ジャズの過去〜現在〜そして未来
皆さんこんにちは。e-onkyo music 担当の黒沢です。
世の中には節目というものがありますよね。音楽で言えば、LPの時代からCD,音楽配信へと移り変わってきた音楽メディアの節目、ますます広がる配信の発展の為に日々努力せねばと常々考えているところですが、ジャズ界でも節目節目で重要なアーティストが現れ、その発展に大きな影響を与えてきました。1920年代の禁酒法の時代、ハーレムでの成功を皮切りにスターダムにのし上がったデューク・エリントン、そして30年代から40年代初頭までのビッグ・バンド・ブームをエリントンと同じく盛り上げたカウント・ベイシー。その後、40年代後半の戦後不況のなか大所帯のビッグバンド経営が難しくなり各ミュージシャンが小さめの編成で活動を始めると、チャーリー・パーカーのようなソロで圧倒的な技術を聴かせるミュージシャンが主流を占めるようになり、そして50年代後半にはそのスタイル(ビバップ)に変化をもたらしたマイルス・デイヴィス、さらにハード・バップに発展させたキャノンボール・アダレイ、アフロ・キューバンやイスラム圏文化の影響を取り入れたコルトレーン。即興の精神のみを残し、フリー・インプロヴィゼイションの世界を切り開いたオーネット・コールマンもこの時期の重要なアーティストです。彼らはみな過去の人となってしまいましたが、その音楽はこれからも影響力を持ち続け、忘れ去られる事なく愛され、研究されることでしょう。今回は、今年の一月、惜しまれながらもそのジャズの歴史の一部となってしまったマイケル・ブレッカーを偲びつつ、その歴史を未来に向けてさらに発展させていくであろう若手ジャズ・ミュージシャンもあわせてご紹介します。
●マイケル・ブレッカー:聖地への旅
2007年1月13日に惜しまれつつ世を去ったマイケル・ブレッカー。まだ57歳という若さでの突然の悲報は、世界中のジャズ・ファンに衝撃を与えました。1949年生まれの彼は、兄のランディ・ブレッカーと組んだブレッカー・ブラザーズで大ブレイク、その卓越したハーモニー・センスとアドリブの技術で世界的な評価を獲得し続けた人気ミュージシャンでした。11回のグラミー賞受賞を経験し、ソロ・アルバムをはじめ様々なセッションに参加するなど実績ともに最高のアーティストとして活躍していましたが、決してその地位に甘んじる事無く、常に先を見据えた音楽を創作し続けました。また、人柄も温厚で、尊敬を集め続けた人格者であった彼がこの世を去ってしまったことは、ジャズ界にとって大変な損失と言えるかもしれません。今はただ、そういった彼のミュージシャンシップを引き継ぐ若手が多く現れることを願ってやみません。亡くなる2週間前に完成したという本作は、ハービー・ハンコック、ブラッド・メルドー、パット・メセニー、ジョン・パティトゥッチ、ジャック・ディジョネットという、現在のジャズ界の最高峰が勢揃いしたセッションを収めたものです。全曲マイケルのオリジナルで構成され、共演者の演奏からはマイケルの復調を願う強い思いと、また共に演奏できる喜びが溢れているように感じます。ジョン・コルトレーンに次ぐテナーの巨人となったマイケル・ブレッカーの遺作は、次世代に残された彼の貴重なメッセージ。自身もレコーディングを最高に楽しんだという、最高傑作なのです。
●カート・ローゼンウィンケル:ディープ・ソング
カート・ローゼンウィンケルは、現代のジャズ・ギタリストの中で圧倒的No.1の人気を誇ります。1992年までボストンのバークリー音楽大学で学び、そこで学長でヴィブラフォンの第一人者、ゲイリー・バートンと出会ったことが、彼のプロとしてのキャリアのスタート。以後はブラッド・メルドーやマーク・ターナーとならんでニューヨークで活躍しながら「自分の音楽」を固め、2000年から計4枚のアルバムを発表しています。ジャズ・ギター界の先輩で人気者、パット・メセニーやジョン・スコフィールドと既に肩を並べるほどの人気は、その十分な実力と素質に裏打ちされたものであることはこの音楽を聴けば明らかでしょう。優れた作曲能力を持ち、アドリブの構築の仕方のなかにも、あたかも作曲をしているような知性を感じさせます。ジャズ・ギターの未来を担う、期待のギタリストです。
●ジョーイ・カルデラッツォ:Haiku
1986年のマイケル・ブレッカーとの共演から、最近のブランフォード・マルサリス・バンドでの活躍を通して、コンテンポラリー・ジャズ・ピアニストとして第一級であることを証明してきたジョーイ・カルデラッツォ。張り詰める緊張感と爆発力、溢れんばかりの創造性を湛えたかれのピアノ・プレイは、過去十数年間で最もエキサイティングと言っても過言ではありません。ここでご紹介する「Haiku」は、全篇ソロ・ピアノで演奏されていますので、彼の音楽世界を感じるには恰好の題材。ジャズ・ピアノをやってみたい、最近のジャズ・ピアノを聴いてみたい、という方には、まさにこのアルバムをお薦めします!
●ザ・バッド・プラス:Prog
ニルヴァーナ、エイフェックス・ツイン、ブロンディーの鋭いカバーで名を馳せた史上最轟音ピアノ・トリオ=ザ・バッド・プラス。インディー・ロック、ポストモダン・ジャズ、インテリジェント・ポップなどなど、ジャズの枠を飛び出した幅広い音楽性が、ともすれば異端、といった評価を受けるかも知れませんが、そんなことは全くありません。思えば60年代のフリー・ジャズだって、ちょっと畑が違いますが道端にピアノを置いてただただ座り続けたジョン・ケージだって、当時は異端でも今では大変に評価される巨匠アーティストです。このアルバムでは非常にオリジナルな6曲と、バート・バカラック、デヴィッド・ボーイ、ラッシュなどの魅力的なカバーも収められています。こういったカテゴリーの枠をはみ出していく、自由な発想も受け止めていけるのがジャズの懐の深さと醍醐味なのです。
07/06/19
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