ジェリー・マリガンとセロニアス・モンクの『mulligan meets monk』とか。なかなか共演する機会のないアーティスト同士を組み合わせてみたら、おもしろいアルバムが生まれるだろうという発想で、それに対するオマージュ。異種格闘技戦的な意味合いも込めているんです。

――前作と、気持ち的な違いはありましたか?

 かなりライヴを経た状態でつくったので、前作よりも、より自然にできたと思いますね。打楽器も前回のカホーンから和太鼓に変わりましたから、よりヴァラエティ豊かな作品になったのではないかと思います。

――難しいところはありましたか?

小山 “キャッチーであること”の大切さについては、島さんと僕で考え方が共通しているんです。それに曲選考から録音の仕方、ライヴのつくり方も合致するので、難しいと感じることはほぼなかったですね。セッションに近くて、レコーディングは2日間で終わりましたし。

――各曲についてコメントをください。まずはオープニングの“Todoroki Session 3”から。

 これと13曲目の“Todoroki Session 4”は、同じ曲をぶった切ってるんです。トランペット奏者のロイ・ハーグローヴが自身のアルバムで、インタールード的にセッションをぶった切って収録していたんですよ。そのアイデアを生かしました。

――“枯葉~強風~”は、カヴァーですが、タイトルも変わっていますね。

 もともと“枯葉”はGマイナーの曲なんですけど、この編成だと哀愁感のあるサウンドがよいので、Dマイナーという、津軽三味線がいちばん鳴りやすいキーにして3拍子速いアレンジでやってるんです。津軽三味線のアッパーな感じを出したかったし、それが“強風”というサブ・タイトルのイメージ。優雅な枯葉じゃなくて、台風のあとの枯葉みたいな(笑)。

 次の“Club R”はShima & Shikou Duoのセカンド・アルバムに一度入れた曲なんですけど、この編成に合うだろうなって思って。続く“Aliento”は、ギターの齋藤純一くんのオリジナルですね。彼には前作でも一曲だけ楽曲提供してもらっていますが、ほんわかした感じの曲だった前回とは違い、今回はこの編成ならではの熱いラテンな感じの曲ですね。

――そして、スティングのカヴァー“Fragile”。

 前作でも“English Man in New York”を入れてるんですけど、メンバーもみんなスティングが大好きなんです。で、今回はこのサウンドにハマる感じの楽曲っていうことで“Fragile”をチョイスしました。

――“もみじ”は小山さんの楽曲ですね。

小山 僕は、いまみたいに和楽器が入っているようなバンドがまだなかった時期に、Sootheというインストゥルメンタル・バンドを組んでいて、クラブとかライヴハウスでよくライヴをやっていたんです。“もみじ”は、そのころにつくった楽曲をこのアルバムのためにリアレンジしたもの。イメージとしては、“枯葉~強風~”から強風感を抜いた感じ。京都の紅葉の美しい感じというか、神社仏閣系のバラードですね。

――続いては、ビートルズの名曲カヴァーです。

 この“here there and everywhere”は、僕の『名曲を吹く -Ink Blue-』に収録したことがあるんですが、そのアレンジのまま、この編成でやってみたんです。

――そこから小山さんの“中節~ロ短調~”という流れもおもしろいですね。

小山 “津軽じょんがら節”という有名な民謡がありますけど、そのリズムは3パターンあるんですよ。いちばんしっとりとしている中節をアドリブで実験的に弾いてみて、そこに島さんがホーン・セクションをオーヴァーダビングしてくれたのがこの曲です。三味線は基本的にリバーヴも入れるんですけど、それをまったくナシにしているので、素材感のある感じに仕上がっています。

――しかも、そのしっとり感が“ドンパン節”で一気に変貌します。

 “ドンパン節”をやろうというアイデアは、直前までなかったんですよ。前作でやった“こきりこ節”の評判がよかったので、それっぽい感じのネタがあったらいいなと思って、いろいろ考えたんです。

小山 アレンジは僕が担当しているんですが、いわば島さんと一緒にやる民謡のジャズ・アレンジ。アフリカのリズムとか、中米のカリプソの要素も入れつつ、それを踊れる感じにして。次の“この道”も僕のアレンジなんですが、これは、このメンバーでもアンコールでよくやる曲なんです。しっとりと、やさしくやってみたらどうかなって考えました。

――おなじみの“Caravan”も、“Caravan ~中東から極東へ~”というタイトルになっていますね。

 これはね、2日目のレコーディングの当日に持ってきた曲なんですよ。1日目のレコーディングが終わって、夜に寝てるとき思いついたんです。前作に入れた“So What”みたいにモーダルな空気感を入れたくて考えていたら、ふと“Caravan”が出てきて。ですからアレンジもほとんど書かないまま、ただ「“So What”みたいな感じのアレンジでやろう」って進めました。

小山 ですから緊張感ありました(笑)。

 キーも大胆に変えてるんですよね。普通はFマイナーなんですけど、これはAマイナーかな。それで、中東っぽいスケーリングもやったりして、それがおもしろかったんで、『中東から極東へ』というサブタイトルがついたんです。中東サウンドから極東の楽器の、シルクロードみたいな感じっていうのを伝えたかったという。

――ここから先は、また雰囲気が変わりますね。

 “Blue In Kyoto”は『Silent Jazz Case 3』っていうオリジナル・アルバムに一回収録した僕の曲で、絶対にこの編成に合うだろうなと思ったので、それを再アレンジしたんです。そして、さっきお話しした“Todoroki Session 4”を挟んで“My Favorite Things”。『名曲を吹く -Ink Blue-』にも収録しましたし、いろんなところでやらせてもらう楽曲です。

――通して聴いてみると、曲順も含めてアルバムとしての統一感がありますし、収録曲も、おふたりのいままでの活動を凝縮したような感じですね。

小山 ああ、そうですね、それはおっしゃるとおりですね。持ち寄るっていうか、必然的にそうなったんじゃないかと思います。

――このアルバムの魅力は、過度に「和」を強調していないところだと感じました。和楽器を使っているだけで「ジャパネスク」みたいに強調されてしまいがちですが、そういうわざとらしさがなく、洋楽器と和楽器が自然な形で調和しているといいますか。

小山 そうなんですよ。『着ぐるみのような和』というようなハリボテ感が、僕はすごく苦手で。でも、ハリボテにされることも他の仕事では多くあるので、このプロジェクトではそうならないように心がけています。

――やはり、仕事としてそういうものを求められてしまうことはあるんですね。

小山 特に最近は、オリンピックに向けてそういう和楽器の使い方が多いですね。でも僕はむしろ、オリンピックの“その先”が心配なんです。現状は和楽器バブルみたいになってるんですけど、そうじゃなく、ひとつの楽器として、本当の意味でのコラボレーションを模索したいなと思っているんです。

――それは大切なことですね。

小山 オリンピックがあるから、みなさんすぐに『2020に向けてがんばりたい』とか、『2020まで世界に対して~』というようなことをおっしゃるんですけど、でも、ずっと前からそういう意識でやっていらっしゃる方もたくさんいるんです。それに今後は、『後世にどう残していくか』っていうことがすごく重要になってくると思うので、そこに対してしっかりとやっていきたい。『きらびやかな着物を着てるから和』っていうわけじゃないと思うので、そこを探したいなと思っています。

 ビッグ・バンドに琴を入れたり、フリー・ジャズの人が和楽器を入れたり、海外でも昔からそういうことがあったじゃないですか。でもそれは、着ぐるみ感のある使い方じゃないかなあと思うんですよね。いまいちサウンドとして確立されていないっていうか、見世物みたいになってるっていうか。そういうところで個性をつけようとする過去作品が多かったので、そうならないようにしようっていう心がけは持ちたいですね。

小山 僕がリスナーのみなさんにお伝えしたいのも、まさにそこなんです。『和楽器だから和』とか、『洋楽器だから洋』というわけではないと思っているので、このサウンドを聴いて、率直に感じるものを大切にしていただきたいと思うんです。

――最後に、e-onkyo musicのユーザーにひとことお願いします。

 実は随所に高度なことをやっていたりもするので、特にハイレゾのリスナーさんには、そのあたりを感じていただけたらうれしいなぁと思います。気をてらったことをやっているということではなく、ナチュラルに、わりと高度なことを随所に散りばめているので。

――ありがとうございました。

9月26日渋谷Jz Bratにて
島裕介(Tp)、小山豊(津軽三味線)、齋藤純一(Gt)、大多和正樹(和太鼓, パーカッション)(L to R)



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