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連載「GREAT3片寄明人のハイレゾ・コラム」 第2回

2014/08/29
新企画、GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」 第2回。

95年のデビュー以来、普遍と革新を併せ持ったサウンドで、ミュージックシーンのみならず、カルチャーシーンからも大きな支持を得てきたバンド=GREAT3。その中心人物であり、業界屈指の音楽マニア、そしてアナログ・コレクターとして知られる片寄明人をセレクターに迎え「ハイレゾでこそ楽しみたい!」という作品はもちろん「隠れた名盤」や「思い入れのある作品」など、e-onkyo musicの豊富なカタログの中より片寄明人が面白いと思う作品をセレクトする、「ミュージシャン視点」のハイレゾ・コラムです。

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【バックナンバー】
<第8回>「Deodato (前編)」
<第7回>「The Velvet Underground(後編)」
<第6回>「The Velvet Underground(前編)」
<第5回>「The Who『四重人格』(後編)」
<第4回>「The Who『四重人格』(前編)」
<第3回>「チェット・ベイカー『枯葉』」
<第2回>「GREAT3『愛の関係』 」
<第1回>「はじめまして、GREAT3の片寄明人です。」





連載 GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」第2回
『愛の関係』


先日リリースされたGREAT3「愛の関係」24bit96khzハイレゾ版、そしてそこからカッティングした高音質2枚組アナログ盤が好反響で嬉しい限りです。やっぱり作品を自分が愛聴しているフォーマットで聴き手の皆さまにお届けできる喜びはひとしおですね。

『愛の関係』(96kHz/24bit)
/GREAT3



CD版を聴き慣れた耳にとって、より情報量の多いハイレゾやアナログの音像はだいぶ印象が違うのも確かです。個人的にはハイレゾやアナログ盤ではスタジオの大きさや音色の細かいニュアンスなど様々なニュアンスまで聴き取れるのが楽しい反面、『愛の関係』の場合は作り手でもあるので、スタジオでレコーディングしていた時の記憶や感情が鮮明に蘇り「ああ!ここはもっとタイミング合わせられたなあ。。。」とか「あれっ!?ここの歌、もっと上手く歌えたんじゃないの!?」なんて今さら考えてもどうしようもないアレコレが湧きあがってしまう局面もあったりして。。。こんな裏事情はリスナーの皆さまにはまったく関係ありませんね!そのぐらいリアルな高音質だということでございます。

GREAT3は2003年に出した7thアルバム『Climax』で宣言こそしなかったものの活動を一旦休止。8年以上に渡る沈黙の季節がありました。そしてベーシストが新メンバーのjanに変わった新体制で2012年秋に9年ぶりとなった8thアルバム『GREAT3』をリリース。今回の『愛の関係』まで怒濤のように突っ走ってきました。

自分たちの中では、よりエッジの強いロックな側面を強調した前作『GREAT3』とメロウでサイケデリックな『愛の関係』は作風こそ違えど、どこか表裏一体、地続きな感覚が強い2作です。あまり間隔を空けることなく、一気に2枚を作りあげたということも大きいのですが、何より復活してjanを迎えた新生GREAT3としての新たなアイデンティティを確立するための2作品だったと言えると思います。

正直、長期間の休止を経ての復活、しかもメンバーチェンジもあったバンドが以前の活動を上回るような作品を創ることは至難の業だと思います。自分も期待と同じくらいの不安があり「ああ。。。どうしようもない作品作っちゃったね。。。」と皆に落胆されてバンドにピリオドを打つならそれもまた良し、このまま自然消滅でバンドを終わらせてしまうのだけは御免だと覚悟して挑んだ再始動でした。

しかし新メンバーjanが加入することによって、旧来のメンバーである僕と白根賢一と間の関係性にも想定外な化学反応が起きた結果、3人で新たな領域に辿り着けたのです。仕上がったこの2作品はもちろん以前のGREAT3からは変化しています。でもやはりGREAT3としか言い様のない、そして活動休止前のアルバムと比べても遜色ない誇るべき作品になったと自負しています。これは本当に稀有な、奇跡のようなケースだったと我が事ながら思うのです。

ちなみに前作『GREAT3』と新作『愛の関係』は色んな意味で真逆のアプローチをしたアルバムでもありました。『GREAT3』が白根賢一の自宅地下に新設されたプライベート・スタジオで録音された宅録的な要素も含むハードディスク・レコーディングであったのに対し、『愛の関係』は老舗の商業スタジオを借り、メンバー全員一発録り。しかも歌以外はアナログテープ24chへの録音でした。それは『愛の関係』レコーディング直前、2013年における僕らの指向でもありましたし、自分がデビューした頃に味わったアナログレコーディングの芳醇な音質や作法を23歳の若きjanに伝えたいと思ったことも大きいです。

いまの20代はYouTube世代。音楽に夢中になると同時に、様々な年代、国籍の音楽に無料でアクセスできた世代でもあります。彼らの中には僕らの若い頃以上に深く音楽を掘り下げているマニアも少なくありません。そんな連中に自分が思う本当の音をぶつけてみたいという欲求が僕にはありました。案の定janはレコーディング初日から、テープに録音された音の太さに文字通り目を丸くして驚嘆して「テープやばいっすね。」を連発。共同プロデューサー兼ギターで参加してくれた長田進さん、極上の鍵盤奏者である堀江博久と僕ら3人の一発録音がもたらす緊張感も楽しんでくれたようです。

もちろんこういったアナログ・レコーディングが懐古的なものであることは僕も否定しません。旧知の友人でGREAT3や僕のソロ、Chocolat & Akitoなども数多くミックスしてくれたTortoise、The Sea and CakeのJohn McEntire(ジョン・マッケンタイア)とも先日ディスカッションしたのですが、彼は最近、長年愛用していたAmpexやStuderなどのテープマシンをすべて手放しました。そして「いまの自分はアナログテープを使わなくても求めるサウンドを創れる自信がある」と話してくれました。もちろん僕も彼のその言葉に同意するのですが、同時にそれは彼が本物のアナログサウンドを熟知しているからこその発言だとも思うのです。

例えばFender RhodesやWurlitzerといったエレクトリック・ピアノの音色などもソフト音源では良く使っているものの、実機の音を一度も聴いたことがないという若いミュージシャンも少なくありません。プロデュースなどの現場でそういった実機を持ち込むと、その豊かな音色に皆一様に驚きの声を上げ夢中になります。もちろん本物の音なんて必要ないよ!むしろソフト音源のほうが好きだね!というのならそれはそれでOK。音楽に正解も間違いもありません。ただ伝統的な音色や本物のアナログの音を知るという体験は、音楽を志す者にとって決して無駄にはならないことであり、その音を知ることで辿り着ける新たな地平があると僕は思うのです。

自分には信じる、愛する音があります。そしてその音の多くはアナログ・レコーディングやヴィンテージ楽器によって生み出されてきたものです。これからも自分の感性を頼りに、最新機材でのレコーディング現場でも、この耳を、良心を満足させる作品を創り続けて行きたいと思います。

『愛の関係』は自分にとって、音楽の魅力、魔力を存分に詰め込んだ作品。派手さこそないけれど、長く、ディープに愛聴できるアルバムになってくれると思います。その旨味はハイレゾで聴くとさらに堪能できるはず。この音こそ僕らがスタジオでOKを出した音だと言っても過言ではありません。ぜひ一人でも多くの人とこの体験を共有できますように!

『愛の関係』(96kHz/24bit)
/GREAT3




片寄明人 プロフィール

1968年5月23日 B型 東京都出身
1990年、ロッテンハッツ(片寄明人、木暮晋也、高桑圭、白根賢一、真城めぐみ、中森泰弘 )結成、 3枚のアルバムを残し、94年に解散。
1995年、GREAT3のボーカル&ギターとしてデビュー。
現在までに9枚のアルバムをリリース。高い音楽性と個性で、日本のミュージックシーンに 確固たる地位を築いている。最新作は2014年リリース「愛の関係」(ユニバーサル-EMI)。
2000年には単身渡米。Tortoise、The Sea & Cake、Wilcoのメンバーらと、 初のソロアルバム "Hey Mister Girl!"を制作。
2005年、妻のショコラとChocolat & Akito結成。
現在までに3枚のアルバムをリリース。最新作は「Duet」(Rallye Label) 。
明と暗、清濁併せ呑んだ詞世界を美しい旋律で綴り、一糸乱れぬハーモニーで歌うライブは必見。
近年は新進気鋭のプロデューサーとしても活躍。
Czecho No Republic、フジファブリック、SISTER JET、GO!GO!7188、メレンゲ、などを手がけている。
また作詞作曲、CMナレーション、DJ、各種選曲、ラジオDJなどの活動でも活躍中。

◆GREAT3 オフィシャルサイト



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「ハイレゾ・コラム」 ではTEAC製USBデュアルモノーラル・D/Aコンバーター「UD-501」を使用してハイレゾ音源の視聴を行っています。