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こだわり抜かれた音色が光る『うたわれるもの Piano Collection Vol.1』レコーディング・リポート!

2018/04/25
高音質なアニメ/ゲーム音楽のレーベルといえば、間違いなくその筆頭にあがるのがF.I.X.レコード。
今回特別に『うたわれるもの Piano Collection Vol.1』のレコーディング取材ができた。あまり表に公開されることのない、レアなレコーディング現場の様子をお届けしたい。

写真・テキスト:e-onkyo music


『うたわれるもの Piano Collection Vol.1』AQUAPLUS


<国内有数の高音質レーベルとアナログ的な温かみ>
ハイレゾという言葉がここまで世間的な認知を得る以前からSuper Audio CDでの定期的なリリースを行うなど、音楽的な内容だけでなく音質にも強くこだわり続けてきたF.I.X. レコード。単純なスペックの高さではなく、これまでもアナログハーフインチでのトラックダウンやDSDマスタリングを採用する等、その“音へのこだわり”はアニメ/ゲーム音楽の枠では到底語る事ができないものがある。

今回取材にお邪魔したのは、二子玉川に位置するStudio Sound DALI。ヴィンテージ機材を多数所有するアナログライクなサウンドが持ち味でe-onkyo musicのリスナーには馴染み感のあるスタジオかもしれない。ここで『うたわれるもの Piano Collection Vol.1』のレコーディングが行われた。

「調律師の橋本尚之氏(右)と音色をチェックするピアニストの千葉岳洋氏(左)

弦の上を複数のマイクが狙う。右端にはアンビエントマイクも見える。

まず印象的だったのは、イコライジングやプラグインで音色を作るのではなくあくまでその場の録り音を追い込んでいくという姿勢。メインブースに設置されたピアノYAMAHACF IIには複数のオンマイクと少し距離を置いてアンビエントマイクが置かれ、隣接したエコールームの扉を開け放って響きを調整していた。開放感のある響きの中で、千葉氏の指から心地よい音が紡ぎ出される。

サウンドチェック中の千葉氏。中央奥に見えるのが響きを作るエコールーム。


コントロールルームに鎮座するのは英国製ミキサーコンソールの名作NEVE V1(48ch)。ミキシングエンジニアの橋本まさし氏により192kHz/32bitに設定されたPro Toolsにてレコーディングされていく。プラグイン類は使用しておらず。全ての音はマイクやプリアンプ、その他のアウトボード機材とミキサーコンソールから創り出される。Pro Tools上のCH数もわずか4トラック。DAWを使用した現代的なレコーディングではあるが、その方法論は非常に贅沢でアナログ的なものである。このスタジオならではの音が、次々に録音されていく。

名機NEVE V1(48ch)(左)

エンジニアの橋本まさし氏(右)と千葉氏(左)

<ピアノで紡がれる「うたわれるもの」の音絵巻>
入念なサウンドチェックとテスト録音が終わり、いよいよレコーディングのスタート。あくまでピアノソロなので、事前にニュアンスや展開について大まかな打ち合わせをしたのち、パンチイン無しのワンテイクで演奏を繰り返していく。
今回レコーディングされる、アニメ/ゲーム「うたわれるもの」の楽曲達は、当然ピアノソロのために作られたものではない。物理的な制約を踏まえた上で、オリジナルの楽曲とコード・メロディが書かれた譜面からその都度音を取捨選択していく。東大卒で元相撲部という異色の経歴を持つ新進気鋭のピアニスト千葉岳洋氏が紡ぐ音のカーテンは、原曲とは違った表情と奥行きを巧みに表現していく。いつまでも聴いていたくなる、心地よい音と緊張感がスタジオに満ちていた。




<ハイレゾでこそ楽しんでほしいこの空気感>
ハイレゾの利点は単純なスペックの大きさではなく、「この音をこのままに」利き手の元へ届けられるということ。CDという器に収めるためには当然44.1kHz/16bitにダウンサイジングされるが、ハイレゾはこの場所で鳴っていた音をそのまま手に入れられる。今作ではPro Toolsで録音された音はアナログハーフインチを通してトラックダウンされ、その後マスタリング工程を経ることとなる。並々ならないこだわりを持って制作された『うたわれるもの Piano Collection Vol.1』にじっくり耳を傾ければ、CDとは違った音色の機微が感じられるのではないだろうか。

プロデューサーの下川氏(右)を交え、譜面を確認しつつニュアンスを話し合う一同