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【5月1日更新】 ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music

2018/05/01
衛星デジタル音楽放送ミュージックバードで、2017年1月にスタートした番組「ハイレゾ・クラシック by e-onkyo music」と連動したコラム。音にこだわるオーディオ・ファン、ハイレゾに初トライしてみたいクラシック・ファンのために、「ハイレゾ女子」として活躍する音楽ライター・原典子が、e-onkyo musicから選りすぐりのタイトルをご紹介します。 文◎原典子
5月のテーマ:子供と音楽

 5月5日の「子供の日」にちなんで、5月は「子供と音楽」をテーマにお届けする。子供の愛らしさと独創性、そして親が子を思う心は今も昔も同じ。子供という存在はクラシックの作曲家たちにインスピレーションを与え、多くの作品が生み出されてきた。

◆子供を描いた大人向けの音楽

 「子供に関するクラシック音楽」といえば、シューマンの『子供の情景』がなんといっても有名だ。婚約者クララとの手紙のやり取りの中で、「あなたはときどき子供のよう」と言われたシューマンは、その言葉の余韻に浸りながらこの曲集を作曲したという。つまりこれは、子供が弾くためのピアノ曲集ではなく、あくまで子供の心を持った「大人のための音楽」。ときに難解に感じられるシューマンの夢想に満ちた詩的な世界も、子供というフィルターを通すことで、よりシンプルに美しさが伝わってくる。

 『子供の情景』と並んで有名なのが、ドビュッシーの『子供の領分』。2番目の妻との間に生まれた娘クロード=エマ(愛称シュシュ)に捧げられた曲集だが、これもまた子供が弾くためのピアノ曲集ではない。第1曲「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」はクレメンティの練習曲に取り組む幼い娘の姿をユーモラスに表現したものだが、そのように「大人から見た子供の世界」が生き生きと描かれている。

 それから、モンポウにも『子供の情景』という名のピアノ曲集があるのをご存じだろうか。フランスの音楽評論家エミール・ヴュイエルモーズは、この曲をもってモンポウを「ドビュッシーの後継者」として高く評価したそうだが、独特の静謐さをたたえた空気の中、無邪気に遊ぶ子供たちのシルエットが夢の中の光景のように浮かび上がってくる。

◆子供に贈れらた音楽

 一方で、子供の練習用に書かれたピアノ曲集が、シューマンによる『子供のためのアルバム』。長女マリーの誕生日の贈り物として書かれた作品に、あとから次々と曲を加えて一冊の曲集にまとめたもので、曲ごとに楽しげな標題がつけられている。一見やさしい小品の中に、シューマンの高度な音楽性と父親としての愛を感じる作品である。

 この『子供のためのアルバム』に影響を受けて、チャイコフスキーも甥のダビドフのために『子供のアルバム』というピアノ曲集を書いている。当時7歳だったダビドフでも弾ける程度の難易度で、ロシアの民謡や舞踏曲、イタリア、ドイツ、フランスの歌など24曲からなる。

 子供の練習用に書かれたものに限らず、作曲家が子供にプレゼントした作品からは、ほかの作品では見えない「横顔」が垣間見えるように思う。フォーレによるピアノ連弾のための組曲『ドリー』もしかり。ドリーとは、作曲当時フォーレが親しくしていたエンマ・バルダックの幼い娘エレーヌの愛称であり、この曲集は彼女の誕生日を祝って毎年1曲ずつ書き上げられていった。放送では管弦楽版に編曲された演奏をお聴きいただくが、幼い少女の愛らしさにメロメロになっているフォーレの笑顔が目に浮かぶようだ。
 ちなみにエンマ・バルダックとは、のちのドビュッシー夫人。ドビュッシーと彼女の間の娘シュシュのために『子供の領分』が書かれたというのだから、不思議な因縁を感じずにはいられない。

 ほかにも放送では、「子供」をテーマに書かれたファンタジーに満ちた音楽をたくさん紹介しているので、ぜひお楽しみいただきたい。


<子供の情景>

『シューマン:子供の情景、アベッグ変奏曲、幻想曲』
リーズ・ドゥ・ラ・サール
録音:2013年/Naive





『ドビュッシー:ピアノ作品全集 Vol.3 (「子供の領分」他)』
ジャン=エフラム・バヴゼ(P)
録音:CHANDOS





『ヴォロドス・プレイズ・モンポウ (「子供の情景」他)』アルカディ・ヴォロドス(P)
録音:2012年/SONYbr>




<作曲家からの贈り物>

『シューマン:子供のためのアルバム』レオノラ・アルメリーニ(P)
録音:2013年/ACOUSENCE Classics





『フォーレ: 作品集 (「ドリー」他)』リュドヴィク・モルロー指揮シアトル交響楽団 他)
録音:2013年/Seattle Symphony Media





『チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、ピアノ小品集 (「子供のアルバム」より 他)』金子三勇士(P)小林研一郎指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2013年/エクストン




<ピアノの宝石箱>

『Piano』チョン・ミョンフン(P)
録音:2013年/ECM





『めぐる季節と散らし書き 子どもの音楽』高橋悠治
録音:2017年/マイスターミュージック





『Melody's Mostly Musical Day』ジェニー・リン(P)
録音:Steinway & Sons




<オーケストラの魔法>

『ラヴェル:歌劇《子供と魔法》』小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ
録音:2013年/DECCA





『エルガー: 子供の魔法の杖、組曲「子供部屋」』ジェイムス・ジャッド指揮ニュージーランド交響楽団
録音:2002年/ナクソス





『ピーターと狼&動物の謝肉祭』ヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団、アレクサンダー・アームストロング(NA)
録音:2007年/ワーナー




<子供の世界>

『ビゼー:交響曲「ローマ」、葬送行進曲、序曲「祖国」、小組曲』ジャン=リュック・タンゴー指揮アイルランド国立交響楽団
録音:2014年/ナクソス





『ハイドン: チェロ協奏曲、子供の交響曲』エンリコ・ディンド(Vc)イ・ソリスティ・ディ・パヴィア
録音:ユニバーサル




<若者とオーケストラ>

『ヒナステラ:協奏的変奏曲、ブリテン:青少年のための管弦楽入門』アンタル・ドラティ指揮ミネアポリス交響楽団
録音:マーキュリー





『ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、序曲』グスターボ・ドゥダメル指揮シモン・ボリバル交響楽団
録音:2012年/D.G.





『ホルスト:組曲「惑星」、R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき』エドワード・ガードナー指揮イギリス国立青少年管弦楽団、バーミンガム市交響ユース合唱団
録音:2016年/CHANDOS









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出演者:原典子(はら・のりこ) 音楽に関する雑誌や本の編集者・ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、現在はフリーランス。『intoxicate』『CDジャーナル』など音楽雑誌への執筆のほか、坂本龍一監修の音楽全集『commmons: schola』の編集を担当。鎌倉で子育てをしながら、「レゾナンス<鎌倉のひびき>コンサートシリーズ」の企画にも携わる。
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