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【9月7日更新】 ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music

2018/09/07
衛星デジタル音楽放送ミュージックバードで、2017年1月にスタートした番組「ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music」と連動したコラム。音にこだわるオーディオ・ファン、ハイレゾに初トライしてみたいクラシック・ファンのために、「ハイレゾ女子」として活躍する音楽ライター・原典子が、e-onkyo musicから選りすぐりのタイトルをご紹介します。 文◎原典子
9月のテーマ:21世紀のレジェンドたち

◆現代を代表する8人の音楽家

 9月は「21世紀のレジェンドたち」と題して、現在のクラシック界を代表する現役の音楽家を各回にひとりずつ取り上げて特集する。「巨匠」と呼ばれる地位と名声を手に入れながらも、そこに安住せず、新たな境地を求めて挑戦を続けている8人の音楽家たち。その進化と深化の過程を辿りながら、アルバムをご紹介していこう。

 まずは、マルタ・アルゲリッチ。スタート地点となった1960年録音の『デビュー・リサイタル』(71年に録音されたリストのピアノ・ソナタ ロ短調を併録)から、2010年にすみだトリフォニーホールで行われたクリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルとの共演ライヴ『マルタ・アルゲリッチ セレブレーション02』、そして2002年から続けられてきたプロジェクトの最後となった『ルガーノ・フェスティヴァル・ライヴ2016』をお届けする。ソロでの録音が少ないことを嘆くファンも多いが、みずからが才能を見出した若手や、気心知れた仲間たちと共に繰り広げる音楽の中でこそ、アルゲリッチの真珠のような音色は、いっそうの輝きを放つのではないかと私は思う。

 ピアニストとしてもうひとり取り上げるのは、アンドラーシュ・シフ。ECMからリリースされた『J.S.バッハ:パルティータ全曲』(2007年録音)と『シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番&第21番 他』(2014年録音)をお届けする。バッハはライヴ録音とは信じがたい完璧な演奏、一方のシューベルトはシフが所蔵するフォルテピアノによるやわらかで芳醇な音色が聴く者の心を満たす。以前、シフにレッスンを受けたピアニストから「シフは“趣味よくね”という言葉をよく口にする」という話を聞いたことがある。感情過多や大仰な振る舞いとは無縁の自然なピアニズムの魅力は、たしかにこの言葉に集約されるかもしれない。

◆巨匠たちの飽くなき挑戦

 アバド、マゼール、アーノンクール、ブーレーズといった指揮者たちが次々と世を去ってしまった現在、巨匠と呼ばれる存在は誰かと考えたとき、いちばんに思い浮かんだのがマリス・ヤンソンスだった。バイエルン放送響との『ブルックナー:交響曲第8番(1890年稿)』(2017年録音)や、ロイヤル・コンセルトヘボウ管との『マーラー:交響曲第7番「夜の歌」』(2016年録音)からは、一音たりとも疎かにせず、さらなる高みを目指す指揮者とオーケストラの姿勢がひしひしと伝わってくる。11月のバイエルン放送響との来日公演では、「夜の歌」のほか、ストラヴィンスキーの「春の祭典」、エフゲニー・キーシンを迎えてのピアノ協奏曲などが予定されている。

 1955年生まれのサイモン・ラトルは、巨匠と呼ぶには若いのかもしれない。だがベルリン・フィルの芸術監督として一時代を築き、昨年9月より母国のロンドン響とともに新たなスタートを切ったラトルは、まさにこれから円熟に向かう時期と言えるだろう。放送では、若き頃のラトルがアンドレイ・ガヴリーロフをソロに迎え、ロンドン響と録音した『プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第1番、ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲』(1977年録音)をはじめ、ベルリン・フィルとの名演をお届けする。

 ヴァイオリニストでは、まずギドン・クレーメルを取り上げる。1969年のパガニーニ国際コンクール、70年のチャイコフスキー国際コンクールにて相次いで第1位を獲得し、トップ・ヴァイオリニストとして活躍してきたクレーメルは、知られざる作曲家を数多く世に紹介してきた功績も大きい。ペルト、シュニトケ、カンチェリ、グバイドゥーリナ、ヴァインベルクなど、クレーメルの演奏を通じてはじめて知った方も多いことだろう。馴染みのない現代作曲家というと、難解な音楽だと身構えてしまう方もいるかもしれない。しかしクレーメルのアルバムを聴くと、そんな心配は消え失せてしまう。音楽界屈指の知性派でありながら、同時に彼の音楽は、知識や理論ではなく肌で感じる音楽の根源的な喜びを私たちにもたらしてくれる。

 もうひとりのヴァイオリニストは、チョン・キョンファ。指の故障で演奏活動を休止していた期間を経て復帰、2016年に15年ぶりとなるスタジオ録音作『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全曲)』を発表して大きな話題を呼んだ。コンサート活動にはすでに復帰していたとはいえ、長らくのブランクのあとの第一弾の録音に、自分が人生における目標としていた作品を持ってくるとは、いやはやすごい丹力である。

 そのほか放送では、チェリストのヨーヨー・マとメゾ・ソプラノ歌手のチェチーリア・バルトリを取り上げる。ともにクラシック界の中心で高く評価されながら、従来の枠を打ち破るパイオニアとして最前線に立ち続けている孤高の音楽家。レジェンドたちの挑戦はまだまだ続きそうだ。


9月テーマ:21世紀のレジェンドたち
<マルタ・アルゲリッチ>

●『デビュー・リサイタル』
Deutsche Grammophon



●『マルタ・アルゲリッチ セレブレーション02』
KAJIMOTO□



●『ルガーノ・フェスティヴァル・ライヴ2016』
Warner Classics




<アンドラーシュ・シフ>

●『J.S.バッハ:パルティータ全曲』
ECM



●『シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番&第21番 他』
ECM



<マリス・ヤンソンス>

●『ブルックナー:交響曲第8番(1890年稿)』
BR-Klassik



●『マーラー:交響曲第7番ホ短調「夜の歌」』



●『ストラヴィンスキー:バレエ「火の鳥」組曲(1919年版)、「春の祭典」』
RCO Live





<サイモン・ラトル>

●『プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第1番、ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲』
Warner Classics



●『ブラームス:交響曲全集』
Warner Classics



●『ブラームス(シェーンベルク編):ピアノ四重奏曲(管弦楽版)他』
Warner Classics





<ギドン・クレーメル>

●『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ (全曲)』
録音:Decca



●『カンチェリ:キアロスクーロ』
ECM





<チョン・キョンファ>

●『チャイコフスキー&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲』
Decca



●『バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全曲)』
Warner Classics



●『フォーレ&フランク:ヴァイオリン・ソナタ集、フランス小品集』
Warner Classics





<ヨーヨー・マ>

●『バッハ:トリオ ~チェロ、マンドリン、コントラバス』
Nonesuch Records



●『ゴリホフ:チェロ協奏曲「アズール」』
Warner Classics



●『ソングス・フロム・アーク・オブ・ライフ』br> Sony Music Labels Inc.





<チェチーリア・バルトリ>

●『サンクトペテルブルク~女帝へ捧げられたアリア』
Decca



●『ミッション』
Decca



●『ステッファーニ:スターバト・マーテル』
Decca







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出演者:原典子(はら・のりこ) 音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在はフリーランス。『intoxicate』『CDジャーナル』など音楽雑誌への執筆のほか、坂本龍一監修の音楽全集『commmons: schola』の編集を担当。鎌倉で子育てをしながら、「レゾナンス<鎌倉のひびき>コンサートシリーズ」の企画にも携わる。
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