JAZZ TODAY コラム

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【JAZZ TODAY】自宅の試写室で自作を見る日を夢見て by 原田眞人

JAZZファンに人気のフリーペーパー「JAZZ TODAY」。このたびJAZZ TODAY誌とオンキヨーのコラボレーションで東京八重洲にあるオンキヨー試聴室「マリンシアター」にゲストをお招きし最高のホームシアターセットですきなジャズを聴いてもらい一筆したためていただきました。
第1回目のゲストは映画監督 原田眞人さんです。

【原田眞人 × マリンシアター】

イノセンス東京八重洲にあるオンキヨーのA/V試聴室「マリンシアター」に現われた監督の風貌を一言で言うと起き抜けのテディベア。
監督が持参したPE'Zの新作「千歳鳥」などを聞きながら、このくらいの試写室が自宅にあればね〜などと歓談しつつ映画ばなしで盛り上がる。
押井守監督の『イノセンス』の祭りのシーンに感心しながらも、主人公が歩くシーンになると、これほどの映画でも足音に奥行きが感じられないでしょ、邦画は、セリフや音楽、人間の動作から出る音に表情が希薄なんだよ、と辛口批評が続いた。
その、原田監督にとって「ジャズって何?」を自ら綴ってもらった。

【原田眞人 × JAZZ】

pe’zアムステルダム、ライツェ広場。2005年10月27日。ぼくは三人のカメラマンに指示を与えながらPE'Zのストリート・ライヴに酔いしれていた。
ジャズは、強烈にパフォーマ−の姿態を連想させる。だから、ぼくの作品にはパフォーマ−が登場しない限り、ジャズを聞かせることはない。そのくせ、自分の書く脚本には「ジャジー」という形容詞がよく出て来る。感覚的にジャズの、官能系とレイジー系が相半ばしたイメージは好きだ。時代を先走るものの映像には合っていると思う。しかし、『死刑台のエレベーター』が開拓したモダン・ジャズのしゃれっけを超えるものは出ていない。殊に、日本映画でジャズを使うのは自殺行為だ。60年代には、モダンな映像が売りの市川昆監督や岡本喜八監督が挑戦したが結果は惨澹たるものだった。

ジャズと映画の幸せな結婚は、ぼくに言わせれば、『シンシナティ・キッド』や『コットン・クラブ』、『ラウンド・ミッドナイト』といった舞台設定にジャズが深く絡み付いたものに限る。そういう題材とぶつからない限り、ジャズには近づかない方がいい。
PE'Zの場合は、ドキュメンタリーだった。が、編集を進めるうちに、そのパッショネートなジャズ感覚に乗せられ、劇中演奏しないナンバーも、サントラ感覚で使ったりもした。画面を彩るぞくぞくするジャズは、この若いバンドにもある。

それで、思い出した。 昔、ある犯罪映画の脚本を書いた時に、メイン・テーマを〈インディアン・ラヴ・コール〉に想定して、脚本にも書き込んだことがある。これは、実現しなかったが、95年にカナダで撮った『栄光と狂気』では、〈ビギン・ザ・ビギン〉を使った。パフォーマーは登場しないが、SP盤のレコードを見せるソース・ミュージックとして、である。
考えてみれば、この頃、ぼくは人生で一番ジャジーな環境の中にいたように思う。その年のモントリオール・ジャズ・フェスティヴァルにも入り浸った。映画のベースが、モントリオールだったのだ。

当時のお気に入りはブレッカー・ブラザース。
彼らの何がよかったのか。自分の映画の理想とする「演技」の本質がそこにあったのだ。音質に優れ、リズムの正しい即興演技。ぼくは、いつも、役者たちとのリハーサルをジャム・セッションに例える。いい音色が正しい音域でからみあうまで、リハーサルは続ける。ブレッカー・ブラザースのその年のライヴは、明らかにサックスのマイケルが主役で、トランペッターの兄、ランディがいぶし銀の脇を演じていた。「演技陣」の見事なアンサンブルがあった。

実を言えば、映画監督デビューする前からの見果てぬ夢は、自宅に試写室を持つことなのだ。現在は、ドルビー・サラウンドのシステムを備えた試写室だ。
トップ・クラスの映画人の「黄金の賞品」が、つまりそういうことなのだ。フランシス・フォード・コッポラの自宅やマーティン・スコセッシの自宅で、そういう環境を目撃した。そこで、〈インディアン・ラヴ・コール〉をフィーチャーした自作を愉しむ日を 夢見て、ぼくは映画を作り続ける。

◆原田監督のご指名で次回は宇崎竜童さんに登場していただきます。

【原田眞人監督略歴】

あさま山荘事件原田眞人

『さらば映画の友よ インディアンサマー』(79)で監督デビュー。『KAMIKAZE TAXI』(95)は仏ヴァレンシェンヌ映画祭で准グランプリと監督賞をダブル受賞。
97年の『バウンス ko GALS』(97)ではブルーリボン賞の作品賞、監督賞受賞。『金融腐蝕列島〔呪縛〕』(99)で日本アカデミー賞13部門で候補にあがる。最新作は長谷川京子、木村佳乃主演の『自由戀愛』(05)。現在06年春クランクインのベストセラー『となり町戦争』を準備中。 『ラスト サムライ』で53才にして俳優デビューし、また、執筆中の小説も複数あり、今後は、映像分野以外も視野に入れた活動が注目されている

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JAZZ専門の月刊フリーペーパー。
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06/03/17

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