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【スペシャル・インタヴュー】 石川綾子『ジャンルレス THE BEST コンサートツアー』

2018/04/25
ジャンルレスな演奏活動で、動画投稿サイトでも圧倒的な人気を誇るバイオリニスト・石川綾子が、昨年11月に第一生命ホールで開催されたコンサート『ジャンルレス THE BEST コンサートツアー』のハイレゾ音源をリリース。ソールドアウトのプレミアム公演となった同コンサートの臨場感あふれる作品を、スペシャル・インタヴューと共にお楽しみください。


『ジャンルレス THE BEST コンサートツアー』
/石川綾子





◆石川綾子 スペシャル・インタヴュー

――今回の「ジャンルレスTHE BEST コンサートツアー」ハイレゾアルバムは、昨年11月18日に行われた、第一生命ホールでのコンサートのライブアルバムですが、どんなコンサートでしたか。

石川:こちらのコンサートは、石川綾子初のベストアルバムの発売記念コンサートとして、開催させていただきました。第一生命ホールという、本当に素晴らしい音響のクラシック専用ホールで演奏させていただいたので、とても気合いが入ったコンサートとなっています!ベストアルバムということで、今まで私が演奏させていただいた曲、いろいろなジャンルの曲がぎゅっと詰まったコンサートとなっていますので、このアルバムを聞いたら、今までの石川綾子すべてが分かる1枚になっています。

――実際、会場での演奏はどうでしたか。

石川:会場で演奏させていただく時、正直に言いますと、いつものコンサートでの演奏の仕方とともに、収録もとても意識して、演奏をさせていただきました。今回はハイレゾでの録音で、私もバンドメンバーもみんな、細かいところまですべて録音をしていただくことになるので、大きなフレーズや遠くへ飛ばす音の響きとともに、耳元で聞こえている細かな音まで集中して、一音一音大切に演奏させていただきました。

――緊張しましたか。

石川:はい。やはり、目の前にいるお客様お一人お一人に楽しんでいただきたいという気持ちとともに、この音がこれから先も、5年後、10年後、20年後ずっとずっと、私たちの作品として残っていくことに対して、とても緊張感を持って挑ませていただきました。この作品を実際に聞いて、そのときの緊張感も伝わり、すごく自信を持って世に出せるいい作品になったと、嬉しく思っています。

――今回、同時に映像の収録も行われていたと思います。音と映像と、どちらを意識してやっていましたか。

石川:もちろん映像の方も意識はしておりましたが、でもやはり音がその100倍です!映像は、途中からあまり意識しなくなっていました。やはり音を、とにかくヴァイオリンのいい音を、近くで聞いても遠くでもいい音を届けたい一心で、演奏させていただきました。

――石川綾子さんのコンサートは、普通のクラシックアーティストのコンサートとは違って、照明も演出も非常に面白い、豊かな演出をされています。いつもどういう想いでやっているのですか。

石川:「あなたを眠らせないヴァイオリンコンサート」、これを私の生涯の目標として、コンサートに取り組ませていただいています。私が子供の頃に、よく家族で音楽会に聞きに行っていたのですが、観客席をふと見渡したら、居眠りをされている方々がちらほらいらっしゃいました。それを見て、子供ながらに「ああ、大きくなったら、眠くならないような楽しいコンサートを開催したい…!」と思うようになったのが、この目標のきっかけでした。それを常に心の中に置いて、「どのようにしたらお客様がはっとするような、心から楽しんでいただけるようなコンサートができるかな」ということを考えて、取り組ませていただいております。ですので、演奏方法一つ取っても、また曲目、曲の並びや演出、照明、すべてに於いて、いかにお客様に楽しんでいただけるかということに、命を懸けて取り組ませていただいています!

――では選曲についてお伺いします。まさにジャンルレス、さまざまなジャンルの選曲をされていますね。これは、どういう理由で、今まで曲を選ばれてきたのですか。

石川:最初の理由は、一人でも多くの方に、私の大好きなヴァイオリンの音色を聞いていただきたいと思ったので、クラシック以外の曲も演奏させていただくようになりました。きっかけは、オーストラリアのシドニーに長い間住んでいたのですが、現地の方々に「Ayako、日本人だったら、ぜひ日本のジブリの曲やアニメの曲などを演奏してほしい」とリクエストをいただくようになったことです。それを聞いて、クラシック以外の曲も、ヴァイオリンで聴きたいと思ってくださることを知り、嬉しくなり、演奏させていただきました。日本に来てからは、ニコニコ動画と出会い、そこでまた新たにボーカロイドの曲やJ-POPの曲など、違うジャンルの曲もたくさん演奏させていただくようになって、今はジャンルレスな曲を演奏させていただいています。 もともとは、一人でも多くの方にヴァイオリンの音色を聞いていただきたいという気持ちで始めたことだったのですが、今は私自身が、いろんなジャンルの曲を大好きなヴァイオリンで弾くことが、楽しくて楽しくてしょうがないから続けているように感じています。それがやめられなくて、ジャンルレスの活動をさせていただいています。そして、「ヴァイオリン=クラシック」という概念をなくせるように、また「ヴァイオリンでも、アニメの曲やゲームの曲を表現できるんだな」ということを、私が楽しんでいるように、お客様にも一緒に楽しんでいただきたいという気持ちで、コンサートではジャンルレスなプログラムでお送りさせていただいています。



――例えば、ボーカルの曲、インストロメンタルや映画音楽、そして昔からの古典クラシック曲と、さまざまなタイプを弾き分けていますけれども、それぞれの解釈や演奏方法などは、変えているのですか。

石川:そうですね。すごく変えて取り組ませていただいていました。やはりクラシックの曲は、本当に弾き続けないと、それこそ毎日毎日気がおかしくなるぐらい弾き続けなくてはマスターできない曲が多いです。この中に収録させていただいています「夏」も、もう1年、2年どころではなく、何年も何年も演奏させていただいていますが、いまだにもっともっと、もっといい演奏ができるのではないかと追い求めています。クラシックは、歴史が長い分、理解したり、弾きこなすのに、本当に時間をかけなくてはいけないという気持ちを持って、演奏させていただいています。ポップスやアニメの曲に関しては、流行やその時代で求められているものがあったりするので、その曲をいかに早くYou Tubeなどにアップさせていただくかを意識して取り組んできました。
 ところが、実は今、少しずつまた考えが変わってきています。いつの間にか、どの曲も同じような取り組み方をしているなと、最近は思っています。クラシックの曲を演奏する時、その作曲家が、どの時代にどんな気持ちでその曲を書いたのか、このフレーズはどういうフレーズでどこに向かっているのかなどと楽譜を分析してから演奏させていただいていますが、今では、アニメの曲、ポップスの曲、他のジャンルにおいても、同じように調べ物と分析から始めます。アニメの曲だとしたら、どのアニメで、どのシーンで使われて、どんな気持ちを込められた曲で…、ということだけではなく、そのシーンを見た視聴者はどういう気持ちになるのか、視聴者はこの音楽にどういう感情を乗せて、私の演奏を聞いてくださっているのかというリスナーの感情も大切にしています。そのうえで、楽譜はないので、自分で楽譜を書き起こして、その書き起こした楽譜をアナライズしています。なので、いろんなジャンルを、もちろん解釈のしかたは全部違うかもしれないのですが、同じように、1曲1曲大切に時間をかけて、取り組ませていただいています。

――「石川綾子さんの演奏は、歌っているようだ」または「歌詞が聞こえる」などという感想をおっしゃる方が多いのですね。

石川:そういうご感想をいただけてとても嬉しいです!実際…、歌っています(笑)。今回収録させていただいている中に「糸」という曲があるのですが、この曲も、もう心で歌いながら演奏させていただいています。やはり歌詞がない分、歌詞を心からかみしめながら演奏しています。お客様は本当に素晴らしくて、私がかみしめているかかみしめていないかが、瞬時に分かっていると思います。お客様はすべてお見通しなんです。音楽を通して、心で通じ合っているので、何も隠せないです。もうすべてを、自分の持っているものすべてをさらけ出さないと、心に届く演奏はできないと思っています。

――今回のアルバムには2曲、石川綾子さん作曲の曲が入っています。『誓い』、『PASSION』、それぞれの思いを聞かせてください。

石川:まず、今回『誓い』という曲を、ベストアルバムに収録させていただけたのは、すごく私は嬉しくて、自分の中でも大きな意味がある作品です。私がすごく落ち込んでいたときに、ファンの方々が励ましてくださいました。ファンの方々は、すべて分かるんですよね。言葉にしなくても、気づいてくださるんですよね…。(言葉を詰まらせながら)ファンの方々が「無理しなくていいんだよ」、「無理して明るくしなくていいんだよ」と言ってくださった言葉が、すごく心に響きました。その言葉を基に、この曲を作曲させていただきました。ですので、そのときの私の気持ちがすべて詰まった曲となっています。「寂しくてもつらくても、それが絶対強さに変わるから」、そのときの自分の誓いを込めて書かせていただいた曲が、この『誓い』という曲です。
 そして、もう1曲は『PASSION』という曲です。こちらの作品も本当に思い入れがあります。実は、もともとは「PASSION」というコンサート(2012年)に向けて作曲をさせていただいた曲でした。このコンサートから、本当にいろんなことが始まったなと、今振り返って思っています。いまは自分自身の分身のような曲に感じています。私の音楽に対する、ヴァイオリンに対する情熱をたっぷりと注ぎ込んだ曲が、この『PASSION』です。毎回毎回違う『PASSION』の演奏をさせていただいています。今回のBESTコンサートでも、この日しかできない『PASSION』の演奏をさせていただいたので、これが収録できて、とてもよかったなと思っています。

――アンコールで「チャルダッシュ」が入っていますが、このときの第一生命ホールでは(石川綾子公演では名物の)タオル回しをホールの都合上されなかったのですよね。

石川:そうですね。今回の第一生命ホールではタオル回しはしませんでしたが、タオル回しのないチャルダッシュももちろん好きです。また、お客様の方から、手拍子を自然にしてくださって、それはとても嬉しかったです。「チャルダッシュ」は、クラシックの名曲中の名曲ですが、私のコンサートでは、「チャルダッシュ」は、もちろんじっくり聞いてくださることもありますが、手拍子をしてくださったり、タオル回しをしてくださったりと、クラシックの曲でもお客様と一体となって楽しめる、大好きな曲です。

――これは音源では分かりませんが、実はメンバーが立って演奏されていたのですよね。

石川:そうなんです!メンバーのみんなとも一緒に、楽しく演奏したかったので、途中から最後のどんどん速くなるところで、メンバーに立っていただきました。メンバーは、演奏も素晴らしいうえ、ノリも素晴らしくて、そういう演出も一つ一つ協力してくださって、一緒に楽しいコンサートを作り上げることができて、すごく感謝しています。

――今回の編成について、お伺いしたいと思います。ピアノ、ストリングスカルテット、さらにパーカッションが入っていました。クラシックホールで(ドラム的な)パーカッションは、なかなか珍しい編成かと思うのですけれども、どういう理由でこういう編成になったのですか。

石川:そうですね、今回の曲目が、ずばりジャンルレスということで、この楽器編成でしたら不可能なものはない、弾けないものはないと思いました。ピアノとヴァイオリンだけで、いつものリサイタル形式のクラシックリサイタルの曲を弾ければ、そこにカルテットが加わることでオーケストラを表現できて、またパーカッションが加わることでバンドの曲も表現できるという、無敵な楽器の編成でお送りすることができました。これも、クラシックホールでジャンルレスにつながることができた要素の一つとなっています。



――つぎに、ハイレゾレコーディングについて、お伺いします。実は、ハイレゾのライブレコーディングは、今回で2度めですよね。

石川:はい!

――2014年11月に「THE Hi-Res CLASSIC CONCERT」が、銀座のヤマハホールで収録されています。前回同様、今回も192kHz/24bitと、非常に最高音質で収録していますがこの辺りのこだわりは?

石川: CDアルバムとなると、やはりどうしてもマスタリングルームで私たちが最終的に聞いた音と違う音質で、CDにきゅっと圧縮されて届けられます。しかし、ハイレゾになると、私たちが作り上げた音が、そのままお客様の手元に届けられることができるので、作品を作る身としては、これほど嬉しいことはありません。
 しかし、今回は普通のスタジオ収録ではなく、あくまでもライブ収録なので、私としては、こんな小さな音まで全部拾ってくれて、恥ずかしいと思うこともあるのですが(笑)、そのライブ感、臨場感を、音として楽しんでもらえたら、嬉しく思います!

――今回のレコーディングエンジニア、ミキサーエンジニアは、以前「パガニーニの24の奇想曲」を手がけた木村正和さんが担当しています。彼との仕事はどうでしたか。

石川:とても信頼している木村さんに、今回レコーディングからミックスまでやっていただいて、もう終始リラックスして音作りができました。ライブの翌日ぐらいに、木村さんが「仮ミックスしました」と送ってきてくださった最初の仮の音源が、既にすごくよかったので、私自身、作品が楽しみでしょうがありませんでした!

――さらに、今回のマスタリングエンジニアは、「ジャンルレス THE BEST」のアルバムもマスタリングした小柳玲奈さんですが、いかがでしたか。

石川:小柳さんは、神だと思っています(笑)。もう本当に素晴らしい方です。今回の音も今までの音も、「ああ、こういう音が欲しかった」という、最高の音を仕上げてくださいます。今回も、小柳さんにやっていただけて、すごく光栄に思っています。

――最後に、ぜひ聞いてほしいポイントがありましたら、お願いします。

石川:今回のこちらの配信アルバムを聞いていただけたら、私のコンサートに今までお越しいただいていない方でも、実際にコンサートをリアルに味わうことができるアルバムとなっています。一つ一つの演奏方法だけではなく、息遣いやバンドメンバーの足でのリズムの取り方、ピアノの鍵盤を触る音まで、すべてが集音されております。ぜひ、この音、私たちのリアルな演奏を、お家で楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。

――そして、この映像作品が5月16日にBlu-ray、そしてDVDも発売されますね。

石川:今回はBlu-rayで、画質もとてもきれいで、音もハイレゾ録音で、恥ずかしいくらい何も包み隠せない内容となっております(笑)。そんなリアルな映像と音を、皆様にお届けできるこの機会に、とても感謝しています。 この中で一番聞いていただけたら嬉しいなと思った曲が、「ひまわり - Loss of Love -」という曲です。この曲は、私のどのCDアルバムにも収録していない曲です。この曲をコンサートで弾くたびに、私自身も非常に感情的になってしまいます。今回のベストアルバムのコンサートで演奏したときも、もうこのメロディーに泣きそうになりながら演奏させていただきました。Blu-rayで見たときも、ハイレゾの音源で聞いたときも、もう聞いているだけで、私もそのときの感情がよみがえって、何と言いますか、胸が熱くなってしまいます…。ぜひ、どのアルバムにもまだ収録されていないこの曲を聞いてもらえたら、嬉しいなと思います。

――ありがとうございました。

石川:ありがとうございました!





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