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【JAZZ TODAY】ジャズ歌手を夢見ていた頃 原田芳雄

原田芳雄さんJAZZファンに人気のフリーペーパー「JAZZ TODAY」。このたびJAZZ TODAY誌とオンキヨーのコラボレーションで東京八重洲にあるオンキヨー試聴室「マリンシアター」にゲストをお招きし最高のホームシアターセットですきなジャズを聴いてもらい一筆したためていただきました。
今回のゲストは俳優の原田芳雄さんです。

原田芳雄xマリンシアター

オンキヨーのAV試聴室「マリンシアター」で、何十年ぶりにお気に入りのジョニー・マティスの<イッツ・ノット・フォー・ミー・トゥー・セイ><チャンス・アー>を聞きながら、僕の部屋にも50インチのテレビとサラウンドにしてあるんだけど、機械に弱くて、全部若い連中にセッティングしてもらうんです、と語り始めた原田芳雄さん。 昭和24年に縁故疎開から東京に戻り、足立区に住めるようになった芳雄少年は、荒川の土手から川越しに見える銀座のネオンの明るさに憧れ、次から次へと侵食するアメリカの若者文化に胸ときめかせながら、早く川向こうに逃げ出したい、ジャズ歌手になって一旗上げるんだと心に決めたものの…。

原田芳雄Xジャズ

日本の歌謡史の中で、歌謡曲をスタンダード・ジャズが乗り越えた一瞬があったんです。1950年代のことです。
 ひばりさんを始めとして、江利チエミさん、旗照夫さん、ティーブ釜萢さんなんかがジャズを歌い、ジャズ・メンがバケツに札束を押し込んでいた時代です。  戦争が終わって一段落はしたけれど、周囲には爆弾の跡がいっぱい残っているその頃、アメリカから若者文化が続々と流れ込んできて、第1次ローラー・スケート・ブームというのがありました。  東京では後楽園のローラー・スケート場が頂点でしたけれど、焼け跡だらけの下町にも、コンクリートを流し込んで、まわりに柵をつけた即席ローラー・スケート場が出来ました。

ラウド・スピーカーでがんがん音楽を流すんですが、スケート場の主人の趣味によって音楽が違う。僕が通ったところはスタンダード・ジャズとか、ビッグ・バンド、グレン・ミラーなんかがかかっていて、中でもジョニー・マティスの独特の歌い方が耳についたんです。シナトラやペリー・コモとは違った個性的な歌い方が新鮮で、自分の好みにぴったりだったんです。中学一年の頃です。  今までは歌謡曲、浪曲、演歌しかなかったので、ジャズの持っている明るさとリズムに憧れ、ラジオもFENばかり聞いていました。当時はヒット曲の譜面を1曲ごとに本屋で売っていたので、その譜面を見ながらよく歌ったものです。  真剣にボーカリストになりたいと思っていたし、ジョニー・マティスの歌い方にはかなり影響を受けました。

当時、歌謡曲は『NHKのど自慢』があり、ジャズは文化放送で『素人ジャズのど自慢』という番組があったんです。  有楽町のビデオ・ホールで本選があるんですが、予選には100人くらい来て、本選には毎週5人づつ出られるんです。司会は丹下キヨ子さん。審査委員がティーブ釜萢さん。  その番組に中学2年の時に出演して<バラの入れ墨>というバート・ランカスターの映画主題歌を歌ったんです。五厘刈りで詰め襟着た中学2年生が<ローズ・タトゥー>、かなりパンクですよね、最年少出場でした。  僕の前に歌った大学生が鐘三つだったので、やばいな〜とは思ったんですが、歌い終わった途端に鐘一つ。 グンゼの靴下とキスミー香水を参加賞としてもらいましたが、こんなものいるか〜って荒川放水路に捨てちゃいましたよ。  かなり歌には自信がありましたが、その時、僕の歌手に対する夢が終わったんです。少年の夢はラジカルだからね。次の日にかなわない夢なんてダメなんですよ。

日本は復興のまっただなかでしたから、毎日色んな住宅のチラシが入っているんです。その中から理想の家を切り抜いてノートブックに三冊くらい持っていました。将来ジャズ歌手になって家を建てる時の参考のためだったんです。  でも、それも全部燃やしました。  歌を諦めてからは山岳部に入って山に登ってました。  山小屋のオヤジになろうと決めたんですけど、それにも挫折しちゃったので役者になりました。


【原田芳雄プロフィール】



1940 年 東京生まれ。俳優座養成所を卒業後。「復讐の歌が聞こえる」で映画デビュー。以降、「われに撃つ用意あり」「浪人街」でブルーリボン賞主演男優賞、「寝盗られ宗介」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞。「鬼火」で毎日コンクール主演男優賞を受賞。さらに2004年「美しい夏キリシマ」「父と暮らせば」「ニワトリはハダシだ」で報知映画賞助演男優賞を受賞するなど、多数の賞を受賞。これまでの映画主演作品は100本を越える。2003年には紫綬褒章を受章。映画、TVなどで幅広く活躍。



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06/06/29

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