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連載『厳選 太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』 第56回

2018/03/10
2013年から続くロングラン連載。根っからの音楽好きの筆者が、全てのプロモーションを排除し、“高音質なハイレゾ” をキーワードにお宝音源を探し続ける音源レビューの旅。実際に聴いて選び抜いた太鼓判ハイレゾ音源の数々は、バックナンバーにて全てチェック可能です。さて、今月はどんなハイレゾと出会うのでしょうか?
『大村憲司 ~ ヴェリィ・ベスト・ライヴ・トラックス』大村憲司
~ ライブの熱気と迫力を聴くなら、これだ! ~



● オーディオの羅針盤
先日、新型ケーブルの導入とオーディオアクセサリーの新活用法の発見で、私のハイレゾ再生システムは爆発的に音質向上しました。爆発的とはどういったレベルかというと、今までランク外だったハイレゾ音源が、軽々と太鼓判ゾーンへと飛び込んでくるくらいの破壊力。もちろん音質向上は感激極まりないのですが、連載締め切り前にアップグレードしてしまうと、それはそれで嬉しいような困ったような・・・。

システムの音質向上で太鼓判ボーダーラインが移動したとはいえ、自身の判断基準にブレが生じたのではありません。やはり従来の太鼓判ハイレゾ音源の数々を聴くと、それはもう別格のサウンドで輝いてくれるのですから。今までの選出基準が間違えてなかったと再確認し、一安心した出来事でした。

この突拍子もない音質向上こそ、オーディオの魅力だと思います。今まで音楽を聴いていた時間が無駄に思えるほど、音が良くなる瞬間。「時間を返せー」と嘆きながら、それ以上に「どれどれ、あの愛聴盤はどんな音で鳴るのだろう」と止まらぬワクワク。何ともオーディオの醍醐味です。

オーディオの音質向上には限界は無い。この仕事を始めて20年になりますが、「限界は無い。」と断言します。私も一時は「ここがゴールだ」、「もうこれ以上は無いから、引退しようか」と本気で考えたこともありましたが、その限界を超えるたびに大きく羽ばたける快感を経験してきました。音質向上の壁こそが、突き破るための殻なのだと、今では理解しています。

ところで、よく「オーディオ向上したら、録音の良し悪しがハッキリと分かるようになった」という評価があります。実はこれ、もう一息で殻が破れるときの前兆なのです。あと一歩、踏み出してください。なぜなら、録音の良し悪しをジャッジメントするために、私たちはオーディオを始めたのでしょうか? 否。大好きな音楽を、少しでも良い音で聴きたいがためのオーディオです。

真の進化とは、良し悪しを見極めるサウンドではなく、どんな音楽でも心に届くサウンドと言えるでしょう。実は、もう一歩踏み出したところに、その絶景は広がっています。磨き込んだと思っていたシステムが実はゴールではなく、殻の内側にたどり着いたというサインであるということ。あとは突き破るだけです!

オーディオの羅針盤は、好きな音楽が、良し悪しではなく、ご機嫌に楽しめるかどうか。自分のオーディオが現在どの位置を旅しているかを、愛する音楽がきちんと教えてくれるのって、なんとも素敵ではないですか。


● オーディオのタイムマシンに乗って、あの時代のライブハウスへGO!
聴いた瞬間、まるでライブハウスに飛び込んだような衝撃がありました。しかも、大好きなミュージシャンの笑顔が、汗が、生々しい追体験として熱く感じられる。これぞライブ録音の醍醐味であり、オーディオのタイムマシンとしての本領発揮です!


『大村憲司 ~ ヴェリィ・ベスト・ライヴ・トラックス』大村憲司
(96kHz/24bit)



80年代後半くらいから、スタジオ・ミュージシャンに強いスポットライトが当たり始めました。今までのフロント・アーティストへの賞賛だけでなく、従来は裏方であったバック・ミュージシャンへのリスペクトの波です。

私はその波に乗りまくった一人であり、いわゆるスタジオ・ミュージシャン系が主役の音楽が大好物。ライブハウスにも良く通いました。仲良くしていただいたミュージシャンの方の計らいで、リハーサルから見学させてもらえたのは、今の私の仕事にも大きく繋がっている財産です。

私は当時、大阪や名古屋に住んでいたので、比較的ライブ環境には恵まれていた方だと思います。ですが、東京のコンサート情報誌の分厚さを見た時には、気絶しそうなくらいショック。夜な夜な、大好きなミュージシャンがライブを繰り広げているではないですか。ツアーで演奏に来る地方と、ホームグラウンドの東京との格差を感じた瞬間でした。

そんな私の行けなかったステージが、今この目の前に広がる幸せ。今はもう、主役の大村憲司さんだけでなく、キーボードの佐藤博さん、ベースの青木智仁さんの演奏は、残念ながら生で聴くことはできません。ですが本作では、あの日そのままの演奏が聴ける! 20年前の演奏ですから、ドラムの村上“PONTA”秀一さん達の大御所チームも、そりゃもう活きがいいのなんのって。若さって素晴らしい!

聴きどころは、何と言っても生々しさ。おそらく、ライブハウスの記録用に走らせていたレコーディング・データが本作のマスターになっているのですから、音作りはライブミックス卓そのもののサウンド。下手に加工された音ではなく、私が聴きたかったのはコレですよコレ。ライブハウスのPAが、そのまま我が家にやってきた。そんな印象のサウンドです。

各曲の演奏場所や年代も様々ですから、ベスト盤ならではの、中には外れな音質もあるのではと想像していましたが、嬉しいことに全てがご機嫌。音楽から気を削がれるようなドロップアウト・ノイズもなく、安心してひとつのライブ・アルバムとして楽しめます。最高のミュージシャンが取っ替え引っ替えで演奏する、一夜限りのライブ。目を閉じて聴いていると、そう思える音たちです。

当時は96kHz/24bit録音が一般的ではなかったですから、この元ネタとなった音源は何でしょうね? 村上“PONTA”秀一さんは、インタビューで「たぶんDATで録ってるやつだと思う」と発言されていました。私もDATに一票。CD-Rという可能性、カセットテープという線も無きにしも非ずですが、ライブハウスの記録というなら、長時間録音のDATが一般的だと想像します。

DATは48kHz/16bitで2時間録れましたから、当時はライブの記録に良く使われていました。しかも、ちょっと音が良いんですよね、DATって。同じデジタル規格の音楽再生でありながら、CD盤には無い魅力がDATの再生音にはありました。

何がマスターになったにせよ、本作をハイレゾ化するには何らかのマスタリング作業が行われたはずです。DATと仮定するなら、48kHz/16bitを96kHz/24bit化したのですから、どうやってアップサンプリングしたのか気になります。

実は、その点に着目して、入念に本作の音質をチェックしました。私はアップサンプリングが音質的に大の苦手。音楽に変質を感じ、アップサンプリングの音に強い違和感を覚えます。ですが、本作を詳細に聴いても、全くアップサンプリングの気配を感じることができませんでした。つまり、実際に聴いても分からないのですから、本作のハイレゾ化の作業は大成功。アップサンプリング潔癖性で、過敏すぎるくらいの異常体質な私が聴いても、何の違和感も感じないのです。音楽好きの方なら、安心して楽しんでいただけると思います。

本作を聴きながら、ミュージシャン当てクイズを楽しんでいました。「ドラムは全部ポンタさんだな」とか、「このベースは青木さんで、こっちは高水健司さんのはず」とか、「このエレピは絶対に佐藤博さんだ」などなど。そうすると、全部の答えが特設ページに載っていました。ぜひ答え合わせしてみてください。
【NEWS】大村憲司 配信限定アルバム『ヴェリイ・ベスト・ライヴトラックス』配信!

久しぶりにテンションが上がったハイレゾ音源に出会いました。こんな重たいグルーブは昨今では滅多に出会えませんし、時には稲妻のようなプレイの数々もシビれます。80年代後半の輝きが詰め込まれた、とっても貴重な音源。私の太鼓判ハイレゾのコレクションに、また新しい輝きが加わりました!



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【バックナンバー】
<第1回>『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス』 ~アナログマスターの音が、いよいよ我が家にやってきた!~
<第2回>『アイシテルの言葉/中嶋ユキノwith向谷倶楽部』 ~レコーディングの時間的制約がもたらした鮮度の高いサウンド~
<第3回>『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(1986)』 NHK交響楽団, 朝比奈隆 ~ハイレゾのタイムマシーンに乗って、アナログマスターが記憶する音楽の旅へ~
<第4回>『<COLEZO!>麻丘 めぐみ』 麻丘 めぐみ ~2013年度 太鼓判ハイレゾ音源の大賞はこれだ!~
<第5回>『ハンガリアン・ラプソディー』 ガボール・ザボ ~CTIレーベルのハイレゾ音源は、宝の山~
<第6回> 『Crossover The World』神保 彰 ~44.1kHz/24bitもハイレゾだ!~
<第7回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー前編
<第8回>『そして太陽の光を』 笹川美和 ~アナログ一発録音&海外マスタリングによる心地よい質感~  スペシャル・インタビュー後編
<第9回>『MOVE』 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト ~圧倒的ダイナミクスで記録された音楽エネルギー~
<第10回>『機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック』 3作品 ~巨大モビルスーツを感じさせる、重厚ハイレゾサウンド~
<第12回>【前編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第13回>【後編】『LISTEN』 DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう ~DSD音源の最高音質作品がついに誕生~
<第14回>『ALFA MUSICレーベル』 ~ジャズのハイレゾなら、まずコレから。レーベルまるごと太鼓判!~
<第15回>『リー・リトナー・イン・リオ』 ~血沸き肉躍る、大御所たちの若き日のプレイ~
<第16回>『This Is Chris』ほか、一挙6タイトル ~音展イベントで鳴らした新選・太鼓判ハイレゾ音源~
<第17回>『yours ; Gift』 溝口肇 ~チェロが目の前に出現するような、リスナーとの絶妙な距離感~
<第18回>『天使のハープ』 西山まりえ ~音のひとつひとつが美しく磨き抜かれた匠の技に脱帽~
<第19回>『Groove Of Life』 神保彰 ~ロサンゼルス制作ハイレゾが再現する、神業ドラムのグルーヴ~
<第20回>『Carmen-Fantasie』 アンネ=ゾフィー・ムター ~女王ムターの妖艶なバイオリンの歌声に酔う~
<第21回>『アフロディジア』 マーカス・ミラー ~グルーヴと低音のチェックに最適な新リファレンス~
<第22回>『19 -Road to AMAZING WORLD-』 EXILE ~1dBを奥行再現に割いたマスタリングの成果~
<第23回>『マブイウタ』 宮良牧子 ~音楽の神様が微笑んだ、ミックスマスターそのものを聴く~
<第24回>『Nothin' but the Bass』櫻井哲夫 ~低音好き必聴!最小楽器編成が生む究極のリアル・ハイレゾ~
<第25回>『はじめてのやのあきこ』矢野顕子 ~名匠・吉野金次氏によるピアノ弾き語り一発録りをハイレゾで聴く!~
<第26回>『リスト/反田恭平』、『We Get Requests』ほか、一挙5タイトル ~イイ音のハイレゾ音源が、今月は大漁ですよ!~
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<第28回>『A Twist Of Rit/Lee Ritenour』 ~これを超えるハイレゾがあったら教えてほしい、超高音質音源!~
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<第52回>ピアノのライブを聴くなら、これだ!~ 強烈なグルーブと音楽エネルギーで、目の前にピアノが出現する ~/a>
<第53回>
『厳選! 太鼓判ハイレゾ音源ベストセレクション キングレコード ジャズ/フュージョン編』~ 試聴テストに最適なハイレゾ音源は、これだ! ~
<番外編>『厳選! 太鼓判ハイレゾ音源ベストセレクション キングレコード ジャズ/フュージョン編』を、イベントで実際に聴いてみた!
<第54回>最新ロサンゼルス録音ハイレゾを聴くなら、これだ! ~『22 South Bound』『23 West Bound』~
<第55回>『Franck, Poulenc & Strohl: Cello Sonatas』Edgar Moreau~ エドガー・モローのチェロに酔うなら、これだ! ~


筆者プロフィール:

西野 正和(にしの まさかず) 3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛するとっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。オーディオ・メーカー 株式会社レクスト代表。音楽制作にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。自身のハイレゾ音源作品に『低音 played by D&B feat.EV』がある。『厳選! 太鼓判ハイレゾ音源ベストセレクション キングレコード ジャズ/フュージョン編』をプロデュース。