PC SP

ゲストさん

NEWS

GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」 第17回 David Robert

2018/04/13
95年のデビュー以来、普遍と革新を併せ持ったサウンドで、ミュージックシーンのみならず、カルチャーシーンからも大きな支持を得てきたバンド=GREAT3。その中心人物であり、業界屈指の音楽マニア、そしてアナログ・コレクターとして知られる片寄明人をセレクターに迎えe-onkyo musicの豊富なカタログの中より片寄明人が面白いと思う作品をランダムにご紹介するハイレゾ・コラムです。

Sponsored by TEAC
連載 GREAT3片寄明人の「ハイレゾ・コラム」第17回
David Robert『All Dressed Up』



『All Dressed Up』
/David Roberts



みなさまご無沙汰しております。GREAT3の片寄明人です。

実に2年ぶりの更新となってしまいましたが、久々の復活です。これまで1枚のアルバムやアーティストをわりとディープに掘り下げてきたこのコラムでしたが、これからはちょっと肩の力を抜いて、その時々におすすめのアルバムをランダムに紹介していこうと思っています。そのぶん更新ペースも上げられるはず!?でも深く掘り下げたい盤に出逢ったときはまたディープにも攻めますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

さて、厳しい寒さが続いた冬もようやく過ぎ、春の気配ただようこの季節。暖かな太陽を求める心が聴きたくなる音楽ジャンルといえば、AORでございます。パンク〜ニューウェーヴ世代に育ったモッズ少年として10代を過ごした自分でしたが、仲間に隠れてこっそり聴いていたのが、ボビー・コールドウェルやポール・デイヴィス、プレイヤーといったAORでした。

なんといいますか、過剰なセンチメンタリズムあふれるその世界は、思春期の自分にとって、バイオレントな感情と同じくらい心揺さぶられるものだったんですね。そんなわけでハードコアとAORを一緒に聴くような少年時代を過ごしたのですが、当然ながらそんな複雑な感情が周囲に理解されることもなく。自分の音楽がオルタナティヴ・ロックとAORとサイケデリックがぐちゃぐちゃに混ざった分裂症的な音=GREAT3となってしまったのも、こんな己の音楽性癖ゆえなんでしょうね。

無駄話はさておき、本題へ行きましょう。AORはいまひとつ名盤のハイレゾ化が進んでいないジャンルのひとつかもしれません。e-onkyoのカタログをチェックしても、その数は限られています。でもそんな中に「なぜにこのアルバムが!」と驚かされるタイトルを発見しました。David Robertsのデビュー作「All Dressed Up」がそれです。

この作品がリリースされたのは1982年というAOR黄金時代。デヴィッド・ロバーツはカナダのシンガーソングライターで、当初は同郷のプロデューサー、デヴィッド・フォスターにプロデュースを頼むも多忙のため叶わず、最終的にはローラ・ブラニガンなどでヒットを飛ばしていたグレッグ・マティソンがプロデュースを担当。セッションにはデヴィッド・フォスターやジェイ・グレイドン、TOTOのメンバーやビル・チャンプリンといったAORスターたちが集結してこの名盤を作りあげました。しかし残念ながら大ヒットとはならず、デヴィッド・ロバーツはこの後、セカンド・アルバムを出すまで26年ものブランクを空けてしまうことになります。

美メロ派から、ハード・ポップ派まで、あらゆるAORファンを満足させるこのアルバムですが、とことん美しい旋律と胸がキュンとするせつなさを求める僕にとってのキラー・チューンといえば、クリストファー・クロスを彷彿とさせる透明感と、淡々とした哀愁がたまらないM4「Boys of Autumn」。極私的AOR名曲ベスト10には必ず入れたいナンバーです。ぜひご試聴ください。

続くお気に入りはM9「Never Gonna Let You Go」、サビのスウェイなリズムも最高、まさに踊りながら泣けるサッド・ダンサーAORの極みです。さらに、サビでフワッと宙に浮くような快感を与えてくれる高貴な旋律が堪能できるバラードM7「Midnight Rendezvous」、そして青空へ突き抜けるようなメロディーに思わず笑みがこぼれるポジティヴAORにして、ダイアナ・ロスもカヴァーしたM8「Anywhere You Run To」も忘れ難い名曲です。

配信の世界には廃盤がないような気がしてしまいますが、ある日突然、契約の関係でカタログから消える…なんてことも少なくありません(プリンスの80’sハイレゾ作品などもそうでしたね)。大好きなハイレゾ名盤は見かけたときに逃さず購入しておきたいものです。

次回に続く




【バックナンバー】
<第16回>「Elvis Costello (後編)」
<第15回>「Elvis Costello (前編)」
<第14回>「James Taylor (後編)」
<第13回>「James Taylor (前編)」
<第12回>「The Beach Boys & Brian Wilson (後編)」
<第11回>「The Beach Boys & Brian Wilson (前編)」
<第10回>「特別対談 with jan」
<第9回>「Deodato (後編)」
<第8回>「Deodato (前編)」
<第7回>「The Velvet Underground(後編)」
<第6回>「The Velvet Underground(前編)」
<第5回>「The Who『四重人格』(後編)」
<第4回>「The Who『四重人格』(前編)」
<第3回>「チェット・ベイカー『枯葉』」
<第2回>「GREAT3『愛の関係』 」
<第1回>「はじめまして、GREAT3の片寄明人です。」




片寄明人 プロフィール

1968年5月23日 B型 東京都出身
1990年、ロッテンハッツ(片寄明人、木暮晋也、高桑圭、白根賢一、真城めぐみ、中森泰弘 )結成、 3枚のアルバムを残し、94年に解散。
1995年、GREAT3のボーカル&ギターとしてデビュー。
現在までに9枚のアルバムをリリース。高い音楽性と個性で、日本のミュージックシーンに 確固たる地位を築いている。最新作は2014年リリース「愛の関係」(ユニバーサル-EMI)。
2000年には単身渡米。Tortoise、The Sea & Cake、Wilcoのメンバーらと、 初のソロアルバム "Hey Mister Girl!"を制作。
2005年、妻のショコラとChocolat & Akito結成。
現在までに3枚のアルバムをリリース。最新作は「Duet」(Rallye Label) 。
明と暗、清濁併せ呑んだ詞世界を美しい旋律で綴り、一糸乱れぬハーモニーで歌うライブは必見。
近年は新進気鋭のプロデューサーとしても活躍。
Czecho No Republic、フジファブリック、SISTER JET、GO!GO!7188、メレンゲ、などを手がけている。
また作詞作曲、CMナレーション、DJ、各種選曲、ラジオDJなどの活動でも活躍中。

◆GREAT3 オフィシャルサイト


『愛の関係』/GREAT3





Sponsored by TEAC

「ハイレゾ・コラム」 ではTEAC製USBデュアルモノーラル・D/Aコンバーター「UD-503」を使用してハイレゾ音源の視聴を行っています。