フランツ・シューベルト〜19世紀ウィーンの風を感じて
e-onkyoブログ読者のみなさん こんにちは。e-onkyo music担当の黒沢です。
ゴールデンウィーク真っ最中、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。海外へ、なんて羨ましい方もいますが、そこまで頑張らずともヨーロッパの風情を楽しめるクラシック音楽イベントもあるんです!世界中から集まった演奏家があちこちの会場で演奏し、それをはしごしながら聴いてまわる、なんとも贅沢なこの音楽イベントは東京国際フォーラムをはじめ、丸の内エリアで4月29日から5月6日まで開催されています。毎年100万人を超える観客を動員するこの巨大音楽イベント、今年は19世紀初頭に活躍したシューベルトの音楽に焦点をあてたプログラム。1日中クラシックの生演奏を楽しんだ後は、丸の内エリアで美味しいワインに夜の散策、なんていうのも良いですね!
今回は素晴らしい陽気に恵まれたこのGWにじっくりと楽しみたい、シューベルトの音楽を取り上げてみたいと思います。
ご紹介の音楽祭で演奏される曲目はナクソスミュージックライブラリーの特設ページで全曲を試聴することが出来ます。
1797年1月31日にウィーン北郊ヒンメルプフォルトグルントに生まれたシューベルト。31才で生涯を終えるまでに数多くの歌曲を残し、「歌曲王」と呼ばれることもあります。無名の詩人の作品からゲーテのような有名な詩人の作品まで題材として取り上げ、素晴らしい歌曲に仕上げています。
■宮本益光(バリトン)/シューベルトの子守唄(トラック18)
まず「子守唄」。作詞者の名は知られていませんが、日本人の我々にも、その旋律に国境を超えた「懐かしさ」を感じさせる1曲です。
■アンジェラ・ゲオルギュー(ソプラノ)/シューベルトのアヴェ・マリア(トラック14)
「アヴェ・マリア」は多くの作曲家の作品がありますが、シューベルトのものは特に有名です。
■トーマス・グヴァストホフ(バス・バリトン)、他/「魔王」(トラック19)
ゲーテの詩を題材としたものでは「魔王」が有名です。子供の死を結末とするこの詩に、シューベルト自身と、その音楽活動に理解を示さなかった父親との関係をダブらせていたのでは、という説もあります。
※ここで取り上げるのはマックス・レーガー編曲のものですが、このアルバムにはベルリオーズ編曲のものも収録、またシューベルトの有名歌曲を多く収録しています。
■マーガレット・プライス(ソプラノ)/「野ばら」(トラック6)
もうひとつ、ゲーテの詩で書かれた有名なもので「野ばら」があります。ベートーベンやブラームス、シューマンなども題材として取り上げたこの有名な詩を、シューベルトはシンプルで繊細に、詩を尊重した形で仕上げています。
■ディートリヒ=ディースカウ(バリトン)/歌曲集《冬の旅》全曲
一連の詩を題材とする「歌曲集」では「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」「白鳥の歌」がありますが、なかでも人気が高いのは「冬の旅」です。「冬の旅」はシューベルトが亡くなる1年前(1827)に書き上げられた歌曲集で、ヴィルヘルム・ミュラーの詩によるもの。翌年に世を去る運命を悟っているかのような超越的な悲しみが作品全体に漂います。また、この歌曲集を作曲中に敬愛するベートーベンがその生涯を終えたことも、シューベルトの内面に深い影を落としていると言われます。
「ベートーベンの後で、何ができるだろう」
シューベルトが友人に洩らしたというこの言葉、偉大なるベートーベンに対する尊敬の念を感じる言葉ですが、ベートーベンが没したとき、すなわちシューベルト30歳の時までに弦楽四重奏、交響曲、ピアノ・ソナタ、ミサ曲のほとんどを完成していたのですからシューベルトだってもの凄い才気溢れる作曲家でした。その作風にはベートーベンから受け継ぐフォームの拡大と深化の路線に加えて、モーツァルトやハイドン風の軽やかさ、さらにはロマン派を先取りした調性や旋律までもが盛り込まれています。以下にその代表的な作品の一部を聴いてみましょう。
■クラウディオ・アバド(指揮)/交響曲第5番、第6番
♪まとめて試聴
■クラウディオ・アバド(指揮)/交響曲第8番「未完成」(トラック1、2)
♪試聴(トラック1、2)
■内田光子(ピアノ)/ピアノ・ソナタ第4番、第13番、他
♪まとめて試聴
■アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)他/ピアノ五重奏曲イ長調「ます」(トラック1〜5)
♪まとめて試聴(トラック1〜5)
自分の父親ほどに年齢の離れていたベートーベンが亡くなった翌年に、シューベルトは31年という、その短い生涯を終えたわけですが、彼は最後の1年間で交響曲「ザ・グレイト」をはじめとする約28点あまりの名曲を、ろうそくが燃え尽きる前に一段と光り輝くように、一挙に作りあげました。
■ハーゲン弦楽四重奏団/弦楽五重奏曲ハ長調
まず、重厚な力作であり傑作と言われる、弦楽五重奏曲ハ長調。弦楽四重奏にチェロを1本足した編成でアンサンブルに厚みを加え、ベートーベンが極めた弦楽四重奏に新たな可能性をすでに提示しています。
■クラウディオ・アバド(指揮)/交響曲第9番《ザ・グレイト》
そして、最後の交響曲、「ザ・グレイト」。「未完成」ととともに、シューベルトの交響曲の傑作といわれるこの作品は当時シューマンがいちはやくその評論を発表し、その意義と素晴らしさを讃えた、と言われます。
■マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)/ピアノ・ソナタ第19番、20番、21番
最晩年のピアノ・ソナタ3作品は、ベートーベンの様式を汲みながらも新たな様式美を提出する傑作。特に最後の第21番(D.960)が、燃え尽きようとする自己の内面を純粋に表現したものとして評価が高い作品です。
1828年に腸チフスによりその短い生涯を閉じたシューベルトは、兄の手によって敬愛するベートーベンの墓の数メートル横に葬られ、今でもその墓碑はそのまま、今は「シューベルト公園」と呼ばれる旧墓地跡の一郭に並んで残されています。ここではシューベルトの作品を全てご紹介することは出来ませんが、シューベルトがその生涯を送ったウィーンの緑が特別の美しさをみせるこの5月、ウィーンの風を感じるシューベルトの作品を堪能してみてはいかがでしょうか。
08/04/30
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